第12話「†不 視†《invisible》」
我ながら今回は短いっすねえ....
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「風見さんの髪をよくも、姿を現しなさい!」
このパツキンは気付いてない、私はナイフを持って目の前に立っていることに。一対一であるなら何時でも喉を掻き切ってぶち殺せるんすけどぉ、ダメだなあこりゃ....三対一じゃ不利だなぁ。
春野 緋美華とガキがヴォルフトの元へと向かってくれたお陰で、これでも目標人数は減ったんだけどさぁ。
「てか金城、あんたも能力者だったの?」
「勿論ですわ、風見さん貴女への想いから目覚めましたのよ!」
「あっそう」
一人仲間を殺して動揺させた隙に、残った全員を始末するという計画が運悪く失敗したいま、次の手を考えなくては。
先ず一人は始末できるが、その瞬間に居場所を特定され攻撃される可能性がある、なーにか策はないもんか。
「敵は仕掛けてきませんわね」
「ビビって逃げたのかしら? 気配も感じないわよ」
「油断すんなよ、どう俺達を始末するか考えてるのかもしんねえぜ」
「じゃあ逃げたのか居るのか確かめてやるわ!」
目付きの鋭い茶髪の女が、拳銃を顕現して銃口を地面に向けた。銃を地面に撃って泥を跳びはねさせることで尻餅でもつかせて居場所を探る気!?
「....金城、真倉さんも鴎子さんと其処のボロ小屋に登って!」
「わかりましたわ!」
「あぁ、行くぞ鴎子」
「うっ、うん」
蔦に覆われて窓は無く誰も暮らせそうにない小屋の屋根に、先に登った真倉が鴎子に手を伸ばすと鴎子はしおらしい表情でその手を掴んでいる。
散々いじめてきた真倉に女の顔を見せるたぁな、ヤツの気を引きたくてイジめ始めたようだけど全く学校に来なくなってからのお前の顔は虫酸が走るんだよなー。
「炙り出してやるわ!」
仲間が全員屋根に登ったのを確認した茶髪女は地面に発砲....しかし特に何も起こらない。
(ケッ、ビビらせるんじゃねえし)
「分かったわ、そこにいるのね」
(なっ、にいいい!?)
安堵しているとこに銃弾が飛んできた、咄嗟に体を反らして避けたから良いけどもう少しで死ぬとこだったし。
コイツは電気を操る能力があるのか、そういや鴎子を奪い返してきやがったときも迅雷を伴っていたっけ、危険なヤツだなもう。
「あれ?」
「おいおい、何も起こらないぜ?」
「きっと避けましたのね、風見さんに間違いはありませんもの」
ちっ、あのパツキン女、屋根に登ってるってのに近くにいた時と同じぐらいに声が大きく聞こえて鬱陶しいし。
「私だって間違えること結構あるわよ、でも確かに今のは正解だったわ。電波を発射して反射波で居場所を特定したもの」
なんだよその理屈は、地面に向けて発射した弾はレーダーの役割だったってかいな?!
とにかく居場所が特定されても勝つのは私なんだよね、見付かった時の対策も考えない人間なら此処まで生き延びれてないっつーの。
「つまりは、特定した方向に銃を撃ちまくれば!」
(かかったな間抜け野郎ッ....!)
茶髪女が銃を発射した瞬間に、私はポケットに入るぐらい小さいがガソリンで満たした小さな箱を放り投げて伏せる。
これは私の能力により見えない、そして、まんまと電気を迸らせる銃弾がそれに直撃!!
「きゃぁああああ、があっ」
爆風により茶髪女は吹っ飛び、体を小屋のすぐ隣にある水車に打ち付けてその場に踞る。
「かっ、風見さん!」
「爆発しただと、どういうことだ!?」
さてと、一人でいるならこのナイフで首を切って殺しても良いけど血を吹き出されて私に付着したらバレちゃうし、出血しても私にかからない程度の他のとこを刺しちゃえ!
(食らいやがれし!)
「はぐっ!?ああ!!」
茶髪女は困惑の表情を浮かべた後に痛みと共に血が流れる太腿を抑えながら気を失った。ターゲットが踞ってい動かない今、太腿に遠くからナイフを投擲するのは容易かったわ〜。
「かっ、風見さんがやられてしまいましたわ!!」
パツキンは一瞬で気を失っている茶髪女、風見さんと呼んでいたな....の元へと一瞬で移動して傷口を包帯で巻いてる。
コイツの能力は瞬間移動か、始末するなら今のうち....いや焦るな私、油断はならない、一人は戦闘不能にしたんだし。
B.
私はもう許せませんわ、愛する風間さんをこんなに傷付けた姿無き敵と、近くに居ながら彼女をこんな目に遭わせてしまった自分自身を。
応急手当ては終わりましたが風間さんは気を失ったまま、もしこのまま目を覚まさなかったら....なんてことになりませんわよね?!
