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怪盗勇者アルセーヌ  作者: 十河 水屑
Chapter2, 新学期とギャル勇者
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Ep2-3 増し増し姦し




「このベスト可愛い!」


「ワンピースもめちゃエモいよ〜」




 ワタシは着せ替え人形⋯⋯。ワタシは着せ替え人形⋯⋯。




「うわあ、このスカート良いなー!」


「骨格はストレートだから、あれとこれと〜⋯⋯」




 ワタシは着せ替えロボット⋯⋯。ワタシは着せ替えロボット⋯⋯。





「「何でも似合うから迷う〜〜!」」



 ワタシは着セ替エ⋯⋯⋯⋯⋯⋯はっ!?あ、あれ、俺は一体何を?

 あ、危うく着せ替えアンドロイドになる所だった。女子って恐ろしい⋯⋯。



「てゆうかスタイル良すぎ!ほんと羨まし〜」


「分かる!ずるいよねー!」


「いや、それを言うなら月島さんの方こそ⋯⋯」



 彼女はスラッとしているがきちんと必要な筋肉は付いている。こういう言い方をすると変態っぽいが、とてもハリがあって健康的な肢体をしていると思う。服の丈が全体的に短いため肌色の面積が多く、率直に言えば目のやり場に少し困る。



「まあね!これでも頑張ってんだ〜」



 まあ勇者をやっていれば余分な肉が着くような生活にはまずならないのだが、より良い自分を目指すために月島さんが努力しているというのは本当なのだろう。俺もこの精神は見習うべきかもしれない。



「良いなあ、たるとちゃんもしぃ(ねぇ)もスタイル良くて」


「あはは、ふぅちゃんはまだこれからじゃん〜!」



 そう言って月島さんは風兎(ふう)の頭を撫でる。風兎も満更でもなさそうだ。

 ⋯⋯着実に妹が懐柔されている。月島さん、恐ろしい子。



「あ、そだ。気になってたんだけど、しぃちゃんの担当区域ってどこなん〜?」


「⋯⋯えーっと、郊外の辺鄙な所ですかね」



 野良だから本当は担当区域なんて無いので、一応俺が主に活動している場所を答えておいた。

 野良はこの辺結構面倒で、他の勇者たちの仕事を奪い過ぎないように気を付けないといけないらしい。

 政府所属の人たちからすれば自分の担当区域の仕事がいつの間にか取られているという事なのだから、納得出来る話ではある。


 今の所はマモ様がここに行けそこに行けと俺に指示を出してくれているのだが、これがまた遠くて⋯⋯。

 狭間の世界なら一般人に見られる心配は(ほとん)ど無いので、毎回全力ダッシュで向かっている。

 まあレベル3の魔物にもなると予兆の発生から出現までに最低でも1時間は掛かるから、本当はそこまで急ぐ必要は無いんだけど⋯⋯。



「残念、近かったら一緒に仕事出来るかもって思ったんだけどな〜」


「そ、そうですね⋯⋯」


「勇者名は秘密な感じ〜?」



 学校でのレベルや勇者名(俺の場合なら『アルセーヌ』)の開示は基本的に自由となっている。

 多くの同級生は知名度獲得や宣伝も兼ねて自分のレベルや勇者名を公開しているが、秘密にしたい人も中にはいる。俺もその一人だ。



「すみません⋯⋯」


「謝る事じゃないから!色々事情があるもんね〜」



 ⋯⋯俺って秘密だらけだなあ。こればっかりは俺にはどうしようも無いんだけど。



「まあもし仕事で一緒になったら、そん時はよろしくね〜」





× × ×





「⋯⋯はぁ、疲れたぁ」



 やっとの思いでショッピングを終え、今は帰路の途中。空はすっかり夕焼け色に染まっている。


 最終的な戦果は紙袋が5つ。スカートにトップス、ジャケットにカーディガン、ワンピースetc...。様々な洋服や靴が全ての袋いっぱいに詰まっている。

 二人に服の種類とか色の組み合わせ等を教えて貰ったがまるでちんぷんかんぷんだった。最悪、また風兎に聞こう。


 お値段はどれも中々のもの。高校生にとってはどう考えても痛恨の出費だけど、そこはまあ、勇者なので。

 魔物を倒せばお金が貰える。金額は魔物の強さ次第だけど、今日の買い物で使ったお金が全然痛手にならない程度には太っ腹だ。マモ様は『命を賭けるにしては随分とケチ臭い報酬だ』とボヤいていたけど。



 そんな話はともかく、一先(ひとま)ずはまともな服を手に入れる事が出来た。

 風兎が迷った末に全部買おうとしたり、月島さんが従業員割引があると言って自分のお店に連れて行こうとした時はヒヤッとしたな。結局月島さんが着ているような服も幾つか買ってしまった。⋯⋯20%オフが魅力的だったんだよ。後悔は少ししかしていない。


 けど(ようや)く変身前の俺でも人目を(はばか)らずに外に出られるようになった。これはもう胸を張って女子高生と言えるのではなかろうか。



「あー、楽しかった!」



 今日一日の疲れを一切感じさせない満面の笑みである。おかしいな、俺は勇者なのに妹の方が断然元気だ。手にはちゃっかり自分の分の服が数着入った紙袋を持っている。⋯⋯まあ俺が買った物だけど。



「これ、マジで良かったの〜?」



 月島さんの指は自身の頭、厳密には前髪に付けられたヘアピンを指している。



「もちろん。お礼ですから」



 風兎に服を買ってあげたのと同様に、月島さんにもウサギ型の小さなヘアピンをプレゼントした。

 物凄く精神的に疲弊した一日ではあったものの、実際二人に助けられた事には違いない。

 俺の感情は一旦置いておいて、お礼はきちんとしないといけないからな。



「プレゼントとかめっちゃ久々〜」


「ずっと眺めてたもんね!」



 結構な間悩んでいたっぽいので、折角ならと俺が買おうと提言した。最初は遠慮していたけれど、最終的には承諾してくれた。金額的にはそこまでの物では無いけれど、こういうのは気持ちが大切だと思う。



「え、そんな見てた?恥ずかし〜」


「すっごく似合ってるよ!」


「ありがとふぅちゃん。しぃちゃんも、ありがとね」



 照れたようにはにかむ月島さんの姿は、夕暮れ時という事も相まって、なんと言うかとてもエモかった。




ここまで読んで頂いてありがとうございます。

もし宜しければ、ブックマークや下の☆から評価をして下さると作者が喜び手持ちと交代した時にHPが1/3回復します。

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