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九龍組  作者: 大蔵 富造
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九龍組 ~町田屋編~

この話はあまり書きたくないものであったが、過去に作ったものなので投稿。

パラレルワールドと考えるか、これを正史と考えるかは読者に任せます。

 日も沈み始めた頃に前慶(ぜんけい)松国(しょうこく)の町田屋に着いた。馬を置いて店に入ると新豪(しんごう)の義父である店主がいた。

「おう、前慶じゃねぇか! 今日は宴会じゃなかったんか?」

「そうだったんだけどよぉ。ちょ~っと用事ができちまってなぁ。もう来てるかぁ?」

「誰も来てねぇよぉ。誰が組んだよ?」

「新龍の赤坂だぁ」

「ホントかい!? 仲悪いのにぃ? 喧嘩でもすんのか?」

「なぁなぁ、そんなに極龍と新龍ぁ評判悪ぃのか?」

「そりゃそうだ! お前達の若いのがずいぶんとグチグチ言ってるぞぉ」

「そいつらが来たら教えてくれぁ」

 前慶はとっちめてやるという動作をした。

「わかったよ。じゃ、俺はもう行くぜ」

「なんでだぁ?」

「今日は休みにしたんだ。これから松山のと宴会だからな」

「松山…? あぁ、安然殿か。すっかり忘れてたぁ」

「安然王だの国主だのって言っても、俺かりゃすりゃ松山だからな」

「きっと俺らが宴会やるっつったから寂しくなったんだなぁ。赤坂が来るけどぉ…休みじゃ悪ぃなぁ」

「構うことはねぇ、好きにやってくれ! おめぇだったら平気だ。天嵬には貸せねぇけどな」

 店主の冗談に前慶は笑った。

「悪ぃなぁ、今度みんなで来るからよ」

「おぅ待ってるぜぇ。じゃ俺はちょっくら行ってくるぜ」

 店主は店を出て行った。



 すっかり夜になると赤坂が一人で来た。

「よぉ、久しぶりだなぁ、いや~迷っちまって。用事ってなにさ?」

「久しいな、用事のことぁこっちが聞きてぇぜ」

「何を言ってるさ。そっちが呼んだんだろ?」

「いや、おめぇだろ?」

「ちょっと待て。この手紙を見るさ」

 前慶に手紙を渡した。

「用事があるから一人で町田屋まで来い、前慶。俺からの手紙だなぁ」

「ほらな、寝ぼけてんじゃないのか?」

「俺ぁ出してねぇ。これぁ、お前が出したんだろ?」

 赤坂に自分が受けとった手紙を渡した。

「本当だ…でもこれは俺の字じゃないさ。偽の手紙だ」

「これぁどういうことだ…策かぁ?」

「誰かに騙されてるってのか?」

「そうかもしれねぇな。まっ、一杯やるかぁ」

 前慶は酒の瓢箪を探すと赤坂に投げて渡した。

「おいおい、騙されてるかもしれないさ。逃げるぜ」

「もう極龍組も作ったし、もう俺ぁ必要ねぇ。それに…誰が騙したか気にならねぇか?」

 赤坂はしばらく考えたが瓢箪の栓を抜いた。

「それもそうだな」

 二人は瓢箪を掲げて乾杯した。



 極龍組と新龍組の話に花を咲かせて、しばらくすると深夜になっていた。前慶は肘を枕に横になって話しをしていた。

武古屋(たけこや)ぁ元気にしてるかぁ?」

「おぅ、毎日押し掛ける水乃(みずの)さんに慣れたし、九品有権党で副党首として頑張ってるぜ」

「ハッハッハッ! そうかぁ、よかった、よかった。あいつぁどうしてる?」

「あいつ? スティーブか? 徐江(じょこう)の下で頑張ってみたいだぞ。前慶会うって言ったら、今度遊びに来てくだサ~イだってよ」

 スティーブとはカイタタハイラで前慶に兜をプレゼントした眼帯の男である。外国には戻らずに九品有権党に所属している。

 その時、覆面をした二人が町田屋に入ってきた。

「あん? おい今日ぁ俺の貸しきりだぁ。店ぁ休みだ」

 そう言うが二人は前慶に近づいてきた。覆面をしているので誰かはわからない。

「お覚悟を…」

 太刀を抜くと一人が前慶に斬りかかった。前慶は寝っころがったまま、そばにあった太刀の鞘で刃を受け止めた。

「前慶!」

 赤坂がそう叫んだ瞬間、もう一人から蹴りを喰らい倒れた。

「赤坂ぁ!」

 起き上ろうとしたところを蹴った男が打刀で赤坂の腹を刺した。

「こ、これは西の刀…」

 腹から打刀を抜くと赤坂は崩れるようにして倒れた。前慶は太刀を無理やり押し返して立ち上がり、太刀を抜くと同時に背中を打刀で切られた。そして前からみぞおちを太刀で刺された。

