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怪盗勇者アルセーヌ  作者: 十河 水屑
Chapter2, 新学期とギャル勇者
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Ep2-11 校外学習③

GWは、終わらねェ!!!(最終日)




「よっしゃ、アゲてくよ〜!」



 月島さんが言葉を発した直後、先程まではただ黒いだけだった壁や床、天井に変化が生じる。


 まず床がアスファルトの道路へと変わり、その端には建物が並んだ。

 次に鈍く光る紅い月が空に浮かび、道路や建物が不気味に照らされる。

 最後に歩道橋や街路樹等の細かいオブジェクトが現れて、景色の変化は止まった。


 ややあって完成したのは、どこからどう見ても狭間の世界の街並みその物だった。



「えっ、マジ!?ここ室内だよね〜?」



 月島さんが驚きの声を上げているが無理もない。俺だって同じ気持ちだし、他のクラスメイトたちも皆開いた口が塞がらないといった様子である。



「は〜、やっばぁ。本物にしか見えないんですけど〜」



 キョロキョロと辺りを見渡す月島さん。そこへ、一際大きな影が近付いた。




「Guoooooッッ!!」


「おっ、オーガ発見〜」



 推定5メートルはある巨大な体躯に丸太のように太い腕と脚。牙の生えた醜悪な顔は獰猛な笑みを浮かべている。


 レベル3魔物、通称大鬼(オーガ)。トップバッターの月島さんは相手を選んでいる時間が無かったので多紀(たき)さんが選んだ魔物である。

 大鬼は何か特別な能力を有している訳では無いが、他の同レベルの魔物よりも体力や筋力が高い。シンプルでクセが無い魔物なので、どんな勇者だったとしても演習には丁度良いとの判断だろう。



「うっし、やるよ〜!」



 ここで月島さん、⋯⋯いや、勇者『スウィート』について、俺の知っている事を説明しようと思う。


 普段の金髪ツインテールを更に豪華にしたような派手な髪型。制服を着崩すとか最早(もはや)そんな次元ではない、肩もお(へそ)太腿(ふともも)も露出した服装。これぞ(まさ)に"ギャルの装束"とでも言うべき姿だ。


 レベル3にしてはかなり若いという理由で、結構注目されている勇者らしい。本人の気質的に、特に同年代の女性に人気なのだそう。



「ほい、ほい、ほいっと〜!」



 スウィートが空中で手を跳ねさせると、クッキーやマカロン、動物の形をした砂糖菓子、マジパンだっけ?など沢山のお菓子が出現する。



「そーれ、行け〜!」



 指を進行方向へ向けて指示を出す。するとお菓子の群れはオーガに向かって一斉に突撃を開始した。


 デフォルメされたお菓子の猫や兎が列を()して突進する様子は、まるで小さなパレードのようにも見える。



「Gaaaaaッッ!!」



 しかし大鬼は、強靭な腕を振り回してお菓子の群れを砕いてしまった。⋯⋯ちょっと勿体無(もったいな)い。



「もー、折角デコってるんだから動かないでよ〜!」



 頬を膨らませてぷんすかと怒るスウィート。⋯⋯え?今、デコるって言った?


 攻撃された仕返しとばかりに接近する大鬼。拳は大きく振りかぶられ、今にも強烈な一撃が飛んで来ると思われる。



「仕方ないなぁ〜」



 そう言って彼女はゴソゴソとズボンのポケットを漁ると、何故かスマホを取り出した。

 ステッカーやアクセサリー等で多少ゴテゴテはしているものの、俺が持っている物と同じような普通のスマホに見える。


 スウィートはそうしてスマホを起動させ、(おもむろ)に画面を覗いた。




「笑って笑って〜!はい、チーズっ!」



 ──────パシャッ!



「Gaッ!?」



 フラッシュと共に音が鳴ると、スウィートのすぐそこまで迫っていた大鬼の動きが突然停止した。



「Ga⋯⋯Gu⋯⋯!」



 (うめ)き声を上げながらも指先一つ動かせない大鬼。その顔は怒りに歪んでいる。



「よっしゃ、今だ〜!」



 その隙に再びお菓子を召喚して突撃させるスウィート。

 当然、大鬼は何も抵抗する事が出来ず、そのままお菓子の群れに呑まれてしまう。



「Guuuuuッ⋯⋯!」


「あはっ、可愛いじゃん〜!」



 パレードの波が収まると、そこには大量のお菓子で飾り付けられた大鬼が居た。頭や肩にはマジパンの動物が乗っており、マカロンの帽子にクッキーの髪飾り(髪なんて無いけど)を身に付けている。


 正直に言ってしまうと、物凄くコメントに困る見た目をしていた。⋯⋯これが、可愛い?



「はーい、追加だよ〜!」



 スウィートは手で空中をくるくると掻き混ぜ、大鬼に向けて放った。


 すると彼女の手の先からホイップクリームが飛び出し、大鬼の腕や脚、首元にも絡み付く。



「Gaaau⋯⋯」


「ん〜、こんなもんかな?」



 気の所為(せい)か、どことなくグッタリしているように見える大鬼。⋯⋯おかしいな、コイツは過去の記録から作られたただのデータの(はず)なんだけどな。

 それともこの魔道具がそれ程リアルって事か?詳しく知らないから何とも言えない。



「それじゃあ、これでおしまい!」



 飾り付けられた、⋯⋯彼女風に言うならデコられた大鬼の少し前に立ってスマホを手に持つスウィート。

 スマホを持った方の腕はピンと伸ばし、逆側の手はピース。腰を少し曲げ、片目を閉じてウインクをしている。⋯⋯完全に自撮りのポーズだ。



「ほらほら、いっくよ〜!はい、チーズっ!」




 ──────ドッカァァンッ!



 盛りに盛られた大量のデコレーションが、フラッシュ音と共に全て爆発する。それに耐え切れなかった大鬼は、綺麗さっぱり消滅してしまった。




ここまで読んで頂いてありがとうございます。

もし宜しければ、ブックマークや下の☆から評価をして下さると作者が喜び、GW中に旅行に行って来ました。

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