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†|赫夜の聖戦†《scaret night jihad》  作者: 再生紫電・怪獣
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第4話「†暗 闇†《darkness》」

イラスト上手くなりたいなあ


a.


夕方、緋美華が学校を出ると帰宅せず駅前広場の噴水前に、学生服を着たまま訪れるとゴスロリ服の幼女・津神 水無がちょこんと座って容姿の可愛さと服装の奇抜さで人目を集めていた。



「水無ちゃんお待たせ、ごめんね遅くなっちゃって!」



「気にしないで、さっき来たばかりだから」



「ありがとう水無ちゃん、でも他にも服を買っとかないと不便だね」



ゴスロリ服って言うのはとにかく目立つ、緋美華は周囲の人々の視線が水無に集まっており、中にはスマホで彼女を撮影してる人もいるのに気付いて、可愛いくて余り目立ち過ぎない服を次の休みにでも買ってあげなきゃと考えた。



「....良いよ。慣れてるから」



「とは言え、たまには着替えないと体に悪いよ」



「お金を使わせるのは気が引ける」



ただでさえ居候させて貰っているのに、服を買って貰うなんて申し訳ないと水無は思っているよう。



「もう水無ちゃんってば謙虚だなぁ、何なら私のお下がりをあげるよ」



「考えとく、それよりも作戦を開始したい」



「分かった、頑張ろうね!」



緋美華と水無はそれぞれ逆の方向へ歩き出す、お婆さんが言っていた男を一刻も早く探し出す為に二手に別れたのだ。





「やっぱり人混みは嫌だ、早く見付けたい」



静かで落ち着ける場所が好きで逆に騒がしい場所が苦手な水無は、男の発見を急ぐが、婆さんの話した特徴を持つ男は見付からず、この夕方の駅前には余程の用が無ければ二度と近寄りたくないと思うのだった。


一方の緋美華は、水無とは真反対に静かな場所より賑やかな場所が好きだから苦もなくキョロキョロしながら男を探していた。



「こうして見ると色んな人がいるんだね....あっ!」



突然、パッと真夜中にブレーカーが落ちたみたいに緋美華の視界が真っ暗になる。



「お婆ちゃんが言ってたのコレだね、近くにいるんでしょ、出てきなさい!」



「何だお前も能力者か? どうだ失明した気分は」



暗闇の中、男の声だけ聞こえ来たので緋美華は周りをキョロキョロ見回すが真っ暗な闇が続くだけで姿は見えない。


失明した状態で焔を使えば無関係な人を巻き込んでしまう、どうする緋美華!!



「お婆ちゃん悲しい顔してたよ、貴方はあんな顔を他の人にもさせて来たんだね」



「あのババアか、年寄りはチョロくて良い」



今度は耳元で怒りを誘う台詞を囁かれる、敵はいま背後にいるのだ。緋美華は咄嗟に肘打ちを放つ。



「いってて....へへ、俺は人から金と笑顔を奪うのが趣味なんだ、中には自殺した奴もいるらしいぜ」



「許せない!!」



「キレたところで視界が見えなきゃ俺が有利だ....しかもガキ一人なんだから舐めてかかっても釣りが来るだろうな」



怒りに燃える緋美華の耳に、男の物とは違う蔑みを含んだ声が聞こえて来る、そこで彼女はハッとする。



「....そっか、闇が立ちはだかるなら私の焔で照らすだけ!」



いきなり真っ暗になったにしては悲鳴ひとつ上がらないのと、男が何故か攻撃して来ないこと、聞こえてきた "何をイカれた会話してんだコイツら" "痛いなあ" という自分達は関係なさ気な台詞。