 太刀が抜かれると前慶は座敷に倒れた。覆面の二人は店を散らかすと逃げた。空き巣の犯行に見せかけるためだ。

「おい、やられたか?」

 腹を押さえながら赤坂が聞いた。倒れたままの前慶。

「お、俺ぁもう駄目だぁ。おめぇぁ?」

「腹やられたさ…。もう酒は飲めねぇ」

「よ、余裕あるじゃねぇか」

 赤坂は腹を押さえているが血が止まらない。前慶はみぞおちに手を当てて真っ赤になった手を見る。

「久しぶりに、こんなに血ぃ見たぜぇ…壁越えて二龍出会うもここに散る…どうだ?」

 新龍組組長・赤坂、散る。

「下の句ぁ、思いつかねぇ…。上の句だけで、充分だぁ…」

 銀製の髑髏のネックレスを首元から引っ張り出すと、

「明日…会う約束だったんだけどなぁ…。しょうがねぇか…」

 極龍組組長・前慶死亡。



 翌朝、安然と飲み明かして王国から帰ってきた店主が二人の死体を発見した。店を飛び出し、ちょうど通りかかった警暴団団員三人を店に入れた。警暴団員の制服が決まっているため誰でも警暴団とわかる。

「は、早く犯人を捜してくれ!」

 団員三人は店内をうろつき証拠を捜す。

「物取りか。この死体は知り合いか?」

「おめぇらこの人が誰だか知ってんのか! 前慶だぞ、前慶!」

「極龍組のか?」

「そうだよ! 前慶がいなけりゃこの国は統一されなかったんだぞ!」

「統一したのは滝本天王様だ。前慶がやったなど聞いた事は無い」

「店主よ、こっちの死体は誰だ?」

「たぶん、新龍組の赤坂ってやつだ。前慶が会うって言ってたからな」

「なるほど…。極龍組と新龍組の組長同士がいざこざから店内で暴れて、相打ちってところだろう」

「おい! そんなわけないだろ! もっと調べろ!」

「相打ちが濃厚だ。また検証に来るからな、店はこのままにしておけよ」

 三人は店を出て行った。


 店主は眠るように死んでいる前慶に布団をかけた。

「前慶よぉ、お前はもっと名前を売ればよかったんだ。馬鹿だねぇ、お前も…」

 赤坂も目を閉じで寝ているようだった。そっと布団をかけた。その後、店主は王国まで前慶の馬で走った。

 安然の家を訪ねると門番をしている兵士は大慌てで邸内に報告に向った。安然は寝ていたが、飛び上がるように起きて出てきた。

「ほ、本当か!」

「な、なんで嘘を言わなきゃなんねぇ! 見に来い!」

「馬車を用意しろ! 町田屋に行く! すぐに極龍組へ早馬を出せ! 早くせんか!」

 安然は松国に向う最中の馬車内で着替える。店主も一緒に乗った。安然達が町田屋に着いた時には警暴団が数人が現場検証をしていた。団員が店主のかけた布団をどかそうとした時に、前慶も赤坂も目を見開いて団員を睨んだので誰も近づかけなかった。

「これは安然様! このようなところへ何を――」

 警防団が聞くが、

「前慶はどこだ!」

 団員を押しのけるように店内に入る安然。

「あちらにいますが我々を睨むので動かしてません」

 安然は駆け寄ると前慶は睨むどころか楽しい夢でも見ているかのように微笑みながら目を閉じていた。

「お主らの態度を睨んでいたのだろう。こんな形で死ぬ事となって無念であろう…」

 赤坂にも駆け寄るがやはり睨むことは無く寝ているようにしか見えなかった。

「殺人は重罪だ! すぐに犯人を捜しだせ!」

「はっ!」

 安然の命令で警暴団は相打ちを諦めたが、検証が進むとお互いの刀には血が付いていないのも判明し、相打ちの線は消えた。


 一通りの現場検証も終えると安然は自らの手で二人の死体を馬車に乗せた。ちょうど九龍も集まり、馬車に乗せられた死体を一人一人が見ていった。周泰征(しゅうたいせい)は前慶の後を追うと言って聞かない。太刀を抜いたので仕方なく正弦(せいげん)が縛犯網をかけた。

