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雨の日に笑うの、透明人間。  作者: 踏切交差点
大学2年
39/51

崩壊の時

優は混乱した。


手探りで宙を探るも、何者にも触れなかった。

耳を澄ますが、強まった雨脚が桜の足音をかき消した。


冷静さを失った優は、正しい判断ができなかった。


最初、桜は公園に戻って、幼馴染を追跡か、復讐でもするのかと思った。

そんな危険を犯さなくとも、一旦僕をふりきって、交番にでもかけつけて対処をしようとしているのだと。

この二択しか選択肢がないと思っていた。


まず、公園へ向かった。

桜がいつも使っている透明傘と、靴が転がっていた。

辺りには誰もいなかった。


桜はどこにいるのだろう。やはり警察か?


捕らえたところで、数年後にはきっと、またあいつが現れるのに。


自分で殺しに行ったのだろうか。

僕が提案したことを、自分で実行するのだろうか。


いや、あの子が人殺しをするというのは想像できない。


透明人間という人類史上最悪の兵器になりうる力を、あんな些細な人助けに使っていた女の子だ。


だとしたら。




副作用。




最悪のアイデアが浮かんだ。


「う、嘘だろ、桜……」


心臓の鼓動が早まる。

全身からドクドクと嫌な汗が流れ出す。

彼女は今夜、どこかに向かったのではない。


ただ透明になったまま、雨に打たれ続けるつもりだ。


透明人間の力を使い続け、幼馴染に至るまでの全ての人間関係を崩壊させるつもりなのだ。



直近の人間から崩壊するとしたら、彼女の高校時代の友達の関係が崩壊したあと、中3の冬に出会った僕との関係が崩壊するはずだ。


僕と桜の関係は深い。

僕は桜との思い出を全て失ってしまうだろう。

遠ざかり現象が強く生じ、彼女が今後僕に話しかけても、僕は人一倍彼女の存在に関心を払わなくなる。


桜は僕と、別れるつもりなのだ。


幼馴染の呪縛から逃れるために。


僕をもう巻き込まないようにするために。

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