この三つの点から男は自分の目から光を奪ったのではなく、本当は自分の周りにだけ闇に包んだのだと気付いた緋美華は指先に焔を灯した。



「げっ、お前は焔を使用するのか....」



焔で闇を振り払った緋美華は、眼前に金髪でサングラスをかけた男が立って居るのを確認した、間違いなく婆さんが言っていた男だ。



「ここは一旦退かせて貰うぜ!!」



幾ら闇に包んでも焔を灯されては意味がない、緋美華の能力とは相性が悪いので男は逃亡を決意する。



「逃がさないよ!」



「いいや逃げ切るさ、あんたが御人好しの可能性に懸けてな」



「きゃあああああ」



男は逃亡に利用するため、近くに居た女性を背後から羽交い締めにして首筋にナイフを突き立て人質にした。



「動いたらコイツの命はねぇぞ」



「卑怯だよ!!」



「なら焔を使うか、この女も焼け死ぬだろうが」



憎たらしく男はニヤリと笑う、確かに焔で彼を攻撃しても女性に燃え移ってしまう。


それに人質を取るような卑劣な男だ、女を盾にする可能性も十分にある。迂闊に攻撃する勇気は今の緋美華には無かった。



「くっ」



「覚えてやがれ!」



「きゃっ」



女を突き飛ばし、彼女を緋美華が受け止めている隙に男はまんまと逃亡してしまった。


周囲の人物は警察に通報しているようだが、能力者である彼を逮捕できる可能性は比較的低い。


それに被害者から巻き上げた多額の金で、警察の御偉方を黙らせることだって出来るのだから余り意味のある行為ではない。



「あのあの、ごめんなさい!」



犯人の逃亡を許してしまった悔しさを噛み締めながら、緋美華は女性に頭を下げた。



「えっ?」



女性の目には涙が浮かび、死の危機から解放されてなお恐怖にガタガタと体を震わせている。


一番悪いのはあの男なのだが、自分のせいで彼女を怖い目に遭わせてしまったと緋美華はどうしても申し訳なさを感じてしまう。



「いえ、大丈夫ですから」



「あっ」



頭を上げた緋美華は、女性が恐怖を宿した眼差しで自分の指先を見ている事に気付いた。



挿絵(By みてみん)



(やば....焔を消すの忘れてた、私のバカ〜!)



さっきまで犯人に震えていた彼女だが、今度は超常的な能力を見せた緋美華に怯え震えていたのだ。



「えっと、さっきの焔はただの手品なんです!」



かなり苦しく思える言い訳だが、それでも女性の目から伝わってきていた恐怖心は消える。


指に火を灯した女学生が居るとSNSに撮影した画像をあげた周囲の人々も、"さっきの画像はただの手品だって、でもスゲーよな!" と感想を追加で残したので緋美華は能力者であると何とかバレずに済んだ。



「緋美華、見付けたの?」



何とか誤魔化せてほっとして胸を撫で下ろし、場を去る女性の背中を見送る緋美華の腰辺りから低めだが幼い声が聞こえた。



「う、うん」



その声に緋美華が視線を下ろすと、騒ぎに気付いて、小柄な体を人混みに呑まれるも何とか通り抜けて来た、水無の姿があった。



「確かに見付けたんだけど、ごめんね、逃げられちゃった....」



「仕方ない。来るのが遅い私も悪いから」



「でもでも能力について分かったことがあるの」



緋美華は水無に、男自身は失明させる能力だと言っていたが、実際は暗闇で包み込む能力であったと教える。



「相手の周囲を闇で包む能力、大した奴じゃなさそう」



相手から光を奪う能力なら未だしも、それなら懐中電灯とか持ってれば良いし、なにより緋美華が焔で照らせば闇など怖くない。


水無は男を恐るるに足らない相手だと判断し、それで良く今まで警察に捕まらずに悪事を働いて来れたものだと思った。



「覚えてろって如何にも悪役みたいな台詞を吐いて逃げて行ったし」



「それなら多分、奴の方から私達を探し出して来ると思う」



「そうだと楽だなぁ、もう誰も巻き込みたくないから人気の無い場所とかならもっと良いかも」



「確かに目立つのは良くない....一先ず帰ろう」



「うん」



何となく手を繋いで帰りたくなった緋美華にギュっと手を握りしめられると、水無は不快そうな表情を浮かべた。



「人前は恥ずかしいから辞めて」



「あっ、ゴメン」



ゴスロリ服で目立つのは良いのに手を繋いで歩くのは恥ずかしいのかー....と少し残念がりながら、緋美華はテクテク歩いて帰る水無の後ろをトボトボ付いて帰った。




第4話「†暗闇†(darkness)



b.


