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怪盗勇者アルセーヌ  作者: 十河 水屑
Chapter2, 新学期とギャル勇者
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Ep2-13 校外学習⑤

難産でした...




「ここから先は研究・開発棟になります」



 食事も兼ねた長めの休憩が終わり、校外学習も午後の部へと差し掛かる。

 (ちな)みに食事は、トレーニングルームに併設されている食堂で頂いた。どの部署からもそれ程遠くならないように、この施設の大体中央に設置されているのだそう。

 うちの学食も大概豪華だと思っていたが、ここはそれ以上だ。下手なレストランよりも美味しいと感じるくらいには間違い無く気合いが入っていた。



「こちらでは魔法や魔物、それから狭間の世界についての研究や、魔道具の開発が主に行われております」



 そう言って多紀(たき)さんは一つの扉の前で止まり、扉の横に付いている装置に首から下げていた社員証を(かざ)す。どうやらこれがカードキーの役割も果たしているらしい。


 そうして招き入れられた先では、白衣を纏った見るからに研究者といった風貌の大人たちが、大量のモニターと睨めっこをしていた。

 そして部屋の奥が魔法強化アクリル(俺が勝手にそう呼んでいる)で区切られており、その向こうには何やら魔道具と思われる四角い装置が乗った台がある。何人かがその台を弄り回している様子が伺えた。



「ここは現在主力のプロジェクトとなっている、『バリア発生装置』の開発区画になります。今は耐久テストの準備をしているようですね」



 大きさは多分一般的なルービックキューブと同じか少し大きいくらい。色は黒、と言うか魔道具は製造過程の都合で(ほとん)ど黒色になるらしい。



 そうしてバリアの魔道具についての概要を聴いている途中、後ろの扉、つまり俺たちが入って来たのと同じ扉がスゥッと開いた。



「あら、もういらしていたのですね」



 コツコツというヒールの音と共に、艶めかしい女性の声が室内に響く。



「⋯⋯っ!局長、どうしてここに!?」


「仕事が早く片付いたので、折角だからこちらに顔を出そうと思いましたの」



 多紀さんが慌てて振り返り疑問を呈すると、局長と呼ばれた人がゆったりとした口調でそれに答えた。⋯⋯あの多紀さんがそこまで慌てるなんて、余程想定外の事なのだろうか。




 ん?局長?そう言えば、魔法省特殊防衛局の局長といえば確か⋯⋯。



「⋯⋯!?」



 俺はとんでもない事実に気が付き、多紀さんと同様かそれ以上に狼狽しつつ振り向いた。



「御機嫌よう皆様方。わたくしこちらの局長を務めております、千穂院 真理亜(せんほいん まりあ)と申します」


「⋯⋯え?千穂院って、まさか」


「あの、元レベル()勇者の、千穂院 真理亜ぁ!?」


「「「ええぇぇぇっ!?」」」



 クラスメイト一同が今日一番の驚愕に染まる。仕方あるまい。何故ならこの人は元レベル5勇者。つまり『原初の勇者』その人であり、まさに生ける伝説なのだから。


 『災厄の日』は20年前の出来事。半数以上が引退後に行方知れずとなってしまったが、現在も素性を公開して生活している原初の勇者は確かに存在するのだ。


 その内の一人がこの方。聖女とまで呼ばれた『勇者マリア』なのである。



「ふふっ、過去の栄光ですわ」



 (よわい)は確か40歳だった(はず)だが、全くそうは見えない。二十代前半と言われても普通に信じてしまいそうだ。




「⋯⋯すっごい人だね〜。ほら見て、あのおっぱい」


「そうですn⋯⋯って、な、何を言ってるんですか!?」



 月島さんが声を(ひそ)めて真剣な顔で話し掛けてきたので一瞬同意しかけてしまったが、この人は本当に何を言っているのだろうか。⋯⋯いや、確かに凄いけども!


 ⋯⋯あ、ほら!辻宮先生がこっち睨んでる!お、俺は関係無いですからね!?




「⋯⋯全く、あいつらは。すみません、うちの生徒が」


「いえいえ、可愛らしくて素敵ではありませんか」



 うふふ、と笑っている千穂院さん。⋯⋯どうやら機嫌を損ねる事は避けられたらしい。寛大な人で助かった。



「⋯⋯全く。心臓に悪いので止めて下さい」


「えへへ、しぃちゃんより凄かったからびっくりしちゃって〜」


「そんなしょうもない事で一々驚かないで下さいよ」


「でも確かにアレはすんごいわ」



 水倉さんまで⋯⋯。せめて俺の居ないところでやってくれないだろうか。二人の事は全然嫌いではないし(むし)ろ好きな方だが、こういう時は俺まで彼女たちと同じノリだとは思われたくない。


 ⋯⋯あと何より、元原初の勇者から話を聞けるという、貴重な機会を無駄にはしたくないのだ。




「今は大人しくお話を聴きましょう。⋯⋯ね??」


「「は、はぁい⋯⋯」」



 俺が少しだけ怒っているのが伝わったのか、バツが悪そうに「ごめんね?」と謝罪する月島さんと水倉さん。⋯⋯か、可愛く謝ってもそんなすぐには許さないんだからな!



 ⋯⋯とかやっている間に、千穂院さんの話は進んでいる。いけない、しっかり拝聴しなければ。



「皆様の知見を深める良い機会になればと思って、今日この場を設けさせて頂きましたの」


「このクラスの担任の辻宮です。今日はお招き下さり誠にありがとうございます」



 ⋯⋯おお、あの辻宮先生までもが殊勝な態度だ(失礼)。まあ、彼女たちは歴代を含めた全勇者の憧れというか、もはや偉人とかそんなレベルだからこれが当然なのだが。


 聞けばどうやら、今年は特別に色々便宜を図ってくれているらしい。あの巨大な演習装置にしてもそうだし、本来なら校外学習でも立ち入り禁止の区画は結構あったのだとか。



「あの子にも少しだけ無理を言ってしまいましたわ」


「あの子、ですか?」



 ええ、と千穂院さんが頷くとまたも扉が開き、新たな人物が部屋へと入って来た。





何がとは言いませんが、

『千穂院 > 主人公 > 月島 >>[越えられない壁]>> 水倉 > 風兎』です。何がとは言いませんが。


ここまで読んで頂いてありがとうございます。

もし宜しければ、ブックマークや下の☆から評価をして下さると作者が喜び、HPが満タンの時に相手から受けるダメージが半分になります。

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