Ep2-6 タネ明かし
「うぁぁぁぁああ、だるぅぅう⋯⋯」
「お兄、大丈夫?」
時刻は既に夕方。黒騎士の討伐を終えた俺は、現在リビングのソファにかれこれもう二時間は寝そべっていた。
「魔力使い過ぎた⋯⋯」
黒騎士との戦闘で使用したスキル。厳密にはスキルではなく勇者アルセーヌの専用武器『奇術帽』の効果なのだが、これがとにかく燃費が悪い。
レベル2以上、つまり装束が解放されている勇者は専用の武器を必ず装備している。剣だったり槍だったりと種類は勇者の数だけ存在するが、俺の場合はそれが帽子だった訳だ。⋯⋯これは果たして武器なのか?
魔力消費量を比較すると凡そ【盗む】<<【神出鬼没】<<[越えられない壁]<<『奇術帽』のような構図になる。【神出鬼没】も【盗む】に比べたら随分と消費が多い方だけど『奇術帽』はそれをゆうに上回る。
「調子に乗って魔法をばら撒くからだ、馬鹿者」
ソファの背もたれの上に座って俺を見下ろすマモ様。顔を見るまでも無く呆れているのが分かる。
「だって、マジックショーって派手じゃん⋯⋯」
経費を削減し過ぎた所為で地味なマジックショーなんて、少なくとも俺は見たくないので⋯⋯。
「ノリノリだったもんね!」
「なんか段々と興が乗って⋯⋯って、え?なんで知ってるの?」
「え?動画見たからに決まってるじゃん」
⋯⋯あぁ、そうだ、そりゃあ見るよな、俺だって見てるんだから。
ぐぬう、身内に見られていると知ったら途端に恥ずかしくなって来たかも。
「なんかすっごい悪そうな顔してたよ」
「え、そうなの?」
「『計画通り!』って顔だった」
マジ??⋯⋯不安だから後で動画確認しとこ。
ちゃんと動画は見てからアップロードした方が良いのは分かっているけれど、画面の中の自分を見るのが恥ずかしいんだよな⋯⋯。
「でもカッコ良かったよ。流石お兄!」
「⋯⋯そ、そっか」
嬉しいやら恥ずかしいやらで複雑な気持ちだ。⋯⋯風兎が嬉しそうにしているなら良いか。
「手品みたいだったけど、あれも能力なの?」
「まあそんな感じだな」
実際は手品じゃなくて魔法なのだが。⋯⋯手品みたいな魔法って変だな。普通は逆だし。
「へぇ〜!どんな能力?」
「タネ明かししたら面白くないだろ?」
「えー!ちょっとで良いから!」
「えぇ〜⋯⋯」
結局根負けしたので、さくっとだけど黒騎士との戦闘で俺が何をしたのかを説明してあげた。
簡潔に言うと奇術帽の効果は『様々な能力を持った小道具を取り出す』というものだ。赤いボールもナイフも、なんと鳩ですら小道具扱いだ。
途中で4本のナイフを1本に纏めたがあれも能力の一つで、ナイフに限らず他の道具でも纏めた個数(最大4つ)によって能力が変わる。但し鳩は除く。指に挟めないからな。
例えばナイフ4本を纏めたら『分裂』の効果となり、投げて暫くすると若干小ぶりな無数のナイフに分かれて飛んでいく。
そして1本なら『刻印』。俺のスキルの一つ【盗む】は本来、腕をターゲットに触れさせる事で"盗める"ようになりスキルが発動する。
刻印のナイフは相手に刺しても斬っても全く痛みもダメージも無い上に傷はすぐに元通りになるという、ナイフとしての本来の役割は全く果たせない。その代わり、このナイフを刺した物は"盗める"状態になる。
要するに、これがあれば遠距離からでも物を盗めるようになる訳だ。
但し強力な分制限も多く、まず消費魔力が他の小道具よりも更に多い。それだけならともかく、生物は盗めないし、あまり大き過ぎる物も駄目だ。丁度黒騎士の剣くらいが限界。俺がいつもやっているような、頭を盗んで即殺!とかも残念ながら出来ない。
「じゃあ、鎧さんにナイフが刺さってたのは盗むためだったって事?」
「そういう事。⋯⋯俺がナイフの雨に紛れさせて何本か別のナイフを投げる所は映ってなかったのか?」
「うん、傷だらけになる鎧さんが映ってた」
⋯⋯カメラワークの所為でタネがバレるという心配はしなくて良さそうかな?どういう原理であの動画が撮影されているのかは知らないけど。
あの時は魔石があるであろう心臓の位置と剣の柄の部分、それからダミー用に数箇所ナイフを刺した。
武器とそれを持つ手にナイフが刺さっても気にせず、鎧の上から魔石まで刃が届く。そんな黒騎士という魔物が相手だったからこそ上手くいったのであり、内心そこまで余裕だった訳ではないのだ。
「つまり、あのナイフのお陰で剣とか魔石を盗めたんだね」
「ああ。これからも一番多用する能力になるだろうな」
俺の数少ない武器攻撃かつ遠距離攻撃だからな。分裂のナイフの方は投げなければシンプルに強力なナイフとしても運用可能なので、お世話になる場面はきっと多くなるだろう。
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