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ひとりぼっちでごはん
「痛くないよ!痛くないってば!」
バッ、と顔をあげる。
大教室で、大勢の生徒が私を見ている。
講師が咳払いしたあと、クスクス笑いが聞こえた。
授業中に居眠りしてしまったようだ。
口元についた唾液を拭き、乱れた髪を整え、私はじっと羞恥に耐えた。
逃避の気持ちでスマホを取り出して、誰かにメッセージの一つでも送ろうとした。
しかし、もうそんな相手もいないことを思い出して、ポケットに戻す。
しばらくして、ティーチングアシスタントが出席カードを回収しに来た。
カードを渡して、数分待ってから、私は教室を出た。
「いただきます」
誰になんと言われても、一人でご飯を食べるのは、寂しい。
誰に何も言われないのが、寂しいということなのだろうけど。
どんな本を読んだところで、映画を見たところで、音楽を聴いたところで。
ひとりぼっちで、ご飯を食べるのは寂しい。
けれど、それ以上に。
自分を求めてくれない人や、自分を求めてほしくない人と、一緒にご飯を食べる苦痛の方が耐え難い。
傷つくのは嫌だ。傷つけるのも嫌だ。だって、人を傷つけた事実に、自分が傷つくのだから。
一人でいるに限る?
いや、一人でいることに、限らされている。
世界から。




