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怪盗勇者アルセーヌ  作者: 十河 水屑
Chapter2, 新学期とギャル勇者
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Ep2-4 黒騎士①




「⋯⋯えっと、確かこの辺だよな」



 今日はお仕事である。何故か久しぶりのような気もするけれど、基本的には一日に1回か2回は魔物討伐を(こな)している。

 昨日だって、風兎(ふう)や月島さんと買い物に行った後にマモ様に言われて夜の街(狭間の世界には昼も夜も無いが)を走り回ったのだ。⋯⋯俺、少し働き過ぎじゃないか?それが正しい勇者のあり方だと言われたら何も言えないんだけども。



「んー、何処にいるんだ?」



 大抵の魔物は声や足音等の気配がする上に、群れだったり身体が大きかったりするため出現したらすぐ分かるのだが。



「隠れているのか?」


「そんな魔物は見た事が無いが⋯⋯」



 珍しくマモ様にも分からないらしい。レベルは3だから、そこまで大した魔物ではない(はず)だけど⋯⋯。


 魔力は感じるから居る事は分かっている。しかし中々見つけられない。



「⋯⋯ん?もしかしてアレか?」



 10分程探し回って(ようや)く見つけたのは、身長2メートルくらいの黒い全身甲冑(フルプレートメイル)だった。



「この地域担当の勇者とかじゃなくて?」


「うむ、どうやらアイツで間違い無いようだ」



 色が黒で多少威圧感はあるが、姿形は西洋の騎士っぽい。手には幅が広めの両手剣を持っている。

 多少背は高いものの、パッと見だと人間にしか見えないな。



「⋯⋯魔物ならやるしか無いか」



 人間を相手にしているみたいで若干気が進まないな。

 (しばら)く観察してみるが、黒騎士は微動だにしない。だから見つけ辛かったのかと納得すると同時に、こうまで静かだと逆に生きているのかすら疑わしくなってくる。



「初手で決める!」



 敵の懐に飛び込み、首から上を【盗む】で奪い取ってから【神出鬼没】で離脱する。『アルセーヌ』になってからもう数え切れない程繰り返した、一撃必殺の黄金コンボだ。


 黒騎士は棒立ちのまま動かない。結局そのまま、あっさりと頭部を盗み去る事に成功した。



 ⋯⋯この技の難点としては、これでは怪盗と言うよりも暗殺者っぽいという点。

 俺知ってるんだからな。時々アップロードしている動画のコメント欄で『死神で草』とか『怪盗は添えるだけ』とか言われてるの。


 正直自分でも『衣装以外に怪盗っぽい事してないなあ』とは思っているけど、これが一番楽で早いのだから仕方が無い。



「今日もこれで、──────うぉっと!?」



 ブォンッ!と、一瞬前まで俺が居た場所を鉄の塊が通り過ぎる。



「⋯⋯(あっぶ)な!まだ生きてるのかよ」



 チラリと騎士を見ると、切断面は真っ暗で一滴の血すら出ていなかった。



「なるほど、中身が無い(・・・・・)のか」



 通りで気配が薄い訳だ。まさか生物ですらなかったとは。


 ⋯⋯とは言え不味いな。こうなると、アイツに有効な攻撃手段が限られてくる。

 基本的に俺の攻撃は【盗む】による身体の切り離しなので、非生物相手だと効果が薄い。非生物系魔物は数がかなり少ないため今まで見た事は無かったが、相手にするとこうも面倒なのか。



「⋯⋯さて、どうしよう」



 攻撃を受けた事で戦闘モードにでも切り替わったのか、先程からは考えられない程機敏に動き出す黒騎士。

 敵の攻勢の合間に蹴ったり殴ったりで応戦するが、鎧が多少凹む程度で大して効いている様子は無い。

 俺は勇者の中でも身体能力に長けた方なのだが、特に攻撃用のスキルを持っている訳でもない。物理攻撃も(ほとん)ど通用しないと考えて良いだろう。


 両手剣による攻撃は全体的に大振りで、避ける事は容易いがこのままだと千日手だ。あと地味に脇に抱えたままの頭が邪魔だ。



「となると魔石を狙うしかないか」



 魔物の身体には必ず魔石と呼ばれるものが存在する。どうやらこれはエネルギー源になっているらしく、壊された場合は例外無く魔物の活動は止まり、やがて消滅する。


 魔石はこちらにとっても有用な資源であるため、買取価格分の報酬が上乗せされる。だから可能な限り無傷なまま回収したかったのだが、他に手段が見つからないのだからやむを得ない。


 後は魔石が何処にあるかだが、幸いにも相手は人型だ。生物の形を模した魔物は、たとえ非生物系だったとしても弱点はそのままの場合が多い。



「頭の中には、⋯⋯無いな」



 一応抱えたままの頭の中身を確認し、魔石が入っていなかったので放り捨てる。これで両手が空いた。

 頭に無かったという事は恐らく心臓、つまり左胸の辺りに魔石があると思われる。



「⋯⋯俺の狙いがバレてるのか?」



 先程から【盗む】を使う隙を伺っているのだが、俺が黒騎士の胸辺りに手を伸ばそうとするとすかさず剣で応戦してくる。相手の方がリーチが長いのでここは一旦引くしか無い。


 明らかに俺のスキルを警戒している。初手で頭を盗んだのは失敗だったかも知れないな。どんなスキルかまでは分からなくても、腕を使って何かするという事くらいは分かっていそうだ。

 レベル3の魔物にしては小柄だと少し侮っていたが、(むし)ろ強さは同レベルの中でも上位なのではないだろうか。少なくとも俺がデビュー戦で倒した蜘蛛より強いのは間違い無い。



「真正面から突っ込むだけだと無理か」



 気配を察知されているのか知らないが、後ろに回り込んでも何故かすぐに対応される。となると少し工夫が必要だろう。


 一旦黒騎士と距離を取る。敵も引き離されまいと詰め寄って来るが、転移も駆使してとにかく逃げ回る。ある程度距離を取った所で敵は追って来なくなり、剣を構えた姿勢のまま直立不動となった。⋯⋯よし、いける。



「さあ、開演だ!」



 燃費が悪いからあまりやりたくないのだが、どうやら手札を切るしか無いみたいだ。




ここまで読んで頂いてありがとうございます。

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