Ep2-24 校外学習ex-6
真面目に戦い始めると、それはそれでイチャイチャが足りなくないですか??やっぱり戦闘シーンって難しいって言いますもんね...(そうじゃない)
さて、スウィートとリンドウの2人に攻撃役を任せたは良いが、俺だけ逃げ回って火力に貢献しないという訳にもいかない。最低限ヘイトを奪えるだけの攻撃はしないとな。
「⋯⋯とは言ったものの」
何度も言うが『アルセーヌ』の攻撃力はそこまで高くない。手数は多いのでdps的なものがもし見られるとしたらそっちはそこまで低くもないと思うが、瞬間火力なら間違い無くスウィートに大差でボロ負けするだろう。
そして先程少しやり合った感じだと、触手はすぐに再生するし脚は防御力が非常に高い。
「なら、攻め方を変えようか」
それならば狙うのは弱点。生物の弱点は大抵頭と相場が決まっている。
まるで狙って下さいと言わんばかりに、骨兜に最初は見られなかった罅まで入っているしな。
⋯⋯とは言え、このままだと彼我のサイズ差があり過ぎて俺の攻撃は届かない。
【神出鬼没】で直接跳ぶ事も出来るが、結局は足場が無ければロクな攻撃など出来る筈もない。
「こんな事もあろうかと、ってな」
本当に、器用さに関しては他の勇者たちと比べても群を抜いているという自負がある。『やれる事が多い』というのは、今後活動を続けていく上で明確な強みになるだろう。
⋯⋯さてと、取り出しますはもはや見慣れた4本のナイフ。いつもなら1つに纏めて分裂のナイフにするところだが、今回は違う。
2本ずつで1つに纏め、計2本の合体ナイフが出来上がる。その内の1本をその辺の建物の影に向かって投げると、ナイフはサクッと音を立てて綺麗に地面に刺さった。
「─────ふっ」
残った1本を黒馬に向かって投げる、⋯⋯が、ナイフは黒馬から大きく逸れて向こう側の背の高い建物の壁に刺さってしまう。
当然、狙い通りである。
それを何度か繰り返すと、黒馬の周囲には壁や地面の至るところにナイフが刺さっているという、ちょっとだけ異様な空間が出来上がった。
「⋯⋯さてと、待たせたな」
黒馬も別に黙って見ている訳ではなく、しっかりと俺を狙って脚だったり触手だったりを叩き付けて来る。
しかし普通の攻撃など俺が食らう訳もなく、【神出鬼没】でしっかりと避けながらナイフを投げ続けた。
一番厄介な突進攻撃だが、助走が出来ないくらいの近距離を意識して立ち回ればどうやら使ってこないっぽい。行動パターンも少しずつだけど分かって来たのは僥倖だな。
「そろそろ反撃させて貰うぜ?」
俺は大きく前方へと跳躍する。通常であればそのまま自由落下で地面へと落ちる筈だが、⋯⋯あら不思議。途中でピタリ、と静止した。
「空中浮遊は奇術師の十八番だよなあ?」
空中に着地した後軽やかに駆け出し、あまつさえジャンプまで行う。今の俺は、まさに空を翔けていた。
「ははは!当たらないなあ!」
頬は緩み、自然と口角が上がる。戦闘の最中にテンションが上がってしまうのは、俺の悪い癖かも知れない。
【神出鬼没】で消え、離れた空中に再度出現する。そうして攻撃を躱しながらグングンと黒馬との距離を詰めた。
⋯⋯と、その時。真正面から真っ直ぐと正確に伸びてきた筈の触手が、ガッ!と、まるで途中で何かにぶつかったような不自然な挙動をして俺から狙いが逸れる。
「おいおい、ちゃんと狙えよな?」
「Curoaaaッッ!!!」
俺の言葉が理解出来るのか、それとも馬鹿にされているという雰囲気だけは伝わったのか、明らかに激高の咆哮を上げる黒馬。目元の罅からはより一層大きな黒炎が吹き上がった。
「そろそろ良いか。⋯⋯よっ、と」
