Ep1-4 妹帰宅
(※以下、一部をダイジェストでお送りします)
「⋯⋯髪も伸びてるから洗うの結構大変だな」
⋯⋯⋯⋯
「ぅわっ、柔らか⋯⋯。女子の身体ってこんな⋯⋯」
⋯⋯⋯⋯
「⋯⋯んぅっ!な、なんか男の時よりも凄く擽ったく感じるんだけど⋯⋯!」
⋯⋯⋯⋯
「おぉ、持ち上げたら、フニュンって⋯⋯」
⋯⋯⋯⋯
「⋯⋯足元見えない。洗い辛いな⋯⋯」
⋯⋯⋯⋯
「⋯⋯え、ここってタオルで洗って良いの?手で優しく洗った方が良いのかな⋯⋯」
⋯⋯⋯⋯
「⋯⋯わー、肌モチモチ。スキンケア頑張ろ⋯⋯」
⋯⋯⋯⋯
「⋯⋯湯船が少し広い気がする。身長が縮んだからか?」
⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯
「⋯⋯なんか、めっっちゃ疲れた」
どう考えても気疲れです。何もかもに慣れなさ過ぎて、一々挙動不審になってしまう。
「⋯⋯胸って、本当に水に浮くんだな」
そんなしょうもない事を考えていないと頭がおかしくなりそうな程度にはまだ情緒不安定である。
取り敢えずバスタオルを身体に巻いて。男の時は腰に巻くだけだったから少し不思議な気分だ。
⋯⋯そう言えば服どうしよう?一先ず、前使ってたやつを着るしか無いか。
「服、買いに行かないとなあ⋯⋯」
下は兎も角、上の下着は絶対必要だし⋯⋯。
⋯⋯一人で買いに行けるかなあ。不安しかない。
マモ様は居ない。リビングに戻ったのだろう。
「⋯⋯まだ話があるって言ってたし、早く戻るか」
俺は洗面所のドアを⋯⋯
──────ガチャッ
「あ、ごめん、お兄居たんだ⋯⋯ってぇぇええ!?誰ぇ!?」
「え、あ、ふ、風兎!?か、かか帰ってたのか!?」
や、ややヤバい。い、妹の風兎が帰って来た。
⋯⋯て言うか、そろそろ妹が部活を終えて帰って来る時間だって事をすっかり忘れていた。
⋯⋯だってその、ゴブリンにやられて血塗れだったし、地面に倒れていた所為で身体中砂だらけだったから、兎に角早くお風呂に入りたかったんだよ。
⋯⋯色々と疲れ過ぎて、頭が殆ど回っていなかったのもあると思う。
「⋯⋯⋯⋯え?何で私の事知ってるの?」
⋯⋯あっ!?そ、そうか。彼女からしたら今の状況って、知らない女が自分の家の風呂を使っていた事になるのか!?
も、もしかしなくても事案では⋯⋯?
「⋯⋯⋯⋯あれ?もしかして、お兄?」
「⋯⋯ハイ、ソウデス」
5秒でバレました。
「⋯⋯お、お兄ちゃんが、お姉ちゃんになっちゃった」
彼女はそう呟くと、呆然としたまま固まってしまった。
× × ×
「⋯⋯つまり、勇者になったら、何故か女の子になっちゃったって事?」
「⋯⋯はい、そうです」
フリーズした妹をリビングに移動させ、俺もちゃんと服を着てから諸々の説明をした。
因みに、話がややこしくなりそうなのでマモ様には一旦席を外してもらっている。
「ふぅん。まあ、なっちゃったもんは仕方無いし、取り敢えず勇者になったお祝いでもする?」
「⋯⋯受け入れてくれるのか?」
「受け入れるも何も、お兄はお兄でしょ?⋯⋯あ、今はお姉か」
「⋯⋯その呼び方は変えて欲しいかな」
「えぇー。⋯⋯んじゃ、しぃ姉で」
その、オネエっぽく聴こえるからさ。⋯⋯いや、勿論そういう人たちの事が嫌いなのではなく、あくまで紛らわしくて嫌って意味である。
実際に男から女に変わった訳だし、微妙に否定し辛いんだよなあ⋯⋯。
「まあ流石にびっくりはしたけどねぇ。お兄が彼女を家に連れ込んでるのかと思って焦ったよ」
「⋯⋯ほんと、すんません」
「あはは、別に良いって。⋯⋯それより、良かったね。ずっと勇者になりたいって頑張ってたもんね!」
「⋯⋯あぁ、そうだな。ありがとう」
自分の事ではないのに、風兎は心の底から嬉しそうに笑ってくれている。
⋯⋯そうだ、この笑顔を守れるように、これから頑張っていかないとな。
「そう言えば、どうして直ぐに俺だって分かったんだ?」
事案にならなかったのは良かったが、あれはあれで驚いた。まさか言い訳する間も無く俺だとバレるとは。
「だって顔ほぼお兄じゃん。最初は女装でもしてるのかと思ったけど、どう見てもおっぱいがあったから余計に意味分かんなくなった」
確かにそれは自分でも思った事だ。
⋯⋯成程、俺の事を良く知っている人が見れば直ぐにバレてしまうレベルで、顔は変わっていないのか。
「元々お兄、女顔だったもんねぇ」
「⋯⋯それはそうだけど、今は言わなくて良い」
割と気にしてたんだから言わないで下さい。
「良いじゃん。今のお兄、すっごい可愛いよっ!」
そう言って風兎がグッ!とサムズアップしてくる。ニコニコの笑顔付きで。
何だろう、地味にイラッと来るな。⋯⋯まあいいか。
「あ、そうだ。また今度、服買いに行くから付き合ってくれないか?⋯⋯その、俺だけだと下着とかよく分かんなくて」
「マジ!?付き合う付き合うっ!めっちゃ予定空けとくから任せといてっ!」
「お、お手柔らかにお願いします⋯⋯」
⋯⋯恥ずかし。何故俺は妹にこんな相談をしているんだ。
「やっば。お兄、可愛過ぎ⋯⋯」
妹が何か言っているが、恥ずかしさで俺はそれどころでは無かった。
「話は済んだか?」
ひょい、と黒い狐が、俺と風兎が話しているテーブルの間に飛び乗って来た。
「わっ、狐!この子がさっき言ってたマモ様?」
「⋯⋯貴様、不敬であるぞ」
「私は風兎。よろしくね!」
「⋯⋯ぐぬぅ」
にっこり笑顔で宜しくされて、流石のマモ様もタジタジの様だ。
「⋯⋯そうだ、お兄を救けてくれて、それと勇者にしてくれてありがとうございます」
風兎が座ったままぺこりと頭を下げる。
「⋯⋯ふん。我は偶然、使えそうな神子を拾っただけだ」
「ふふっ!マモ様は素直じゃないんだねぇ」
「⋯⋯祟ってやろうか、小娘」
マモ様が押され気味だ⋯⋯。
⋯⋯うちの妹は将来大物になるかも知れない。
ここまで読んで頂いてありがとうございます。
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