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怪盗勇者アルセーヌ  作者: 十河 水屑
Chapter1, 悪魔の契約
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Ep1-0 プロローグ

初投稿になります。生暖かい目で見守ってやって下さい。




 ──────空には紅い月が輝き、照らされる街並みもそれに伴い不気味に彩られている。


 昼と言うには暗く、夜と言うには明る過ぎるが、『狭間の世界』においてはいつも通りの光景である。



 そんな世界の一角。本来ならば人々の声が聞こえてくる(はず)のその場所からは、異形の雄叫びが轟いていた。




「「「Wowoooooonッッ!!」」」



 大柄な成人男性程の肉体に、醜悪な狼の頭。世間では人狼(ワーウルフ)と呼ばれるこの魔物が、無人となった商店街のあちらこちらに群れを成していた。



「人狼か。雑魚だが数が多い」


「⋯⋯う、これは流石に気持ち悪いな」



 対峙するのは一匹の黒い狐と一人の少女。少女の方は身体の(ほとん)どを黒いマントで隠し、顔も上半分が白いマスクで覆われている。

 小さなシルクハットを頭に乗せたその姿は、まるで物語に登場する怪盗の装束だった。



「どうだ、いけるか?」


「当然っ!」



 狐が尋ね、少女が応える。勢い良く走り出した彼女は、そのまま一番近くに居た人狼へと急接近する。



「Gaッ!?」


「まず一匹!」



 少女が人狼の頭を掴むと、まるでそれは最初から繋がっていなかったかのようにあっさりと身体から離れる。

 人狼の毛深く強靭な肉体のみが残され、それも程なくして地面に倒れ伏した。



「⋯⋯獣臭っ!」



 そう言って少女は狼の頭を放り捨てると、続けて二匹、三匹と首を()いで行く。


 人狼も黙ってはおらず、大きな鉤爪を振り(かざ)して反撃をするが、当たらない。ヒラリヒラリとマントを(ひるがえ)し、まるで舞うように攻撃を避けている。



「念のため魔力は節約しないとな」



 彼女がそう呟く頃には、既に集団の一つが壊滅していた。





「「「「Garurururuッ⋯⋯!!」」」」


「おっと、新手か」



 前後左右から20匹程の人狼に包囲される。商店街に散らばっていた複数の集団が纏まっているのか、その数は先程の倍以上だ。



「「「Gauッッ!!」」」



 ジリジリと包囲を狭めていた人狼の群れだったが、叫びと共に周囲の人狼が一斉に飛び掛かる。

 既に逃げ場は無く、そのまま数の暴力によって八つ裂きにされてしまった。



 ⋯⋯かと思われたが、何故か少女の姿はそこには無い。



「Gaッ!?」


「Guッ!?」


「Guaッ!?」



 突然、群れの至る所で呻き声が上がり出した。


 ──────不審に思った一匹の人狼が隣を見ると、そこにあったのは首の無い(・・・・)同胞の死体。



「Gya──────」



 そしてその憐れな一匹も、すぐに仲間の後を追う事になった。





× × ×





「⋯⋯これで全部か──────おっと!?」



 群れの最後の一匹を倒し終えたと思われた所に、背後からの一撃。

 音も無い完全な不意打ちだった、⋯⋯筈なのだが、気付けば少女は消え、気付けばまた出現していた。


 ──────最後の人狼の首を片手に。




「最後まで油断するな、馬鹿者」


「⋯⋯喰らわなかったからセーフって事で」


「その慢心が、いつか命取りになるのだ」


「はいはい、分かってますよ⋯⋯」



 いつの間にか現れていた狐が苦言を呈し、少女はうんざりとした表情で頷いた。

 彼女たちにとっては、この一幕は至極ありふれた物なのだろう。少し前まで命の遣り取りをしていたとは思えない程に自然な足取りのまま、彼女らはその場を去っていった。



 ──────後に遺ったのは、まるで死神の鎌が通り過ぎたかの如く、綺麗に首から上のみを刈り取られた商店街に散らばる大量の死体だけだった。




ここまで読んで頂いてありがとうございます。

もし宜しければ、ブックマークや下の☆から評価をして下さると作者が喜び咽び泣きます。

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