「よくも風見さんを!!」
敵の姿は見えないけれど襲って来るなら今かしらと、試しに背後へ何の前振りも無く顕現した手斧を振り翳しましたが手応えは全くなし。
「ダメだ、お前も風見さんとやらを連れてここまで来い、こうなりゃ地割れを起こっ....!?」
「真倉!」
いきなり腹から血を流して真倉さんまで倒れてしまいました、鴎子さんが咄嗟に手を掴んでくれなければ屋根から滑り落ちて死んでましたわね。
こんな短時間に二人もやられるなんて相手は強敵、余計に気を引き締めなければ。
「きゃあん!」
ゆ、油断大敵と意気込んだ矢先お腹に鋭い痛みが....恐らく何かで殴打されたのでしょうね、血も出てませんし。
「良くもやりましたわねえええええ」
こうなればと見映えは滑稽ですけれど私は斧を持ったまま回転、コレで迂闊に近寄れば致命傷を負ってしまいますわ。
運が良ければ此方から敵にダメージを与える事だって可能でもあります、さぁどうするかしら....?
「目が回りますわ〜〜〜しかし手応えを感じるまでは、回転を辞める訳にはいきません」
手応えを感じるまでは、倒すまでは回る回る時代のように私は回りまくりますわよ〜〜〜〜〜!!
「ひゃあああ私の美しい顔にいいい!」
頬に痛みが走ったかと思うと血が流れてき、ついつい回転を止めてしまいました。
敵は私の頭上へ刃物を投げ、それは落下して私の頬をかすった....運が良かったですわ、もし頭部に落下してきたら死んでましたわよ。
ヤバいですわ....このままでは私もやられてしまう、いよいよ万事休すかと思われたその時でした。
「お待たせしました、お嬢様」
煩わしいプロペラが上空から聞こえてきましたわ、あのヘリコプターは我が金城家のもの、そして操縦しているのはメイドの椋椅!
「椋椅、あなた今まで何処に行ってましたの!」
「用意に手間取りまして、あ、ばら蒔きますので」
「意味分かりませんけど分かりましたわ」
椋椅はヘリでカラースプレーを上空から全体に散布、天然の緑が人工のピンク色で染められていきますわ....なんという環境破壊。
見付かったら大変叱られるに違いありませんわ、風見さんを傷付けた者を始末することができるなら苦になりませんけれど。
「はっ、なんて面妖な!!」
何もない場所で浮かんでいるピンク色が此処から数メートルの所に見え、しかも此方にどんどん近付いて来ますわ....あれが敵ね。
「来なさい、ゴルアクスト」
右手に金色の巨斧・ゴルアクストを顕現、純金だけで作られてますから重さは百キロ以上もありますが、そのぶん威力は半端じゃなくてよ。
「くそおおおおお!」
「自棄になって見苦しいですわ、潔く散りなさい」
ピンク色が目の前までやってきたところでゴルアクストを振り下ろすと、グシャリ、肉が潰れるような感触を覚えましたわ。
「うげえええええ!!」
手応えと共に断末魔の叫びが轟く、当然の結果ですけど勝ったのは私の方ですわね!!
C.
頭部が潰れたトマトの様にぺしゃんこの無惨な姿となって、敵は姿を現しました、風見さんに手を出した下郎に相応しい末路ですこと。
「コイツは萌音じゃねえか」
目を覚まして屋根から降りて来ると真倉が頭の潰れた死体を見て言いました、萌音って本人に似合わない可愛らしい名前ですわね。
「知り合いですの?」
「私の取り巻きで、その、一緒に真倉さんをいじめてて」
可愛らしい顔をして、恐ろしい子....! 性格的にいじめっ子といじめられっ子の立場が逆ならしっくりきますけど。
「あらま、仲間でしたか、申し訳ありませんが風見さんを傷付けてムカついたので殺してしまいましたわ」
「容赦ないのなお前、殺しちまうなんてよ」
「お金の力で処理できますので、それに殺そうとしてきたんだから殺されても文句を言われる筋合いはありませんわよ」
「....お前もヴォルフトと同じ様な目をしてるな」
助けてやったのにあんな殺人狂と一緒にするなんて失礼極まりない人間だこと、別に私は楽しくて殺したわけじゃありませんわよ。
「ふん、それじゃあ椋椅! 風見さんと、この貧乏人どもを運んで下さいな」
乗ってきたヘリコプターは空を飛んでいるのに、何時の間にか背後に立っていた椋椅に命令を下す。
椋椅は飛び降りましたのね、地上二十メートルの高佐から高さから飛び降りたっていうのに全く余裕というのは凄いですわね。
「畏まりました」
「貧乏人っておい」
「それから! そこの年寄りの死体を厚く弔いなさい、葬式代は出しますから」
「お前....」
「ありがとうございます!」
この事が風見さんに知られたら見直して貰えるかも知れないって理由があるので、あまり感謝しないで欲しいですわね。
「お嬢様はどうなさるのですか」
「因縁の敵と決着をつけに行きますわ」
「バカ、死ぬ気かよ?!」
「津神さんの言ってたこと忘れたんですか?」
ああもう煩いですわね、あの二人で本当に勝てるか心配なだけなので質問とかしないでください鬱陶しい。
「お気を付けて」
ぎゃーぎゃー喚かず椋椅はそれだけ言うと、強引に二人を、優しく一つの亡骸をヘリに乗せて飛び立ちました。
「さて行きますか、嘗ての友・ ルガル を....いえ、ヴォルフトを倒しに!!
旧友との戦いに私が姿を見せない訳には行きません、敵は地下闘技場にあり、いざ参りますわ!!
つづく
透明化する能力持ちのキャラに好きな奴が多いことに気づくこの頃。
頭良くなればもっと熱いバトルかけそうなんすけどね、すぐ終わっちゃうなあ( ;∀;)