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怪盗勇者アルセーヌ  作者: 十河 水屑
Chapter2, 新学期とギャル勇者
27/39

Ep2-19 校外学習ex-1.5 後

《SIDE-月島》




「流石に親友置いて逃げれんしょ」


「だからって⋯⋯!すっごく危ないんだよ!?」


「それはスウィートも同じじゃん?」


「ぐぅっ⋯⋯」



 それでもリンちゃんはまだレベル2だから、あーしよりも危険度は数段上だと思う。

 どう考えても逃げて貰った方が良い。⋯⋯だけど、相手の攻撃に対応出来る手数を持ったリンちゃんが来てくれたのは、正直とてもありがたい。



「危なくなったら絶対逃げてよ!?」


「だからそれはお互い様だし」



 彼女が途中で引き返してここに来たという事は、みんなが狭間の世界を脱出するまでもうそんなに掛からないのかも知れない。

 だけど結局、このまま何事も無く逃げ切れるほどアイツは甘い相手じゃない。いずれにせよ戦いを継続して、来るかも分からない援軍が到着するのを待つか、気を伺って逃走するかの二択なんだよね〜⋯⋯。



「ウチは小さいのやるから、デカい方頼むわ」


「りょーかい。無理しないでね」


「もち」



 本当は【人形兵(ドール・アーミー)】を1体置いていきたいけど、こっちも黒馬本体で手一杯だ。救けられた手前で本当に申し訳ないけど、自分の身は自分で守って欲しい。



 勇者リンドウが手に持った扇子でヒラヒラと(あお)ぐと、彼女の周りに漂っていた水の塊たちがまるで生きているかのように動き出す。


 (ちな)みに『リンドウ』という勇者名は着物の柄から取っていると本人から聞いたことがある。あーしとしては、変身の前と後で変わらず『リンちゃん』と呼べるから結構好きだ。



「【水槍】」




 ──────ドシュッ!




 やがて水塊は1つの槍を形成し渦を巻く。そうして射出された槍が地面から生えた触手の根元を穿(うが)つと、触手はビチビチと気持ち悪く跳ねた後で完全に動かなくなった。



「よしゃ、こっちならウチでもやれるわ」



 うん、あっちは任せても大丈夫そう。あーしもあーしの仕事をしなきゃ。



「アミちゃん!クルちゃん!いくよ〜!」



 倒された編みぐるみは(しばら)くの間は再召喚が出来ない。つまりこの戦闘では実質ミーちゃんが使えないため、残りの2体で頑張るしかないのだ。



「アミちゃん、道を拓いてっ!」


『ーーーっ!!』



 迫り来る黒馬本体からの触手攻撃を、アイスの剣で次々と切り刻んでいくアミちゃん。すり抜けてくる触手にはマドレーヌの盾で対処したり、クルちゃんがクッキーの大盾を出して防いでくれる。


 だけどそれでも全てを完全に潰す事は不可能で、今ちょうど2本の触手を通してしまった。



「リンちゃん!そっち行ったよ〜っ!!」



 念のため声を掛けると、分かってると言いたげに手を振られる。⋯⋯よそ見したら危ないよ?



「まかセロリ」



 そう言うと、さっきよりも扇子を大きく動かして水を操るリンちゃん。

 今度はフラフープと同じくらいの水の輪っかがいくつか出来上がり、彼女の周囲をふわふわと浮かび出した。



「【水刃】」



 放たれた水輪は狙い違わず、触手はアミちゃんが斬った時のようにスパッと真っ二つに分かたれた。



「いぇい」


「やるぅ〜!」



 あーしも負けてらんない。ここで黒馬本体を叩く!



「今ならいける!シャッターチャンスっ!」


「Curuaッ!?」



 角度は正面、ジャマな触手は対処済み。うん、かなり良い写真が撮れたっ!

 パシャッ!と音が鳴り響き、黒馬の動きが止まる。まるで静止画のように微動だにしないその姿は、きちんと『文明板(スマート・ボード)』の効果が発動した証拠だ。



「特盛サービスでデコっちゃえ〜っ!」


『〜〜〜っ!』



 クルちゃんはクッキーの盾以外にも、【菓子砲(シュガー・ラッシュ)】と同じ効果のお菓子を召喚できる。盾と違って性能はあーしと同じだけど、単純に2倍になるのは凄いっしょ?



「派手なのいくよ〜!はい、チーズっ!!」


『ーーー♪』


『〜〜〜♪』




 ──────ドッカァァアンッ!!




 アミちゃん、クルちゃんもポーズを決めて一緒に自撮り。ミーちゃんもいれば完璧だったのに⋯⋯!


