第二話
一人称、心の声は俺ですが、公的な場では私と言います。
「ごほん!失礼しました…何はともあれ、まずは会社の説明をしないと、ですね。」
どうやら、このブレイブカンパニーは、勇者を派遣して報酬を得る会社だそうだ。何を言っているか分かるか?俺は分からん。とりあえず一連の整理しよう。
色々な世界で勇者召喚の儀式が行われる→弊社の専属勇者が召喚に応じて派遣される→現地の派遣元と依頼内容と報酬の交渉を行う→契約後依頼を遂行、報酬を受け帰ってくる。
これはアニメや漫画で見たことのある勇者召喚がビジネスになった。と捉えたら多少分かりやすくなるな。
「…と作業内容の大まかな流れは以上になりますが、ご理解いただけましたか?」
「あ、はい。何となくは…私たちの世界では物語として描かれる内容だけに、現実感があまり湧きませんが…」
「あー…タクさんは地球の方ですものね。あそこは魔力がない世界ですから。でも魔力の無い世界って、全体から考えたらものすごく珍しいんですよ?」
「そうなんですか?」
「神様が作った世界なんですから、魔力がある方が普通です。魔力の無い世界が生まれる確率は…ええと、ありました。0.0000001%以下ですね。」
ひっく!だったら魔法のある世界に生まれて、かっこよくモンスターと戦ってみたかったなとか思ってしまう。平和な世界に暮らしているからこそできる発想なんだろうけど。
「では次に弊社の組織についてご説明させていただきますね。」
社長…神様
役員…下級神
戦闘課…勇者として異世界に派遣される実働部隊。総勢は万を超える。人の入れ替わりが激しいため
正確な人数は把握できていない。
サポート課…勇者の活動をサポートする課。非戦闘員は大体ここに配備される。火属性のモンスターが相手
なら氷属性付与の武器を作成したり、依頼に合わせて様々な武器や道具を作成する。
地球から来た人が数人いるらしい。
総務課…社員のシフト、給料、出張計画等を受け持つ課。採用活動も総務課が担当している。人数は1000人
を超えない程度で、人が多い割には忙しいそうだ。
医療課…戦闘で傷ついた勇者を治療する課。この課は医療棟が別の場所にあり、そこに常駐している。
医療課は最も忙しい課で、勇者よりも医療課職員を治療しろと言われる程らしい。
各課は、さらに様々な部に細分化され業務を分担している。総務課であれば、広報部門、人事部門、財務部門…戦闘課であれば、近接戦闘部門、攻撃魔法部門…等々だ。
「…ふむふむ。この社長の神…様と、役員の下級神様は何が違うんですか?」
「社長は最高神様でして、数多の世界を作り出した張本人なんです。すごい方なんですよ?」
世界を作ったって、創造神とかそういうやつか?大抵のラノベだと、すげー神様って位置づけだが、ここでもやっぱそうなのか。
「社長であるペテロネウス様が数多の世界をお創りになった最高神であるという事が、次の会社設立の理由につながるのですが…」
最高神ペテロネウスは様々な世界を作り、その生命活動を愛でて過ごしていたようだが、ある時一つの世界が滅びてしまった。そこでは予期せぬエラーによりモンスターが現れたのだ。プロFグラムでいうバグに近い存在らしい。
そこで神様は自分より位の低い下級神に世界の管理をお願いした。が、ペテロネウスは世界を作りすぎたため、下級神では手が足りなくなった。まじで世界づくり辞めろよって言いたい。
次に考えたことが、最初からモンスターを配置し、世界の人々を強くして自己解決してもらう方法だ。しかし、それでも滅びる世界が出てきてしまった。
最後に、だったらこちらで戦力を保有してバグを取り除こう。でも自分でやるのは大変だから、色々な世界から優秀な奴を引っ張ってきて、後は勝手にやってもらおうと。
結果、誕生したのがこのブレイブカンパニーだ。
「要するに、世界の管理をする会社って事ですか?」
「ざっくり言うとそういう事ですね。ただ私たちは基本的に戦闘がメインになります。流石に勇者と言えど、天変地異等は対処できませんので。」
うーむ…異世界に召喚された勇者が魔王を倒してかっこよく去るイメージをしていたが、現実は神様の面倒ごとを押し付けられて泣く泣く仕事している哀れなサラリーマンみたいだ。いや、仕事なんて現実はそんなものだけどな。仕事したことないけど。
「ってあれ?報酬って現地でもらうんですよね?私の世界は日本円を通過にしてるんですけど、支払いってどうなるんですか?」
「そちらでしたら、総務の方で受け取った報酬を全て預かり、一度こちらの天界の通貨に両替して天界の銀行口座に振り込ませていただきます。地球に戻られる際は、さらに日本円に両替してお持ち帰りになられれば大丈夫です。」
「何万人もの報酬を計算して両替って…忙しそうですね。」
「こちらの業務はそこまで大変じゃないんですよ。マジックコンピュータが最近発明されてから、自動で計算してくれるようになりましたから。」
「そうなんですね。ちなみに発明されたのって地球の方ですか?」
「はい。えーと、名前は確か…スティーブ・なんとかさんだったかしら。地球の英雄として、死後英霊となりさまよっていたところを弊社にスカウトされたみたいですね。久々の地球人ということで、話題になってました。」
あのリンゴのマークの人もここで働いていたなんて!死んだ人も入れる事実と、そこまでの天才が働いている職場に、俺みたいな無い内定のダメ大学生が入って一緒に働けるとはとうてい思えない…自信がなくなってきた……
「パソコンの使い方とか、その人に聞けばいいんじゃないですか…?私なんていらないんじゃ……」
「あの人、そういうアフターサポートをあまりしない人なんですよねー…何度か問い合わせても、サポートセンターはこっちじゃないとか、それは初期不良ではないから補償の対象外だ、とか言って答えてくれないんです…」
「大まかな説明は以上になりますが、そのほか疑問点等はございますか?」
「最後に、先ほど話に出てきた英霊というのは…死んだ人もこちらで働いているんですか?」
「世界で功績を残した人物を英霊として、下級神様が自分の手元に置いたりする制度ですね。弊社でも英霊だったところを採用された方は多いですよ。ただ、下級神様からは、優秀な人材の引き抜きはやめてほしいと、思っている様です。社長がペテロネウス様なので、文句は言えませんけどね。」
下級神は子会社か。本社の威光には逆らえない苦労と言うものがにじみ出ている…
だが、ファンタジーな世界なのにちょこちょこ除く現実的な部分が、俺にこの世界を受け入れさせてくれる。そう思うとありがたい。
「さて、ここからが本題になりますが…お給料の話をしましょう。」
きた!正直常識がかけ離れているため、もしかしたら月10円です。とか言われないか心配していたんだ。総務課なら命の危険はないとして…月18万は欲しい。税金や保険がない世界になるから、きちんと貯蓄をしないと、老後年金なしで暮らしていけなくなってしまう。
「まず戦闘課からですが、こちらは固定給に出来高が上乗せされる形になります。固定給が月…すいませんね、今地球の貨幣価値に換算してますので。」
うう…緊張する…この値段でおおよその検討が付くからな。でかい数字こい!
