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九龍組  作者: 大蔵 富造
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第二・五話

 翌日。快晴の朝日が二日酔いの九龍達には眩しかった。だが安然(あんぜん)は酒に強く平気だった。九龍に別れを告げると国進党本部へと出勤した。

 九龍達は二日酔いの中、正弦の計画を実行しなければならない。政党になっても参加する組員を集める事である。王国国外に「支部一派(しぶいっぱ)」を持つ幹部は政党の話を伝えるため千鳥足で移動を始めた。

 支部一派とは、九龍幹部とその部下によって成り立つ九龍組支部であり、支社とも言える。唐嘉(とうか)程子(ていし)正弦(せいげん)は二、三人の部下しかいないため、前慶(ぜんけい)の本部に所属している。それ以外の幹部は支部一派を持っている。

 その仕事は賭博場や娯楽施設の管理や経営であり、賭博場は王国含めて五ヶ所ある。支部一派がない国でも九龍組の存在は影響している。


 支部に戻った幹部は九龍組解散と新政党・九龍九品党(きゅうひんとう)の発足を伝え、九龍九品党に残る者は壁国(へきこく)の『城』に集まるように伝えた。城と言っても庭付きの大きな御殿である。組を辞める者には程子が国進党から奪ってきた金から退職金が出る。

 さっそく王国から城に移動してきた本部の前慶達が一番最初に壁国の城に入る。続いて天嵬(てんかい)堂紅奉(どうこうほう)の壁国近くで活動する支部一派が集まった。


 城に住む壁国国主・野田が様子を見に来た。昼過ぎからぞろぞろと九龍組組員が集まり、庭にスーツ姿の男達が増えていき、すでに百人以上入る。それぞれがくつろいで庭に座っていた。そんな中、野田は庭の池を見つめている前慶に近づいていく。

「ずいぶんと部下が多いんですね」

 振り向いた前慶はシルクハットを取り、軽く会釈して被りなおす。前慶は野田より年上なので挨拶しなくても無礼ではない。だが前慶は帽子を取って挨拶する事がカッコイイと思っている。そのため帽子も形がはっきりしているシルクハットにこだわっている。

「驚いた? 暴力団じゃねぇから安心しろよぉ」

 暴力団とは組に属さず、賭博場で暴れる集団のことである。九龍組とよく衝突するが九龍組の引き抜き対象でもある。唐嘉と新豪(しんごう)は数年前に暴力団から引き抜かれ、現在に至る。

「これだけ人が集まれば、有権党も国新党に劣りませんね」

「俺らぁ有権党じゃねぇ、頭に置いといてくれよぉ」

「は、はい。それは十分承知しています」

「ちゃんと後ろ盾ぁするからよ、安心しろぉ」

「はい、ありがたいです。…あ、あの、あと何人ぐらい来るんでしょうか?」

「そうだな。明日くらいにぁシュウ(周泰征(しゅうたいせい))と徐江(じょこう)と新豪が来れば全員だぁ」

「三人だけ…じゃないですよね?」

「二百三十人かな。誰も辞めていなきゃなぁ」

「そんなに…泊まれる部屋があるかな」

「泊めてくれって~、まだ本部が決まってないんだから」

 前慶は茶目っ気を見せた。


 そこに正弦と堂紅奉が来た。正弦は組員表を前慶に差し出した。

「組員が多少減っています。どうやら、暴力団から引き抜いた者がほとんどです」

「辞めた奴らは元暴力団だ。もともと暴力団で働く奴らは自分の夢を追いかけてるんだ。だから、一発の稼ぎがでかい暴力団に入るわけだ」

「ふ~ん。やけに詳しいなぁ。堂紅奉、おめぇ元暴力団かぁ?」

「そうじゃ。知らんかった?」

 その場に居た者は全員うなずいた。

「先代に引き抜かれてなぁ。若い頃はわしも夢を追いかけていてた」

 遠い目で空を見る堂紅奉。

「そうかぁ、知らなかった。とにかく…う~ん、金出しすぎたかぁ」

「ねぇねぇ、退職金を出しすぎ~。もう少し国進トーから貰っちゃう?」

 程子がニコニコ笑いながら走ってきた。


 退職金のことでしばらく話をしていると唐嘉と天嵬も来た。

「おぅ、程子ぃ、また国進党に行くぞぉ」

 天嵬の発言に程子は頭をかしげた。

「天嵬、急に言ってもわからないだろ。程子、もう一度、国進党から金を取ってきてくれ。有権党本部がこの城ってわけにもいかないし、野田にも迷惑だ」

 唐嘉は相手が年下と分かれば、階級に関わらずタメ口である。年下と言えども野田はこの国で一番偉い国主であるが、唐嘉にとってはそれは関係ない。

「ここだって広いですから、どんどん使っちゃってください」

「ありがとう。だが、今から世話になると甘える。やはり我々は我々の本部を作る必要がある。前慶もそう考えている」

 前慶はうなずいている。

「わかった、トーカの言うとおりだね。国進トー行って来るよ!」

「じゃ、明日には帰ってくるからよぉ」

 程子がスキップしていく後姿は女の子に見える。

 

「あの~、さっき、もう一度って言ってましたよね? 国進党から金を取ったんですか?」

 野田には心当たりがなかった。唐嘉は団扇を仰いでいる。

「取ったぞ。金がなければ動く事もできないだろ?」

「いつの間に。ならば私も金の手伝いを…あぁでも今は必要ないでしょうね」

「なんでだぁ? 今ぁって?」

  前慶は不思議がってつい口に出した。

「明日からの担当は松山殿です。だからいくらでもくれると思いますよ」

 国進党本部に安然しかいないと言うことである。

「ほぉ、そりゃ運がいい。五年と言わず十年分ぐらいくれそうだな。離党前の前祝いか」

 堂紅奉は大笑いした。その場にいた一同も笑った。

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