炎
子供時代によくみた夢
いつも始まりは同じ場所
風が気持ちいい草原にわたしは、寝転がっている
その隣には友達だったり、知らない同い年くらいの子
寝ている場所は丘になっていて、とっても見通しがよくて
草原にある唯一の建物、真っ白のお城が
よくよく見える
この場所は、とある場所にある隠し扉を見つけ、
開くことができた子供たちしか入れない不思議な世界
そこにあるお城は、この世界の要ともいえる存在
だからいつも夢の中のわたしは、
お城がよく見える
この丘で昼寝をしているのかもしれない
「そろそろ自分たちの世界に戻ろうか」
なんて隣の子と話していると
お城の方角から、地響きが起こるほどの大きな爆発音
反射的に目をやれば、真っ赤な炎に包まれるお城
そこから勢いよくこちらに迫ってくる炎の塊
要であるお城が燃えていることにより、
すぐにでもこの世界は消滅してしまうこと、
このままでは自分たちも炎に包まれて
死んでしまうことを一瞬で悟る
慌てて立ち上がり、扉のある場所まで走る
急いでその場所に来ていた子供たち数人が外にでて扉を閉めるも、
異空間を挟んでいるはずの扉が、炎によって燃えていく
このままではこちらに侵食してきてしまう
でも炎をどうにかする力は自分たちにはない
もうここから逃げることしかできない
今回こちらの世界へつながった場所は、
ショッピングモール2階 お店とお店の間の影の場所
そこから飛び出した私たちは1つしかない出口に向けて走り始める
必死に走る中もゲームセンターやお店で買い物を続ける人々に、
早く逃げないと死んでしまうことを大声で伝えようとするも
隣を走り続ける一人が
『逃げろと言われても信じない!仮にみんなが動いたら大混乱で
誰一人逃げきれず助からないことになるから、何も言わずただ走れ!』
と言われる
この場所で楽し気に買い物している人たちを
見捨てていくことに、
罪悪感が募るがそれを振り切って出口に向かって走る
そんな私たちを追うように
大きな炎の塊がものすごいスピードで追いかけてくる
少し離れた後方から、短い悲鳴が聞こえたと思えば、
すぐに消えていく声たち
もはや怖くて後ろなど振り向けない
躓きそうになりながらも階段を駆け下り、
すぐ近くにあるガラス扉から屋外にでる。
ついさっきまで逃げ回っていた建物を見上げれば、
ガラス張りになっている2階に、
へばりついて逃げ道を失った人たちが見える
その人たちを一瞬で一人残らず炎が飲み込む
飲み込み切ったすぐ後に音もなく炎が消える
その様子を唖然と見上げていると
どこからか歩いてくる真っ黒いスーツの男が、
先ほどでてきた建物のガラス扉を開き
もくもくとした煙を出しながらこちらへ振り向く
その口元には緩く弧が描かれており、
とてつもなくきれいな動作でお辞儀をし、
『ありがとうございました』と一言。