黒馬の頭から5メートル程離れた場所だろうか。十分な距離まで近付いたところで分裂のナイフを投擲。即座に能力を発動し、無数に分かれたナイフが黒馬を襲う。狙いは左右で合計8つもある大きな的である。
「Corororororoッ⋯⋯!」
「お、効いてる効いてる」
狙い違わずナイフの群れは命中し、黒馬の左眼を2つ程ズタズタに切り裂き、残りの2つにも少なくないダメージを負わせた。
目元周辺の骨兜にもナイフは当たっており、罅が明らかに大きくなっている。
黒馬は頭を振って角による一撃を狙って来るが、既に俺はそこに居ない。
更に追い打ちをかけるため、黒馬を斜め上から見下ろせる場所に転移し、当然の如く宙に降りる。そして奇術帽から大量のナイフを取り出し、その全てを2本ずつで合成する。先程地面や壁に投げたものと同じやつだ。
その結果大量の2本融合ナイフが出来上がり、それらを全て地面に向けて投擲する。
さっきから何してるの?と思うかも知れないが、直に分かる。
「ほら、こんなのはどうだ?」
パチンっ、と一度指を鳴らす。直後、俺が蒔き続けて来た種が一斉に芽吹き出した。
「Curuoonッ!?」
──────ガクンッ、と突如として膝を折る黒馬。8本もある脚で身体を支え切れずに地に伏せる様は、馬と言うよりもまるで蜘蛛のようにも見える。
「デカい図体しやがって。見下ろすのはお前だけの特権じゃないっての」
自分よりも遥かに巨大な怪物を手玉に取り、更には見下ろしているという事実に感情は昂り、ニマリと口端が妖しく弧を描く。
大量の糸で地面に磔にされる黒馬。大きな脚や触手を動かし周囲の地形を破壊しながら藻掻いているが、そんな簡単に抜けられるような甘い拘束ではない。
種明かしをすると、俺がずっと投げていた大量のナイフは全て『糸付きのナイフ』である。
対となるナイフ2本が柄から伸びる糸で繋がっており、両方のナイフが何かに刺さった時点で糸はピンと張られる。この張られた糸の強度は相当なもので、先程黒馬の触手攻撃を逸らしたのも偶然触手の進路上に糸があったからである。
橋渡しのように張って即席の足場代わりにする事も出来るし、大量に投げればこうして敵を拘束する事も可能なのだ。長さの上限は調べた事は無いが、感覚的には多分【神出鬼没】で移動出来る範囲と同程度だと思う。
因みに、糸付きナイフを2本ではなく1本だけ作った場合は俺の手袋の指の先と繋がる。この場合は伸縮性も多少付与出来るので、投げても戻って来るナイフとして扱えるようになったりする。
但しこの糸、物理的な衝撃には非常に強いが、逆に魔法には滅法弱い。例えばリンドウが何か適当な技を当てるだけでも、この糸は蜘蛛の巣を散らすように霧散してしまうだろう。
「今だ!畳み掛けるぞっ!」
「よっしゃ!出番だ〜!」
「あいよ」
絶好のチャンスに皆が一斉に飛び出す。スウィートはポッ〇ーを持ったぬいぐるみと共に目一杯のお菓子を召喚し、リンドウは大きく渦を巻く水の槍を飛ばす。俺も分裂のナイフを巨大化させて放った。
アミちゃんと呼ばれていた剣士っぽい人形は遠距離攻撃手段を持たないので、フレンドリーファイアを防ぐためにも残念ながら攻撃には不参加だ。
スウィートが人形2体と自撮りをして大爆発を起こす。⋯⋯やはり、発動までの工程が必要なためか、瞬間火力では彼女が飛び抜けているな。
爆煙が辺りを包み、敵の姿を覆い隠す。相当なダメージを与えた筈だが、どうやらまだ決定打には遠いらしい。黒馬がゆっくりと立ち上がっている気配が煙の中から窺えた。
スウィート&リンドウ「「もう全部あいつ1人で良いんじゃね???」」
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