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怪盗勇者アルセーヌ  作者: 十河 水屑
Chapter2, 新学期とギャル勇者
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Ep2-12 校外学習④




「ふぅ、楽しかった〜!」



 『スウィート』の装束を解いた月島さんが演習を終えて外へ出てくる。バトルスタイル的に運動量はそれほど多くない(はず)だが、演習装置が外の気温まで再現されていたためか首や胸元に(うっす)らと汗が滲んでいる。



「すげー!大鬼(オーガ)をあんなにアッサリ倒すのかよ!」


「流石レベル3ね!」



 クラスメイトから賞賛の嵐を受ける月島さん。まあ、同級生の戦闘をこんなに間近で見る機会なんて、同じ地区担当でもないと中々無いもんな。

 それも一年生では非常に珍しいレベル3だ。俺が同じレベルだから忘れがちだけど、一人前と言われるレベル3にこの歳で到達しているのはとても凄い事なのである。



「しぃちゃん!あーしのバトルどうだった〜?」


「す、凄くスムーズで素晴らしかったと思いますよ」



 なぜか彼女は俺が居る方へと戻って来たので、少し戸惑いながらも素直な感想を述べる。

 実際、目を見張る点は多かった。まずはあのスマホ。恐らくは勇者武器だと思うが、カメラで撮影した相手が停止(スタン)するという効果かな?範囲や速射性にも優れていて、かなり使い勝手が良さそうだ。

 それにスキルとのシナジーもある。撮影(スタン)した相手をデコレーションして、最後は高火力の自撮りでフィニッシュ。

 全体的にとても月島さんらしくて面白いと思う。



「へへ、ありがと〜!」


「ウチにも感想聞けし」



 俺の後ろからにゅっ、と顔を覗かせた水倉さんがむっとした顔で言う。⋯⋯あの、俺を挟まないで下さい。



「えー?リンちゃんはもう何回も見てんじゃん〜」


「⋯⋯まあ、そーだけど」



 ああ、そうそう。実はこの二人担当地区が一緒らしい。ここを歩いて移動する道中で聞いた。だからいつも仲が良いのかと納得。



「⋯⋯今日も良かったんじゃね?」


「ふふ、いつもありがと!」



 若干照れたように控えめな賞賛をする水倉さんと、全部分かってるよとばかりに満面の笑みで礼を言う月島さん。⋯⋯は?何だ、てぇてぇか?万病に効いちゃうぞ?

 ギャル同士のてぇてぇありがたや⋯⋯。



「⋯⋯なんで拝んでんの?」


「はっ、すみません、つい⋯⋯!」


「あはは、変なしぃちゃん〜」



 この二人は俺が想定していたよりも親密な関係にあるのかもしれない。⋯⋯いや、可能性の話だよ?少なくとも親友なのは間違い無さそうだけど。



「二人はアレやんないの〜?」


「鬼混んでるからいいわ。後で()いたら並ぶ」


「⋯⋯私は戦闘が苦手なので」



 月島さんが演習装置の方を指差して訊ねる。俺は言い訳を口にするが当然建前で、本音は勇者としての姿を晒したくないからなのだけど流石にそれは言えない。


 そもそも、ここまでして正体を隠す必要があるのかと問われると、正直よく分からない。

 『アルセーヌ』が新進気鋭の勇者として注目を集めているとは言っても、それは所詮新人勇者を気にしているごく一部のオタクや政府関係者が(ほとん)どだろうし。


 とは言え過度に注目されるのは趣味ではないので、最低でもレベル3である事はクラスメイトたちには伏せたいと思っているが。



「サポート志望って事?凄いね」


「そうなん?得意そうだと思ってた〜」


「え?どうしてですか?」



 勇者になる前の俺がそうであったように、サポート志望の勇者も数は少ないながら存在する。大抵はスキルが戦闘向きではなかったり、性格的な適正だったりする。

 そもそも、協力してくれる勇者が居ないと研究も開発も成り立たないため、不人気ではあるがとても大変で需要のある仕事なのだ。


 ところで月島さんは何故そんな事を思ったのだろうか?学校生活において全くそんな素振りを見せた覚えは無いのだが⋯⋯。



「え、何となく〜?」


「そ、そうなんですね⋯⋯」


「適当かよ」



 ⋯⋯全く、身バレの危機かと思って少し焦ったじゃないか。とは言えマモ様曰く、相手を見れば強さが一瞬で分かるような勇者も実際に居るらしいからあまり油断は出来ないが。



「はずれか〜。カン当たる方なんだけどな〜」


「⋯⋯まあ、そういう事もありますよ」



 月島さんの前では今までよりも更に慎重に行動した方が良いかも知れない。⋯⋯この人、学校では割とずっと近くに居るんですけど?いきなり無理ゲーか?



「なんか自由時間みたいだし、(しばら)く休憩〜」


「そーいや茶瑠兎(たると)さっきまでバトってたんだったわ」



 そう言って近くの長椅子に駆け寄る二人。俺も手を引っ張って連行される。


 何故か俺を真ん中にして、月島さんと水倉さんに挟まれる形で座る事になった。⋯⋯本当に何故?



「あ、あの、なんで私が真ん中なんですか?」


「その方が楽しいじゃん〜」


「ん、そゆこと」



 そう言ってギュウギュウと、更に間隔を詰めてくる二人。いやいや待って待って、それは本当に駄目だから。

 百合の間に俺を挟むな!!!と声を大にして言ってやりたいが、誠に情けない事に俺にはそんな度胸は無い。


 て言うか二人とも!脚!出し過ぎ!!太腿(ふともも)当たってます!!!



「そ、その、恥ずかしいので、もう少し離れて貰えると⋯⋯」


「えー、なんで〜?」


「友達なら普通じゃんね」



 こ、これが普通⋯⋯?ギャルにとってはこれは当たり前の事なのか?それとも女子全部が⋯⋯?

 あれ?で、でも俺は中身男で、だけど今は女子で⋯⋯。あ、頭がこんがらがって来たぞ〜⋯⋯?



「⋯⋯?⋯⋯??」


「しぃちゃんのこーゆーとこ、ほんと可愛いよね〜」


「ん、萌えだわ」



 まだ二人は何か言っていたが、俺にはそんな事を気にしている余裕など到底無かった。




おかしいな、ストーリーを進めるはずだったのに気付いたらギャル2人とイチャイチャするだけの話が爆誕してしまった...。

ここまで読んで頂いてありがとうございます。

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