「シュウ殿、組長に迷惑をかけるつもりですか? 組長はそんな事は望んでいません」

 正弦の言葉に周泰征は泣いた。

「正弦、すまねぇな。俺も止めなきゃならねぇんだが、シュウを見ていたら…なんも言えなくなっちまった」

 天嵬は周泰征の寂しさがわかる。恩人を失った寂しさがわかるのだ。だから止める事ができなかった。

「さすがは管理人だね」

 涙を浮かべた顔で程子(ていし)は無理に笑ってみせた。

「誰がやりやがった! 殺してやる!」

 新豪が叫んだ瞬間、団扇で頭を叩かれた。

「すぐに熱くなるのがお前の悪い癖だ」

「兄貴! 悔しくねぇのかよ!」

「それでは必殺の太禅高王(たいぜんこうおう)と変わらないではないか…」

「でもよぉ!」

「新豪、黙れ! 犯人は必ず私が見つけ出す…」

 団扇で顔を隠した。その団扇は怒りと悲しみで震えていた。

「俺も手伝います! 九品有権党の勢力をあげて大陸を調べ上げます!」

 唐嘉(とうか)の様子を見て徐江(じょこう)は涙を拭わずに叫んだ。

「もちろんだ! 犯人を探し出すぞ! 警暴団よ、お前達の力は借りん!」

 堂紅奉は言い放った。

「くっ! なんだと我々はこの大陸を――」

 現場を指揮していた警暴団員の胸倉を掴んだ程子が言う。

「おめぇ達ぁ相打ちとか言ってやがったがぁ、違ぇぞ! 赤坂を殺したのぁ俺じゃねぇからな。二人組だ」

「て、程子?」

 安然は程子の豹変に驚いた。もちろん九龍もだ。程子は周泰征を指さした。

「シュウ、俺に付いてくんなぁ。もう義理ぁとっくに返し終わったろ、な?」

「く、組長!」

 周泰征は縛犯網の中にいながらも立ち上がろうとした。程子はニコッと笑うと気を失って倒れるが天嵬が受け止める。

「前慶ぇ、程子にとりつきやがったか!」

 涙の中にも笑顔があった。一同は一瞬のパニックに陥ったが太禅高王のこともあり、前慶ならやりかねないと納得することもあった。気を取り戻した程子も前慶と会ったと言った。

「さて、組長の言葉どおり二人での犯行だ。九品有権党はその筋で犯人を探し出す!」

「徐江様、今の言葉を信じるのですか?」

「当たり前だ! 警棒団は被害者の言葉を信じねぇのか!」

 警棒団は九品有権党の参加にあるため、党首である徐江の言葉には何も言い返せなかった。

「正弦殿、これをはずしてくれ。赤坂殿を西へ送り届ける」

「私も行こう。天王の所へ行く」

 正弦に縛犯網を外されると周泰征は安然の馬車に乗り込んで、前慶の死体を九龍組の馬車に運んだ。

「組長、ご忠告ありがとうございました」

 周泰征は深々と礼をして赤坂が乗っている安然の馬車に戻った。馬車を動かすと徐江が飛び乗ってきた。

「九品有権党の党首として俺も行きます! 極龍組と新龍組、さらに警暴団も絡む。大事にならないように気を付けなきゃいけない」

 悲しみにくれている徐江はいなかった。




 天王の間。前の天人の間である。緊急事態に武士と九品有権党の幹部が集められていた。周泰征と安然の話しを聞いた者はただただ驚いた。スティーブは号泣していった。

 天王の滝本は頭を抱えた。

「…赤坂。前慶…。この二人を失った事はこの大陸に大きな穴を開けた。すぐに犯人を見つけ出し、私が成敗しよう」

「絶対に見つけ出してやる! 党首! 早く指示を!」

「落ち着け、武古屋。しばらく我らの好きなようにさせてください。天人様には逐一報告いたしますので…」

 徐江は礼をした。

「わかった。では私は前慶と赤坂をこの大陸の歴史に残さなければならない。悪いな、前慶。お主の名前を万人に知ってもらうぞ」

 天を仰いだ天王は涙を流した。この日の内に九品有権党が犯人探しを始め、滝本は二人の国葬のための準備を始めた。



 二日後、前慶と赤坂の国葬が始まり、大陸全土の国民、そして外国まで統一までの事実は伝わった。前慶に髑髏のネックレスを渡した女性も国葬に参加し、前慶の血が乾いた髑髏のネックレスを形見として受け取った。そして女性は極龍組に入り、犯人探しに協力した。

 大陸全土を巻き込んだ犯人捜しは警暴団の発表で相打ちは無いとされていたにもかかわらず、前慶が赤坂を殺した、またはその逆に赤坂が前慶を殺したという噂が流れた。九品有権党は元・九龍組の徐江が仕切っているから警暴団も極龍組の肩を持っていると噂された。そのせいで極龍組と新龍組、そして警暴団の仲は悪くなり、その影響もあって全土の治安も悪くなった。

 警暴団は犯人探しを十日ほどで打ち切った。そうなると警暴団が犯人を隠しているんじゃないか、警暴団が犯人だったんじゃないかと疑いがかかり、極龍組と新龍組にも狙われるようになった。小競り合いや犯罪もあり、次第に各勢力は衰えていった。


 大陸が混乱する中、壁国と帯壺州の一部でクーデターが起きた。そして「新真国(しんしんこく)」を立ち上げた。この国の中心にいたのは寒田(かんだ)園巻(そのまき)である。二人は百年前にあった真国国民の子孫であった。新真国は龍下国(たつげこく)と手を結び新たな武器を手に入れた。それは火薬を用いる物だった。極龍組、新龍組、警暴団は手を組まずに各個で新真国に抵抗したが、火薬の前には手も足も出なかった。

 そして、この火薬はこの大陸を再び戦乱の世に戻した。

これで九龍組は終わりです。読んでいただいてありがとうございます。

メディア化の話待ってます。

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