今まで能力を悪用し罪なき人々を苦しめ、ついさっきも金を巻き上げようと狙った緋美華に能力を破られて逃げた若者・深山 倉雄はとある山奥の廃ホテルへ鷹山から奪い取った車で訪れていた。



「こんなお化け屋敷みたいな気味の悪いとこまで来たんだ、居るならさっさと出てこいよ!」



「まったく、うるせえなあ」



深山が車から降りずに窓を開けて怒鳴ると、廃ホテルの中から煙草を咥え漆黒のロングコートを着た気だるげな髭面の中年男性が姿を現した。



「お前が噂の殺し屋、赤タバコか?」



面倒臭そうに歩いて向かって来る中年男性に深山は訊ねる、赤タバコというのは依頼の達成率100%で殺しを楽しんでいるので依頼料金も良心的と噂される殺し屋。


深山はその話を耳にして緋美華を抹殺して貰う為に、赤タバコが居ると言われる、この廃ホテルまでやって来たのだ。



「ああ〜そうだ、もしかして依頼者か?」



「じゃなきゃ誰がこんな場所まで来るかよ、にしてもスゲーだっせえ職業名だとは思ってたが本人を見て納得したぜ」



噂を聞いた時はクールでスタイリッシュなサングラスとスーツ姿が似合うナイスガイを想像していたのに、実物はコレかと深山は苦笑する。



「ある赤い箱のタバコが好みでな、そっから適当に名前を取ったんだ」



「どうでもいい話は此処までだ、仕事の話をさせて貰うぜ殺し屋さん」



適当に職業用の名前を決めるな、本当に大丈夫かよ!と不安になりつつも深山は人は見た目によらないという言葉を自分に言い聞かせ、頼りなさ気な殺し屋に依頼することを決めた。



「あぁ分かった」



「先ずターゲットはガキ一人、料金はどれぐらいするんだ?」



深山はダメージジーンズのポケットから、ターゲットである緋美華の写真を取り出して赤タバコに渡す。


ターゲットが誰か説明しなくても分かるよう、SNSにアップされていた画像を撮影していたのだ。



「未成年なら百万だな」



予想以上に安くて驚いた直後、もしかしたら詐欺か偽者じゃねえのか?と深山は疑いの眼差しで赤タバコを見る。



「....異能力者って言えば信じるか」



疑いの眼差しを向けられてるのに気付いた赤タバコは、深山に自分が能力者であることを自ら暴露した。



「なるほど、達成率100%ってのも能力者なら納得だぜ」



「今までのターゲットの中に能力者は何人も居たと言えば、更に納得してくれるか?」



「あ、ああ、信じるぜ」



常人だけなら未だしも、能力者を含めて殺せなかったターゲットが未だに居ないとは一体どんな能力を持っているんだ....途端に深山は目の前のだらしなさそうな男に恐怖心を抱く。



「料金は達成後で構わん、殺した証拠に死体を見せるが構わんか?」



「死体なら見慣れてるが必要ねぇ、俺は直接この目で奴が殺されるのを見てえからな」



「分かった....それとお前も能力者だな、俺が能力者って点は信じて疑わない辺り」



「まあそうだが、何か関係あんのか?」



「能力者が依頼してくるならターゲットの赤髪ちゃんも能力者なんだろうと思ってな、どんな能力なんだ?」



「指に焔を灯してたから焔を使う能力だと思うぜ、俺の能力とは全く相性が悪いんだよ」



「そうか俺の能力なら問題ない、さっそく殺しに出掛けるか」



深山は嗤うと車の助手席に赤タバコを乗せ、自分を逃亡に追い込んだ憎たらしいクソガキが殺される様を見るのが今から楽しみになった。





c.


残業ナシ!の広告にまんまと騙されて就職した会社は残業まみれで今宵の帰宅時間も午後十時。上司に対する陰口を叩きながら、鳥山 湖子は夜道を歩いていた。


彼女が勤めている会社は都会にあるが、暮らしているこの場所は田舎町なので、もう誰も歩いていないし店も閉まっていて寂しい。



「責めて給料上げろよ糞社長....えっ」



鳥山はギョッとした表情で振り向く、異常な気配を背後に感じたから。彼女の気のせいなら良かったのだが、残念ながら黒い帽子にサングラスをかけ、これまた黒のロングコートを纏う全身黒ずくめの不審者が立っていた。



「よう嬢さん、いきなりだが俺に血をくれないか?」



「きゃあああ!」



身の危険を感じた鳥山は全速力で逃げ出す....ハイヒールを履いてるので走りにくかったが、それでも七分ほど走ると、軈て不審者の姿は見えなくなった。



「何だったのかしらアイツ、とにかく通報しないと」



不審者を警察に連絡するため鳥山はオフィススーツのポケットからスマホを取り出そうとするが幾ら探っても無い、逃げてるうちに落としてしまったようだ。



「もう最悪、あの不審者が逮捕されたら絶対に弁償して貰わないと気が済まないっての... あら!」



逃げ切れたと確信したので強気な台詞を吐いていると、鳥山は暗闇の中にポツンと設置された公衆電話ボックスを見つける。



「ちょうど良いわ、あれで奴を通報しましょ」



鳥山は電話ボックスの中に入りダイヤルを回し始めるが、背後から再びさっきと同じ異常な気配を感じ冷や汗を流す。



挿絵(By みてみん)



