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九龍組  作者: 大蔵 富造
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第十一・五話

 周泰征は城外に支配者を連れて行き、紙に書かせたことをを読ませながら街を巡回した。外国人はもう一つのカイタタハイラに逃げ込んでいったが、中には家族もいて残りたいという者もいた。もともと連珠州に住んでいた西国民者達は残った。この者達の戸籍も徐々に上西国に戻していく手続きも始める手筈を整えなければならないが、まずは連珠州開放の報告をすぐに上国へと向けられた。

 街では解放を喜んでお祭り騒ぎとなったが夜には収束した。そしてカイタタハイラの残る一国(元・立涼州)からキャッスルに使者が来ていた。使者は裃のような着物を着ている。キャッスルの支配者の間には周泰征と赤坂がいる。周泰征には言語がわからないので赤坂が全て通訳する。

「私達が言いたい事は、この大陸で生まれた子ども達に、あの海を渡る事は出来ないと言うことです」

「なぜだ?」

 赤坂は周泰征の言葉も通訳する。

「航海に耐えられないのです。軍隊を呼ぶための船に、一緒に乗った者達の、子ども達は死にました。このまま本国に戻れと言うならば、西国と我々とのハーフを殺しますか?」

「ハーフとは?」

「上西国国民と外国人の間にできた子どものことさ」

「ちょっと待ってくれ。滝本殿や武古屋はハーフか?」

「武古屋はここで生まれているがハーフじゃない。滝本殿は昔、カイタタハイラの支配が進むうちに無理やり名前を変えさせられた西の国民さ。そうしなきゃ殺された。俺はそうなりかけた時に逃げたさ」

「どうりで内情に詳しいんだな。話しを戻そう。使者殿、この話しは私だけでは決める事はできない。こちらから知らせるので今日は引き取ってほしい」

「そうですか、ではよきご決断を」

 礼をすると使者は退室した。

「これは天人に使いを出さなければな」

「そしたら俺が行ってくるさ」

「だが通訳士がいなくなってしまう」

「この国に住んでる者はみんな話せるさ」

「あぁ、そうか。それもそうだな!」

「しかしよぉ、外国は本当に諦めが早いんだな。戦争にならないからいいんだけどさー」

 あっという間に攻め込んできた外国があっという間に退却を考えていることに、こんな事ならもっと早くに植民地を奪い返せたんじゃないだろうか、外国が攻めてきたときにもっと対抗すれば外国は攻めるのを諦めてくれたんじゃないだろか、そんな思いにふける赤坂だった。



 翌日、昼。上国に連行された外国軍が到着していた。大軍が帰ってきたことに国民は不安だったが、外国人の容姿を見て驚いた。見物人がどんどん集まってきていた。

 天人の間で滝本がことのいきさつを説明する。正弦は滝本の後ろに控えている。安然王は天人の隣に座っていた。九品有権党から帰って来いと言われても東軍や極龍組が最前線で戦っているの帰るわけにはいかないと断っていた。

「…というわけで、外国兵を捕らえてまいりました」

「ご苦労であった。だが我にその外国兵をどうこうする指示は出せない」

「どういうことですか? 外国人のことは全て天人の指示無しでは――」

「言い方が悪かったようだ、滝本よ、そういう意味ではないのだ。指示をするのは私ではない」

「それは一体…」

「天人よ、きちっと仕事をこなしてから引退してもいいのではないか?」

「い、引退ですと! それは本当ですか?」

 滝本は狼狽した。新豪もさすがに驚いた。

「そうだ。お主達が出陣したあと安然王とよく話しをした。そして、西をお主に託したい!」

「わ、私ですか!?」

「うむ。安然王にこの国を託そうとしたのだが、やはり若い力がこの大陸を統一するべきであろう?」

「お待ちください…そ、その話しは後にさせてください。まず今は外国兵達をどうするかです」

「うむ、そうだな。外国に帰してしまおうと思うがどうだろう? 外国人に西で過ごせといっても酷な話しだろう。自由にさせてやりたい」

「それがよろしいかと思います」

「…それから龍下岬(たつげみさき)は外国の物にしようかと思う」

「それは…何故ですか?」

「我の最後のわがままだ。カイタタハイラで生まれた外国人たちもいるというし、この大陸での暮らしに慣れたものもいるかもしれない。外国の勢力を増大させずに外国の良いところだけを吸い取るための土地だ。もともとあそこには国民はすんでいなかったしな。滝本よ、お主にはうまくやって欲しい。最後の最後までわがままな天人ですまぬ。だが、龍下岬のこともどうしてもうまくいかないようならばお主にすべて任せる」

 天人は頭を下げた。滝本は膝を着いた。

「…天人のお考えであれば私は何も言いませぬ。今より外国の領地が少しでも狭まれば国民も安心するでしょう」

「そうか。ではカイタタハイラに行き、それを伝えて来てもらいたい」

「はっ」

「正弦も付いて行きなさい。くれぐれも前慶には大暴れをしないようにと」

「はっ」

 そう言う安然王も返事をした正弦も笑っていた。

「それでは早く行かなければ、もうカイタタハイラを攻め落としているかもしれませんので」

 滝本と正弦は礼をして出ていく。少数の兵士だけでカイタタハイラへと向かうと、その翌日に連珠州開放の知らせが届いた。

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