 だけどこれで相当なダメージが入ったはず。これを繰り返せば、もしかしたら──────



「Curoaaaaaaッッ!!」


「今度は何っ!?」



 黒馬が咆哮し、その圧が爆発で舞い上がった煙を吹き飛ばす。


 煙の中から(あらわ)になったのは、触手の数が倍程に増殖し、頭の骨兜がヒビ割れ、その隙間から黒い炎がユラユラと揺らめく、一層不気味さが増した黒馬の姿だった。



「あはは〜、もしかしてマズイ⋯⋯?」


「⋯⋯逃げた方が良いんじゃね?」



 その目は明らかに憎悪に満ちており、8つ全ての眼がこちらに向けられていることもあって背筋が凍りそう。


 今までは何となく『ジャマをする羽虫』くらいにしか思われていなかったのが、明確に『敵』として認識されたような気がする。



「⋯⋯見逃してくれなさそ〜」



 だってほら、触手ぜーんぶこっち向いてるし。イソギンチャクみたいで正直かなりキモイんですけど。⋯⋯って、そんなこと考えてる場合じゃない!



 ズドドドッ!と黒馬が連続で種子を飛ばす。さっきまでと数が比較にならない上に、なんかやたら大きいんですけど!?



「リンちゃん、撃ち落とせるっ!?」


「【五月雨】っ!」



 あーしもスキルを総動員して撃墜を試みる。『文明板』やクルちゃんの盾で止めることはできるけど、破壊となると難しい。【菓子砲(シュガー・ラッシュ)】は爆発までラグがあるから、こんなとき即座に対応できないのが弱点なのだ。



「ダメ、鬼固い!」


「ぐぅっ⋯⋯!」



 悔しいことに火力が足りず、ほとんど全ての種子の着弾を許してしまう。


 途端に成長する触手。ほぼ全方向で黒い触手がワラワラと蠢いている様はまるで熱を出した時に見る悪夢みたい。



「全部処理するしかないっ!」


「エグすぎて笑えんし⋯⋯!」



 アミちゃん、リンちゃんと協力して1つずつ斬ったり爆破したりしていく。触手は種よりは柔らかいので、あまり通りは良くないものの破壊はできそう。



「Curooonッ!!」


「本体が来てるっ⋯⋯!」


「⋯⋯無理くね?」



 ⋯⋯ただ、触手の破壊に集中すると、当然本体がフリーになるワケで。

 そのままあーしらを放っておいてくれるほどアイツは優しくない。


 その巨体からは考えられないほどの勢いで8本の脚を動かし接近する黒馬。孔雀の羽のように触手を広げ、脚の先端でガリガリと地面を削りながら突進してくる様はまさに恐怖でしかない。



「⋯⋯やば!触手がっ!?」


「っ!本体(あっち)に気を取られて⋯⋯!」



 前後左右から伸びてきた触手にほぼ同時に絡め取られるあーしとリンちゃん。


 あーしのバカ!どっちも中途半端になったせいで一番最悪な結果にっ⋯⋯!!



「アミちゃんっ⋯⋯!」


『ーーーっっ!?』



 咄嗟(とっさ)にアミちゃんを呼んだけど、向こうも大量の触手に行く手を阻まれている。⋯⋯どう考えても間に合わないっ!!



 ⋯⋯ヤバいヤバいヤバいっ!!あの質量は流石にクルちゃんでも防げないし、もしかして、打つ手無し?



「⋯⋯これは無理っぽい」


「そだね」


「⋯⋯?リンちゃん、怖くないの?」


「めちゃ(こえ)ーよ?けどさ」



 あーしの少し後ろで拘束されているリンちゃんが、滅多に見せない優しい笑顔を更に後方へと向けながら言葉を続ける。



「⋯⋯なんかウチら、ここで死ぬ気がしないんだわ」


「まさか⋯⋯」




 ──────ああ、やっぱり(・・・・)



 逃げてと言いつつも、心のどこかではこうなるような気がしていた。


 ⋯⋯だってキミは、そういう子だもん。



 既に黒馬は目前に迫っていて、あーしたちがやられるまではあと数秒も無いだろう。


 だけど既に心からは、さっきまで感じていた恐怖は綺麗さっぱり消えさっていた。




触手プr...


次回からやっと主人公視点に戻ります。...おかしいな、1話で収める予定だったのに。


ここまで読んで頂いてありがとうございます。

もし宜しければ、ブックマークや下の☆から評価をして下さると黒馬くんが喜び、絡みついた触手からヌルヌルの粘液を分泌するようになりま...なりま...せん。

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