「まさか....きゃっ!?」



今度は逃げられなかった、鳥山は振り向く間もなく背後から羽交い締めにされた状態で(うなじ)に鋭い歯を突き立てられてしまう。それだけでは無い、どんどん鳥山の顔が蒼白く変色してゆくではないか。



「ぐっえっええ」



凄まじい力で拘束された状態で、鳥山はは全身の血を歯から吸いとられた為に死んでしまった。



「ふう、御馳走様」



息耐えた鳥山の死体を血に染まった口許を袖で拭うと、不審者は依頼者の待っている車へと向かう。



「奴等を始末する準備はこれで完了だ」



「不便な能力だなあ、人間の血を必要とするなんて」



パーキングエリアで車を停めて待っていた深山の元へ、依頼した殺し屋が戻って来た、口元を見ると血を拭った後が確認できる。



「強い力を使うには代償がいるもんさ、アンタも俺という力に金という代償を払ったじゃねえか」



「それもそうだな」



赤タバコとそんな話をして自分の能力にも何か代償が有ったりしないか、今まで能力を使って悪事を働いた代償を払うときが来るのではないか。


もしかしたら、その代償があの赤髪碧眼の少女なのか....不安に襲われながら深山は車を走らせた。






翌朝、鳥山の変死体はジョギングしていた男性により発見され、ニュース番組や新聞で大きく報道される。


緋美華も学校の休み時間に新聞紙を広げてると件の記事を発見し驚愕、カット見出しを大声で叫んでクラスメイト達の注目を集めた。



「吸血鬼現る!?謎の変死体!!」



「ホラー映画のタイトルみたいね、にしてもアンタが新聞を読むだなんて明日は世界滅亡かしら」



頭テストは常に全教科赤点ギリギリ(幼馴染に教えて貰ってコレ)という頭の悪さから緋美華は頭がパンクするので小難しい新聞やニュースに殆ど関心はなかったのに....ひより含めた教室中の生徒は本気で疑問に思った。



「変わった事件が起こったら能力者の仕業かも知れないから、ニュースとか新聞とかを、ちょくちょく確認しとけって水無ちゃんが言うんだもん」



「あっ、バカ!」



ひよりに叱られたことで、あっ!と緋美華が気付いた時には遅かった。生徒達は春野さんが狂っただのアホ臭いだの、能力者....まさか貴様は数年前に死んだ筈の我が盟友・グリムゾンヴォルケーノ!だのと騒ぎ始める。



「馬鹿にされるだけで済んだから良かったけど、本当に能力者だってバレたら孤立するし最悪、世間の見せ物よ」



自分も白い目で見られるのは御免だから、周りに聞き取られない音量で緋美華の耳元に囁く。



「ごめん〜」



「全く本当に馬鹿ね、ほら授業がもう直ぐ始まるから席に着きなさい」



「はーい」



席に着いてチャイムが鳴り授業が始まっても、緋美華の頭の中には新聞で見た記事の事と闇を扱う男の事で授業内容が全く入って来ない。


バイトが有るから補習は嫌なので何時も真剣に授業を受けようとするが、小さな脳味噌では先生の言ってることが理解できず何時も寝てしまう緋美華なので結局は同じことだが。



(あの男は、いつ私を襲って来るんだろ?)



若しも今襲われたら嫌だな、皆を巻き込んじゃうし。焔を灯すだけなら昨日みたいに手品って言って誤魔化せるけど戦うとなると....なんて考えているうちに緋美華は眠たくなり、今日も授業中であるにも関わらず寝てしまった。



