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第2話 モブな私の兄はのモブの顔をしていない

「エリ―・アルベルト……やっぱり、聞いたことのない名前よね」


 このゲームの攻略対象であるロドル王国の第二皇子、レイラ―・フェルメンに助けられた私は、気が動転しているという設定で学園の人に部屋まで送ってもらって、今はエリ―・アルベルトという少女の部屋に来ていた。


 どうやら、学園の人の話を聞く限り、エリ―・アルベルトという名前の少女が今の私らしい。


 学園の一人部屋の寮の部屋を散策しながら、私はエリ―という女の子がどんな女の子なのかを推測することにしていた。


 なんか部屋にある服とかアクセサリーを見た感じ、高そうなものがちょこちょこ見つかったし、ただの平民の出ではないみたいだ。


 貴族は貴族なんだろうけど、どのくらいの位の貴族の家庭の娘なのか分からない。


 私は散策に飽きて鏡の前で自分の容姿をじっと見つめていた。


「……モブって言うにしては、可愛過ぎない?」


 鏡の中にいる自分の姿を見つめながら、そんなナルシスト発言を平然としてしまうくらい、エリ―の顔立ちは整っていた。


 キューティクルのある茶色の髪に、ぱっちりとした目元。顔だって小さいし、ゲームのヒロインだと言われれば、そんな気がしないでもない。


 そう言えば、ゲーム世界のモブって結構可愛い子多いんだよね。それこそ、ヒロイン属性がないだけで、ヒロインに劣らない可愛さを持った女の子も結構いる。


 おそらく、エリ―はそんなモブの中の一人なのだろう。


「そんなヒロインが、早くも学園から撤退することになるとは……」


 そう、本来モブである私が襲われて殺されるはずだったイベントは、ヒロインが重傷を負って一時的に学園を離れるというイベントに変わったのだった。


 モブなら殺されるイベントも、ヒロインになるとそれが重傷で済むらしい。なんとまぁ、主人公補正の羨ましいことでしょう。


「それはそれとして、学園生活の序盤のイベントどうするんだろ」


 確か、入学式を終えて数日後には攻略対象との初イベントが起こるはずだ。その場に、ヒロインがいないということは、そのイベントも先延ばし?


 いや、さすがにそんなふうに延ばしてしまっては、後々矛盾が生じてしまうと思う。


 でも、ヒロインがいないんじゃどうしようもないし、それも仕方がないのか。


 別に、誰かがヒロインの代わりをできるわけでもないし。


 そんななんでもないようなことを考えていると、不意に部屋の扉をノックされた。


「エリ―。俺だ、ルークだ」


 扉越しに声をかけられて、私は思わず体をびくっと跳ねさせて驚いてしまった。


 ……え、うそ、誰?


「少し様子を見に来たんだけど、開けてもらってもいいかな?」


 居留守を使おうと思った時にはすでに遅く、驚きのあまり物音を立ててしまったせいで、私がこの部屋にいるのはバレてしまったみたいだ。


 私が知らないエリ―の知り合いに会うのは危険だけど、このまま無視を決め込むのもマズいよね。


 私は覚悟を決めてゆっくりと扉の前まで行くと、申し訳なさそうなくらいに扉を開けて外にいる人物をちらりと目で確認した。


 そこにいたのは、さらさらの黒髪に黒曜石のような瞳を持つ美少年だった。


 少し物憂げな姿が妙に色っぽくて、上から見つめてくるその視線を前に、私は胸の奥の方をきゅうっとさせられた。


「エリ―、大丈夫か?」


 攻略対象よりも攻略対象みたいな甘いマスクが私を見つめながら、小さく首を傾げている。


 思わず黙ってしまった私はじっと見つめてくる視線を前に、あわあわとしてしまっていた。それでも、なにかしら言葉を返さなくてはと思って、頭をぐるぐるとさせた私は苦し紛れにそっと口を開いた。


「……えっと、どちら様ですか? な、なーんて言ってみたり?」


 関係性が分からない以上、初めにその関係性を明確にしておく必要があるだろう。そう思った私はそんな言葉を口にしてみることにした。


 さて、一体どんな反応をするだろうか。


 そんなことを考えてルークの方をちらりと確認してみると、ルークは少しだけ驚いたような顔をした後、申し訳なさそうに微かに眉をハの字にさせた。


「どちら様か。妹にそんな対応をされると、少し傷つく、かな」


「妹? ……え?」


 ルークの言葉の意味が一瞬分からず数秒固まった後、私は心の中で強く叫んでいた。


 いや、モブの兄にしてはかっこよすぎるでしょ!!


 魔物に襲われた私の様子を心配して見に来るぐらいだから、それだけ親密な間柄だということは察することができたけど、さすがに兄だとは思わないって!


 髪の色も瞳の色も違うし、モブの兄にしては顔が良すぎるし!


 マズいな、さすがに妹に存在を忘れられるくらい嫌われているって思われたかもしれない。


 なんとか巻き返すためにも、少し明るく振舞わないと。


「じょ、冗談だよ~、えっと、お兄ちゃん!」


「お兄ちゃん?」


「いや、兄さん? 兄者? にー? ルーク君、とか?」


「……」


 やばい、エリ―がこの人のことをなんて呼んでたのか全く分からない。


 なんとか探ろうとして見たけど、探ろうとすればするほど、目の前の事態を受け入れられないみたいな顔をしているんだけど。


 これ以上粘ってみても、多分ぼろを出し続ける気しかしない。


 そう思った私は、半ば諦めるように視線を逸らして誤魔化すようにしながら口を開いた。


「し、心境の変化がありまして、なんて呼べばいいでしょうか?」


 いや、もう絶対に普通じゃないのバレたな、これ。


 そんなふうに諦めながらちらりとルークの方に視線を向けると、ルークは少し間を置いた後、小さく悲しそうな笑みを浮かべた。


「……そっか。それじゃあ、お兄様と呼んでもらおうかな」


「え、あ、わかりました」


 なんでだろう? 絶対に誤魔化すことができるはずがないと思ったのに、上手いこと誤魔化せてる?


 そんなことを考えながら、私は魔物に襲われたこと、私は怪我をしていないことをルークに説明したのだった。


 ヒロインの代わりに王子様に危険な魔物から守ってもらって、私を心配してくれるイケメンな兄がいる。


 なんかゲームの中のヒロインみたいだなぁとか思いながら、私の脳裏にはありえない一つの考えが浮かんでいた。


 ヒロインの代わりに助けられた私が、このゲームのヒロインとして学園生活を送ることになるのではないかという可能性。


 いや、さすがにそれは考え過ぎだ。


 別に、悲鳴を二回聞いた後に助けに来たレイラ―に助けられることが、ヒロインになる条件って訳でもないだろうし。


 それに、そんなことにでもなったらモブの私はあっさりと命を落とすことになるだろう。


 私には特筆するような能力も、特技もないのだから。


 だから、私はそんなありましない妄想を頭から消した。そして、ルークとの会話の中でエリ―がどんな女の子だったのかを探ることに専念したのだった。



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