Ep2-23 校外学習ex-5
「⋯⋯⋯⋯今、なんて??」
聞き間違いか?『しぃちゃん』とか、この姿の時には絶対に聞かないような言葉が聞こえた気がしたのだが⋯⋯。
「だから、一緒に戦ってくれないなら、しぃちゃんがアルセーヌでしかもレベル3の勇者だってことを皆に言いふらすって言ってるのっ!!」
「⋯⋯⋯⋯ちょ、ちょっと待ってくれ」
聞き間違いでもない上に、既に確信しているような素振りですどうもありがとうございました。⋯⋯なんでバレてるの??いや、マジで。
坂富 志依奈とアルセーヌの繋がりを匂わせるような事を彼女たちの前で話した記憶は無い。そもそもこの姿でスウィートたちと対面したのはこれが初めてなんだぞ?
「そ、その『しぃちゃん』とやらが誰かは知らないが俺には全くこれっぽっちも関係無いですだぞ??」
「⋯⋯ぷふっ」
「口調混ざってて草」
「〜〜〜っ!」
自ら墓穴を掘ってどうする!?明らかに同様し過ぎだろ!
⋯⋯はあ。まあ、最初から誤魔化せるような段階ではなかったっぽいし、これは諦めるしかなさそうか。
「耳まで真っ赤。可愛い〜」
「仮面意味無くね?」
散々な言われようである。こんな無機質な仮面でも一応トレードマーク的な物だから、いらないとか言わないで。
「もうっ!あーし怒ってるんだよ?しぃちゃんのせいでそんな空気じゃなくなっちゃったじゃんっ!」
お、俺のせいなのか?いや元はと言えばスウィートが変な事を言うから⋯⋯。
「そ、そんな事より!!!どうして私だって知ってるんですか!?学校では『アルセーヌ』は誰にも見られていない筈なのに」
「そうそう、それよそれ」
「ウチら、見てはないけど会ってるんだわ」
「???」
「まあそんなこと今は良いじゃん〜」
「全然良くないが??」
俺の今後を左右する重大事項ですけれども。
「というか、私だと知ってるなら尚のこと分かってくださいよ。友達を危険に晒したくないんです!」
「だからさ、それはあーしらも同じだって言ってんの!」
「友達だって知ってるからこそ、尚更譲りたくねーんだわ」
「⋯⋯ぐっ」
⋯⋯やっと繋がった。スウィートが俺と同じ気持ちだと言った本当の理由。そしてだからこそ、俺と同じくらい彼女にも譲れない理由があるのも理解出来る。
「⋯⋯っ」
暫しの逡巡。とは言え、ここで多少俺が悩んだところで結果は変わるまい。
「⋯⋯⋯⋯分かりました。協力しましょう」
「マジ〜?やった!」
仮に力づくで退場させたとして、彼女らはまた戻って来て危険を冒すだろう。それならこのまま平行線の議論を続けるよりも、いっそのこと俺が可能な限り黒馬からのヘイトを買って、2人に危険が及び辛い状況を作った方がマシではあるか。
「但し!危険を感じたらすぐに逃げる事。それから、その際は最も時間稼ぎに適した私を殿にする事。この2点を必ず守って下さい」
「⋯⋯それはまあ、仕方無いか〜」
「ウチらも多少は折れなきゃね」
⋯⋯7割くらいはあなたに言っているんですよ、リンドウさん?
攻撃力は兎も角、保有魔力量による防御力の差は看過できるものではない。つまりレベル2である彼女は、俺やスウィート以上に注意しなければならないのである。
「先生と同じこと言ってるね〜」
「それだけ2人の事が心配なんですよ!!」
⋯⋯辻宮先生もきっとこのような心情だったに違いない。
友達を、生徒を。大切な人に限った話ではないが、誰かを守るというのはとてつもなく難しいのだと実感する。
「友達だから?」
「そうです!」
「大切な?」
「⋯⋯そ、そうですっ!」
「あーしらのこと好き過ぎでしょ〜」
「茶化すなっ!!」
どうしてこの2人はこんなに余裕そうなんだ?寧ろ結構ピンチの筈なのだが。
⋯⋯全く、こっちがどれだけ心配していると思っているんだ。
「ごめんごめん。あーしもしぃちゃん大好きだから許して?」
「ウチもウチも」
「っ!⋯⋯はぁ〜〜〜、もう良いです。そもそも、別に怒ってないですし」
「照れちゃって、このこの〜」
「可愛いかよ」
「本当に怒りますよ!?!?」
⋯⋯何だろう、とても無駄に体力を消耗したような気がする。一息つくどころか、余計に疲れてどうするんだ。
「てか、口調なんで変えたの?そのままでいーのに」
「勇者じゃない時は2人に対して敬語なので⋯⋯」
「どうせ撮られるから『アルセーヌ』の喋り方にしといた方が良いと思うよ〜?」
「⋯⋯あ、確かに」
緊急事態で忘れていたけれど、これも勇者の戦闘だからいつも通り記録に残るのだろう。そうなるとスウィートたちと話している時だけ敬語になるアルセーヌが映る訳で。⋯⋯どう考えても不自然だな?
「⋯⋯な、なら、普段通り喋らせて貰うからな」
「うんうん、似合ってるよ」
「かっけーじゃん」
「そ、そんな事はどうでも良いんです、⋯⋯だよ」
⋯⋯言葉を矯正するというのは難しいな。素は『俺』で、学校では『私』で、勇者の時は『俺』。
だけど正体バレしているから『私』?でも2人は『俺』で良いと言っていて⋯⋯。
⋯⋯あれ?もうこれ統一した方が楽なのでは?
「また混乱してるね〜」
「たまにバグるよね」
「ね〜」
⋯⋯⋯⋯いやいや、今は口調なんて気にしている場合じゃない。
「あ、復活した」
「分かりやすいよね〜」
「⋯⋯もしかして、また揶揄われてます?」
何となくそのような視線を感じた気がするのだが。⋯⋯気の所為だろうか?
「全然!そんなことないよ〜」
「⋯⋯怪し過ぎる」
「そ、それよりっ!あーしたちはどうすれば良いかな?」
「協力するんしょ?」
あからさまに話を逸らされたな。⋯⋯まあ良いか。本当ならば今この時間すら惜しい訳だし。
「わた、⋯⋯俺が前衛で2人には後衛を頼む。ヘイトを集めるから上手く援護してくれ」
「りょーかいっ!」
「まかセロリ」
⋯⋯薄々思っていたけれど、水倉さんってネットミーム結構好きっぽいよね。
あまりギャルが使っているようなイメージは無いが、何が流行っているとか全然分からないしな⋯⋯。
「アミちゃんたちはどーする?」
「アミ⋯⋯?ああ、ぬいぐるみの事か。万が一もあり得るし、防衛のために2人のところに置いておこう」
『ーーーっ!!』
『〜〜〜っ!!』
ビシっ!と腕を曲げて敬礼をする2体の人形。⋯⋯腕が短いから頭の上まで手が届いていないが、やる気は十分伝わって来た。
「⋯⋯よし、じゃあ俺が先に出て黒馬の注意を引くから、2人は別の場所から攻撃を仕掛けてくれ」
そう言い終えると俺は【神出鬼没】を使い、今も尚8つの眼でギョロギョロと辺りを見回している黒馬の眼前へと飛び出した。
進む進む詐欺して大変申し訳ありませんでした。キャラたちが勝手にイチャつきだしたなどと供述しており...
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