「でました!戦闘課は固定給が月20万円、出来高は過去最高が約200億円ですね。」
???固定給は命の危険があるにしては低すぎるし、出来高の額が訳の分からないことになっている。
「計算間違いじゃないですか?200億円って…」
「いえ、合ってますよ。その時は、1か月で魔王を3体倒し、それぞれの世界で報酬として国庫の金銀財宝を根こそぎもらいました。まぁ流石にここまでハイペースで魔王を倒して、さらに交渉で最大限の報酬を引き出すのは至難の技ですが。でも、ここまで出来なくても魔王討伐ができれば1000万円は固いですね。」
す、すげぇ…確かに金銀財宝が大量に手に入れば、億単位の金が動いても不思議ではない…
だが駄目だ!俺は何のとりえもない一般人。魔王なんかに挑んだら即死亡だ!確かに夢はあるが…命には代えられない。逆に考えれば、固定給が20万あるんだ。別の課も同じくらいと考えれば、普通に生活できそうだ。
「次に総務課ですが…こちらは月25万円ですね。ただ月の報酬額によっては特別ボーナスが入るときもあります。勇者サポートのモチベーションですね。」
月25万か…平均よりは少し多いぐらい、だがここは異世界。所得税や住民税等の控除が一切ない。つまり25万全てが俺の懐に入ることになる。年収300万+ボーナス…26歳大学生という条件を考えたら破格なのではないだろうか。
「最後にサポート課ですが、こちらは固定給50万です。技術職なのでその分上乗せがあります。ただ、お金のない人が多いことで有名ですが。」
「それはなぜ?」
「開発のための材料費などは申請を出せば経費で購入できるのですが、届くまでに時間がかかるとかいって、自腹で買う人が多いからです。皆さん研究しか見えてないんですね。」
発明家等は変人が多いっていうし、金や自分よりも発明開発が大事なんだろうなぁ…
「ってあれ?医療課は?」
「医療課は治癒魔法が必須スキルになりますので…魔法を使えないタクさんは自動的に配属されません。」
今どきの医療は魔法を使用するらしい。聞いたところ、高位の治癒魔法使いは部位欠損も治療できるようで、確かに現代の医療技術を取り入れるよりもよっぽど進んでいる。
「さて、説明はこれで全てになります。タクさんは入りたい課はありましたか?」
「そうですね…その中では総務課でしょうか。戦闘はできませんし、サポート課はとんでもない天才が多そうなので…」
「そうですねそうですね。是非総務課にきて一緒に働きましょう!」
美人に一緒に働きましょうって言われたらみんなどう思う?答えは一つ、働こうって思う!!!うひひひひ…も、妄想が…止まらん!
「とりあえず、面接希望という事でよろしいですね?準備がよろしければすぐに面接に移りたいと思います。」
「よろしくお願いいたします!」
「ではただいま準備をしてまいりますので、少々お待ちください。それと、これはアドバイスなのですが…面接中はそのように気持ち悪い顔をするのは控えた方がよろしいかと。」
そういうとフィルさんはエレベーターに乗って行ってしまった。即日面接ができるって暇なのかな?とか気持ち悪い顔って生まれつきです!とか考えながら待っていると10分程してフィルさんが戻ってきた。
「ではこれから面接会場まで案内するので、ついてきてください。」
目指すのは面接会場。エレベーターは6の数字を指し示す。悪魔の数字は俺に微笑んでくれるのだろうか…
これから面接というモンスターとの戦いが始まる!!!
コロナの影響もあって休日は家にいるんですが、暇ですね!小説書けよって話なんですが、ぶっちゃけ趣味なんで気分が乗らないときに無理やり書きたくないっていうね。
暇つぶしの方法を考えてみましょう。
その1 ティッシュめくり!ティッシュをめくって元に戻す遊び。
その2 スマホスワイプ合戦!右手と左手でスワイプしまくって、右に移動したら右手の勝ち。
その3 爪切りで爪以外切る遊び!切った後歯型みたい!
以上!みんなもやってみてね!