「ちょっとアンタまた授業中に寝て!」



黒板に書かれている必要な文章だけをノートに写しながら、緋美華の様子をチラチラ見ていたひよりが怒鳴る。


教師もひよりが授業に集中しないで緋美華を見ていたのを視認していたが、風見は優秀だし良いかとスルーしていた。


だが成績が悪過ぎるのに、授業中に眠ってしまう緋美華に対して先生は甘くなかった。



「コラァ春野、なに眠ってんだ!」



「はひぇ」



先生の拳骨を食らって緋美華は痛みで目を覚まし、クラスメイト達は涙目で首を傾げる彼女をケラケラと嗤った。





「今日は流石にバイト行かないと、クビにされたら困るんじゃない?」



夕方の下校時時間、下駄箱にて、ひよりは裸足のままシューズからローファーに履き替える緋美華に向かって言う。



「でも、ひよりを一人で帰すのは不安だもん」



「そりゃまあ能力者に襲われたら終わりだけど、そんな事言ってたらもうバイト行けなくなって生活できなくなるわよ?」



緋美華と一緒に帰れるのも心配してくれるのも嬉しいがバイトをサボってクビになれば学校どころか普通に生活するのも難しくなってしまう....自分のせいで愛する幼馴染をそんな目に逢わせるなんて、ひよりには耐えられない。



「うーん、そうだよね」



「あ、あのさ、良ければ、なんだけど、私も一緒にバイトしようかなって」



挿絵(By みてみん)



「本当に!?」



モジモジと提案してみると喜んだ緋美華に手を握られて、ひよりの顔が紅潮する。



「アンタ一人じゃ店員さんに迷惑かけそうだし、一緒に帰れば襲われても大丈夫でしょ? 面倒臭いけど仕方ないから付き合ってあげるわよ」



ひよりは面倒臭いと言う割には嬉しそうな表情を浮かべる。頭が良くて真面目なので委員会に幾度と誘われたが、趣味に時間を使いたいからと毎回断って良かったと思った、緋美華と一緒に居られる時間を増やせたのだから。



「ひよりが一緒なら楽しく働けるよ!」



「サボってたら怒るからね?」



「さぼらないよ!」



そのあと緋美華とひよりは学校を出て、金城さんに言ったら履歴書無しでも喜んでひよりを採用してくれるよとか、今日から直ぐには無理だろうから店長に話して休憩室で待たせてあげてって言うからとか会話をしながら件のバイト先へ向かう。





「見つけたぜ、ターゲット」



バイト先の花屋へ向かう途中に、何時もと違って自分たち以外は人の全くいない交差点で緋美華達が信号を待っていると背後から低い声が聞こえた。



「来たね!!」



水無の言った通り男がやっと復讐に来たかと、緋美華は庇う様にひよりの前に出て拳を構える。



「あれ、違う人?」



黒いコート姿を着た髭面の中年男性....彼はどう見ても昨日会った男とは全く違う人物だった。



「あんたが凝らしめた男に依頼されて仕事を果たしに来た殺し屋さ」



「殺し屋ですって!?」



ひよりは戦慄する、殺し屋というプロの前では学生に過ぎない緋美華など赤子同然で簡単に殺してしまうのではないかと。


緋美華もただの学生ではなく能力者だが、そんな彼女と戦ったという男がわざわざ依頼したことから、この殺し屋も能力者と推測できるし。



「またまた殺し屋だなんてオジサンってば冗談を....言ってる訳じゃないみたいだね、あの男の関係者ってことは本気、か」



緋美華は澄んだ青い瞳で殺し屋を睨む、罪なき人々を苦しめる悪党の手助けをするなんて赦せない!



「若い割りに良い目をするじゃねえか、気に入ったぜ嬢ちゃん」



「わわっ!」



殺し屋はロングコートのポケットから0.3秒の人並外れた速さでワルサーppK を取り出すと銃口を緋美華に向けた。



「怖いか?」



「正直すっごく怖いかも」



緋美華はかなり不味い状況に追い込まれてしまった、いくら能力者になったと言っても撃たれちゃ致命傷なのだ。



「殺すなら責めて私にしなさいよ、緋美華を殺さないで!」



「危ないから下がってて!!」



自分を庇う為に前に出てこようとする幼馴染を両手をあげたまま嗜める緋美華の額には、汗が滲んでいる。



「そうだ、俺のターゲットはアンタじゃねえんだよなあ!」



殺し屋がニヤリと笑った次の瞬間、夕陽に赤く照される逢魔ヶ刻の交差点に少女の絶叫と銃声が響いた。



つづく


吸血鬼って本来は弱点ないそうですね、弱点ほ創作での後付けってだけらしいですが個性出せてるし結果的に良かったと思いますね


最近放送された吸血鬼百合アニメの二期欲しい

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