表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
雨の日に笑うの、透明人間。  作者: 踏切交差点
大学2年
42/51

遠くへ




桜と初めて会った日のこと。

二人で人助けに歩いた日々が楽しかったこと。

名前を呼ばれる度に嬉しかったこと。

自分も思い出し笑いをすることが増えたこと。

誰かが不幸になりそうな物語に手を出さなくなったこと。

一人の女の子に認められたおかげか、不思議とお母さんにやさしく接してあげられるようになったこと。

遠ざかりが起きても、僕は絶対に桜のことがまた好きになるということ。

引かれるかもしれないと思って言わなかったけど、顔も凄くタイプだった。

雨に濡れた桜はとても魅力的だった。

君と出会えたから、中学時代に好きだった女の子と結ばれなくてよかったと思えた。

後悔にまみれた過去に絶望していたけれど。

絶望した過去が、君との仲人だった。

この人生でよかった。

桜と出会って、僕は救われた。




ひらがなが多く混じり、ミミズののたくったような字で書いた文章だ。

思いは込めたけど、直接伝えることはできなかった。


愚かだった。

冷静さを欠いた発言をして、桜を追い詰めなかったら、二人でもっと別の選択肢を探れたかもしれないのに。

幼馴染との関係まで全て崩壊させることを決断したとしても、せめて最後に語り合う時間を取れたのかもしれないのに。

君に幸せになってほしいと、心から伝えることができたのに。


僕の未来が、どうなろうと構わない。


どうか、見返りを求めず、人に手を差し伸べてきた彼女の人生が。

どうか、人との距離に戸惑いながらも、目の前の一人を助けようとし続けた彼女のこれからの未来が。

どうか、間に合いますようにと願いながら、トイレに駆け込んだ。


危ない、漏れるところだった。


ひどい女子大生だ。

飲み会で倒れた僕を介抱した見返りとして、僕に床掃除をやらせるなんて。

近くにあったマジックペンを手に取り、落書きされていた床をきれいに塗りつぶした。凄い注文をするよな彼女も。


そういえば、大学のレポート提出も手伝わされたんじゃなかったっけ。

ええと、これだ。凄い文量を書かされたな。削除っと。酔いながら、こんなの書けたんだっけ?


そもそも、俺今日飲み会なんてあったっけ。どうやってここまで来たんだっけ。

というかあの子って誰だ?

まだ酔ってるのかも。少なくとももう何か頼まれるのはごめんだ。早く家に帰ろう。



孤独に家と学校を往復するだけの、糞みたいな学生生活だ。

中学時代を思い出しては、あの時ああしていればと後悔に襲われてばかり。

花火の日の約束をまだあの子も覚えているだろうか。

今度会いに行って、確かめてみようか。例えば、雨の降る日に彼女の前に姿を現すのなんて、エモい感じがしないか?

彼女の日記を見て僕との想い出でも書かれていたら、迷わず告白しに行くんだけどな。


まあいいや。帰るか。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