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狐、生きる  作者: nite
狐、挑む

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20/104

過酷と事前に伝えた

 エスノア、そしてシウィンが旅の仲間に加わって数日が経過した。

 魔法使いをしている割に、エスノアは野営にも慣れており、ハクが野宿を選択しても文句を言わずに華麗に準備をしてくれた。


 魔法で山に横穴を掘ったり木を伐採したり、そんな風に今まで以上に快適な野営環境が構築されるようになって、ハクは魔法をもう少し学ぶべきかと悩んだほどだ。


「ハクさん、食事をお願いします」

「はいはい」


 そしてもっと驚いたこととして、エスノアはハクの料理を文句言わず食べるのである。流石に狐らしく生肉を食べることはしないようにしているが、それでも淡泊な料理がメインだ。

 そんなハクの料理を、エスノアは美味しそうに食べるのである。街で安宿に泊まっていたところを見るに、エスノアはこういった質素な食事に慣れているのかもしれない。


「エスノア、今何歳なんだ?」

「女性に年齢を聞くのは失礼ですよ……十六歳です」


 日本で言うなら、中学生。まだまだ義務教育の範囲であり、そんな子供に二人旅をさせるなんてことをしたら、日本では中々に炎上してしまいそうなことだ。

 ハクが心配しているのは、そんな若い時から不摂生ぎみな食事をするのは大丈夫なのかという点だ。ハクはまだ生まれて数年の、エスノアよりも年下な狐であることを、ハクは忘れている。


「もっと色々食材を買った方がよかっただろうか」

「重くなりますし、それにこれも美味しいですよ。ハクさん料理上手!」


 不足していた調味料類を買った程度の、肉で作ったスープを飲んでそう言うエスノア。肉が柔らかくなるまで煮て、塩胡椒で味付けをしただけの料理だ。食事処で出てくるような料理とは程遠いが、エスノアの口には合っているようである。

 地球の頃の味覚であれば足りなかったかもしれないけれど、狐となった今のハクに合うような味付けをしている。あくまで野生的な味付けなので、人間のエスノアに合うのか不安だったのだけど、今のところ料理に対してエスノアから文句が出たことはない。


「辛くはないかい。君から言ってきてるからあれだけど、我慢はしなくていいんだよ」

「いえいえ。誰かと一緒に旅をするだけで私は嬉しいです。それに、本当に美味しいですよこれ。私たちが旅をしていた時は、果実とかをそのまま食べてましたから」


 たまに毒に当たるから、解毒魔法を使っていたと、懐かしむように語るエスノア。少なくとも、今の旅よりも不摂生な旅をしていたのは間違いないらしい。

 毒を当たるのも構わずに旅をしていたから危険なことになったのではと思うが、エスノアとは違うところから睨むような視線を感じたので、考えるまでに留めた。エスノアに何かあったら呪われると思っていたが、既にハクは呪われているような節がある。


 取り敢えず、ハクはこの誰かさんを加護と思うことにした。少なくとも、エスノアのことを護ってくれるだろうとも。


「エスノアの旅には目的地がないんだろう?」

「はい。元々私たちは半ば追い出されるような感じで……だから、取り敢えず色んなところを見て回ろうと」


 エスノアとハクの目的地は、ある意味では合致している。ハクも、目的地もなく世界を歩くつもりだったので、エスノアと共に色んなところを歩くだけで目標に到達する。

 その中で妙なところや危険なことにも遭うだろうから、ハクはエスノアを最初拒否したのだけど……エスノアの魔法力を見ると、案外問題ないような気がしているハクであった。


「魔法ってどこで学んだんだい。学校とかあるのかな」

「学校はありますけど、それは国で保護されるような人たちのことです。私たちの生まれはお金がなかったので、入学費用も払えず……家は兄が継ぐからと、私たち姉妹には立場がなくて、居心地が悪かったので飛び出したんです」

「ふむ、エスノアの魔法の腕ならば奨学金みたいなのが出てもおかしくないと思うけど」


 ハクがそう呟くと、エスノアは首を傾げた。どうやら、この世界の学校には奨学金の制度がないらしい。

 お金を理由に優秀な者が消えていく現状は如何なものかと思いつつも、ハクには関係ない話だったのでそこで思考を中断した。


「さて、ひと眠りしたら、洞窟に入るとしようか」

「はい。何がありますかねー」


 実は、二人は現在洞窟の入口部分で休息をとっている。先日ハクが雨宿りをしたときと同じような状況だ。

 今は特に雨が降っているわけではないけれど、たまたま見つけた洞窟の奥がまだありそうだったので、冒険気分で二人は奥に進むことに決めたのである。次の街まで急ぐ必要はないし、こういった寄り道をエスノアが好んでいたのが理由だ。


 エスノア曰く、この洞窟の奥から魔力を感じるという。強いわけではないけれど、普通の洞窟から魔力は感じないので、魔物か魔道具があるかもしれないとのこと。

 魔道具とは、魔力を含む道具のことだ。言うなれば、ガラも魔力により保護されているお金なので、分類的には魔道具に含まれる。


 振るだけで魔法が発動するものであったり、火や氷に耐性がある服であったり……詳細は多岐にわたるが、そういったものは貴重で売るとそれなりのお金になるらしい。


「ですが、洞窟の中にあるようなものは破損していることがほとんどです。修理できればいいんですけど……」

「魔道具の取り扱いは知らないなぁ」


 ゲームなどであれば宝箱に保管された強い道具が出てくることもあるが、現実世界じゃそうはいかない。洞窟の中にある道具は大体が破損し、最悪風化してただの残滓になっていることもあるという。

 元々魔道具であったとしても、流石にそんな欠片を買い取ってくれるようなところはなく、修理できるような状態でもなければただのゴミにしかならない。


 なので、この洞窟探索は宝探しというよりも、ただの興味で潜る。もし使える魔道具があればラッキー。魔物だった場合は倒して魔石にしてしまおう。


「さて、じゃあ眠ろうか」

「はい、結界張りますねー」


 明日の予定を確認したのち、二人は眠ることにした。

 なんと、エスノアは寝床を守る結界が張れるのだと、旅を再開して一日目に知った。防御力はまずまずとのことだけど、結界に反応があればエスノアが気が付くので、何かあっても気付けるとのこと。


 今までハクは野生の勘で、何かあったら飛び起きるという寝方をしていた。そのため、薄い結界とはいえ守られているという感覚は、睡眠の質を大きく向上させた。

 まだ若いエスノアとシウィンが夜中も交代で見張りをするというのは大変だったらしく、エスノアが結界魔法を覚えたとのこと。


「おやすみ」

「はい、おやすみなさい」


 そうして二人は眠りにつく。ハクは壁にもたれるようにして、エスノアはハクの尻尾に抱き着く。


 出会いは特殊で、旅に出るときもいざこざはあったものの、二人は現在それなりに仲良く旅ができている。

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