賤ヶ岳の戦い5
吉継「『迷惑を掛けるからその対価を……。』この感覚は俺には無いな……。」
当時のいくさは現地調達=略奪が基本
三成「その場限りでは無いからな……。殿に仕える前のここ(江北地域)は浅井と織田の係争地で結構大変なことになったからな……。」
吉継「お前の故郷でもあるからな。」
三成「たまたま殿との縁が出来たから良かったものの。」
吉継「……だな。ところでさ。どうでも良いことなんだけれど。少し気になっていることがあるのだが。」
三成「どうしたのだ。」
吉継「お前さ……。お前の給料の全てを渡辺勘兵衛殿に注ぎ込んでいるよな。」
三成「うむ。」
吉継「その勘兵衛殿の家に居候しているんだよな。」
三成「確かに。」
吉継「って言うことはつまり……殿からは何も貰っていないのと同じだよな。」
三成「そうであるが、それが何か?」
吉継「お前がいくさで連れて来る軍役に違和感を覚えるのであるが。」
三成「変か?」
吉継「お前の給料500石だよな。」
三成「そうだよ。」
吉継「その全てを勘兵衛殿に入れあげているんだよな。」
三成「うん。」
吉継「で。仮にその500石の全てを勘兵衛殿が自分のために使わなかったとしたとしても……。」
三成「なんだ?」
吉継「とてもでは無いが500石で賄うことの出来る人数では無い。どう見ても大名(1万石)クラス……。しかも500石は現物支給であるから領民が居るわけでも無いし……。」
三成「勿論全員と雇用関係を結んでおる。」
吉継「その原資は何処から出ているのだ?実家があるとは言え、そこまでは出せないだろうに。」
三成「まぁ……まぁそうだな。俺次男だし。寺に出されたし。」
吉継「お前……。大丈夫だよな?」
三成「何がだよ。」
吉継「借金に首が回らなくなって急に……。とか悪いことに手を染めて……。とか無いよな。」
三成「家計は健全そのものであるし、殿以外で何か副業をしているわけでも無い。」
吉継「で。なんでその軍役を準備することが出来るのだ?」
三成「……お前に教えてもな……。」
吉継「そんな言い方はないだろうに。」
三成「……いやいや琵琶湖に葦が生えているだろ。」
吉継「生えているな。」
三成「あれ。すだれとか屋根とかいろんなことに使えるだろ。」
吉継「便利だよな。」
三成「みんな好き勝手に刈り取っているだろ。」
吉継「入り会いではあるがな。」
三成「……あれに税金を掛けることにしたんだ。」
吉継「ん!?」
三成「無論、殿の了承は得ているし、そこでの収入が私に入ることも許可されておる。」
吉継「それで蓄財……。」
三成「いやいやその収入を使って、いくさなど羽柴家のために使うことになるのであるから、殿からすればそこで回収することが出来るわけである。」
吉継「でも元々ただで手に入れることの出来る葦にお金を払うのに抵抗を覚えるものは居なかったのか?」
三成「その辺りは『福祉のためだけに使います。』とか言い様があるでしょうし、別に嫌なら刈り取らなければいいだけの話。」
吉継「……絶対に必要なモノに対し……。……悪い奴だな……。」
三成「何か言ったか?」
吉継「いやそなたの商品開発力に感服しているのである。」
三成「勿論、ヨソで購入されては困る故。ここで税を払ったほうが得となるギリギリの価格を設定しなければならないのではあるがな。」
吉継(……得では無くて『マシ』だよな……。)
三成「ん!!どうした!?」
吉継「いや。何でもない。さぁいくさの準備に取り掛かるとするか。」