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狐、生きる  作者: nite
狐、背負う

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獣人の幼馴染

 呆れたような、恥ずかしいような表情をしたスフィンがプイを宥めながら店の中に入ってくる。

 対してプイはハクにずっと抱き着いたままで、服に顔をうずめてモゴモゴ何かを言っているがその内容は聞き取れない。


「あー……ひとまず、エスノアとファネ、二人は大丈夫だからその手を下ろそう」


 エスノアはワンドを、ファネは凝魔術によるナイフを手にプイへの敵愾心を露にしていたが、ハクがそう言うと二人は困惑しながらもそれらを片付けた。

 モゴモゴしていて何を言っているのか分からないプイの代わりに、スフィンが説明する。


「久しぶりだな、ハク」

「スフィンも久しぶり。一体、どうしてここに」

「色々あって、俺たちも旅をすることにしたんだ。旅をしたいって言いだしたのはプイなんだぜ?」


 そうしてハクはプイを見る。村で生まれ育ち、村の人たちとも仲良くしていたから大人になるまでは過ごすと思われたのだが……と、思いながらハクは仲間の二人を見た。エスノアは実年齢的に幼く、ファネは精神的に幼い。

 それを考えれば、プイくらいの少女が旅をすることもこの世界では普通のことなのだろうと思いなおすことにした。


「それでここに着いたらハクが指名手配されてるのを見てよ。プイが怒り出しちゃって」

「それはいいが、なぜここを」

「プイ曰く、感じたんだってよ。俺もなんのことだか分かんないんだが、まじでいてびっくりだ」


 プイは、その直感だけでハクがいるこの建物を見つけ出したらしい。魔法の世界で勘頼りとは、最も恐ろしい存在なのではなかろうか。

 プイはやっとモゴモゴするのをやめて顔をあげた。そこには会えて嬉しいという感情が見てわかるほどの笑顔がある。


「ハクがここにいると思ったんだよねー、スフィンは信じてくれなかったけど」


 ジト目でスフィンを見るプイ。だが、スフィンはあれで信じるとか無理だろと弁明する。ハクもそう思う。


 劇的な登場と怒涛の少女の影響で硬直していたエスノアが、やっと口を開いた。


「ハクさん、彼女たちは……?」

「こっちがプイで、あっちがスフィン。私が初めて出会った人だよ」


 嘘は何も言っていない。正真正銘、この世界で初めて出会ったヒトはこの二人である。尚、初めて出会った人間に関してはアルベンの街の守衛だろう。


 ハクの紹介を受け、プイが礼儀正しくお辞儀をする。そこに並んでスフィンが手を軽くあげる。


「初めまして、プイです!」

「スフィンだ。見ての通り獣人だ」


 この国では獣人はさほど珍しいものではない。街を歩けばいくらでもいるし、旅をしている獣人というのも多い。

 しかし、二人のようにまだ見た目的にも子供だと分かるような獣人が二人だけで旅をしているのを、エスノアは珍しく思った。自分たちも子供だけで旅をしていたことは棚に上げている。


「私が森から出てしばらく滞在した村の子たちなんだが……」

「さっきも言ったが旅をしてるんだ」

「ハクが旅をするって言うから!私もしたいなって」


 犬耳をピンと立ててプイが言う。

 エスノアは、なんとなく二人の耳とか尻尾を触ってみたいと思った。彼女は、初対面でハクの尻尾を触ろうとした、隠れモフモフ好きである。


「でもハクが指名手配されてるって聞いて、これは王様に訴えないとって」

「要は助けに来たってわけだ。ハク、好かれてるな」


 ニカっと笑うスフィン。ハクはそれに対し、なんともいえない表情を浮かべながら苦笑する。


 ハクはあの獣人の村に対して何か英雄的なことをしてあげたわけではない。むしろ、旅人としてプイを中心に助けてもらった立場だ。またこうして助けられることになるとは思っていなかった。

 だが、プイは既に助ける気満々であり、スフィンもプイが助けるというならと乗り気である。ハクが何を思ったところで、プイたちが危険な橋を渡ろうとすることを止めることはできない。


「私たちに関わればプイたちもお尋ね者になるかもしれないぞ」

「変なことを言って指名手配してくるなら、こんなとこいなくていいもん!」

「まあ、村はそれなりに距離があるから怖くない」


 妙に覚悟が決まっているなと思うハク。そういえば、初めて会った時も二人だけで魔物を討伐しようとしていたし、獣人の子供というのは結構精神的に成熟しているのだろうかと考える。


「じゃあ、私たちは何をすればいい?」


 プイが身を乗り出す。ハクはしばし悩んだ後に、ここで止めるのも失礼だと考えて作戦を伝えた。

 即ち、地下通路を限界まで探索して外への出入り口を探すという作戦を。


「指名手配はそのまま?」

「私たちが何を言ったところで相手は国だ。揉み消されるだろう」

「そっかー」


 プイたちもあまり国のことを信用していないのか、すぐに諦めた。いや、むしろ今回の件で信用を失ったというのが正しいか。


 作戦の決行は今夜。前に三人で入ったあの地下通路から再度中に潜入する。


「見張りはいないだろうか」

「本来はあそこは何もない場所です。騎士たちが見張っても怪しいだけですよ」


 もしかしたら暗部とかがいるかもしれないですが、とエスノアは続ける。

 もし騎士たちが立っていれば……その時は、冤罪を冤罪ではなくするだけのこと。既にかけられた罪を、今更どうしようもない。


「私たちも一緒に入るよ!」

「顔は隠しておきなさい」


 ハクは変化で作り出した顔隠しをプイとスフィンに渡す。黒子がつけているようなあの布だ。


「血の匂いは?」

「一旦忘れよう。あれは一朝一夕でどうにかなるものではない」

「わかった」


 原因を作ったのは自分だとへこんでいるファネを優しく撫でながら、ハクは必要なものを変化で作りだしていく。

 攻撃力を変化で生み出すのは難しいが、小手先の道具や飛び道具なら相性がいい。そして夜になるまで、ハクは道具を生み出し続けた。

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