小太郎と晶ちゃんの幼稚園生活
「みなさ〜ん 今日はお泊まり会です!一旦帰りますが 夕方五時に園庭に集合して下さいね〜!」
「は〜い!」
今日は小太郎が待ちに待ったお泊まり会
「晶ちゃん またね!」
「うん!太郎ちゃん 」
「母ちゃん!ただいま!今日 お泊まり会だぞ!」
「小太郎 おかえり もう用意してありますよ」
「んじゃ 行ってくる!」
「小太郎!まだ時間じゃないでしょ!」
先走る小太郎
「母ちゃん!まだ?」
「まだ 二時です!」
やっと 時計の短い針が 四 を越える
「小太郎 そろそろ行きますよ!」
「もうちょっと…」
「小太郎!起きなさい!」
小太郎は昼寝をしていた
幼稚園に近づくにつれて いい香りが漂ってくる
「おっ!カレーだ!」
園庭では 役員の人達がカレーを作っていた
園庭の真ん中には キャンプファイヤーの準備が
「小太郎 先生の言うことをちゃんと聞くんですよ」
「任せろ!母ちゃん」
「…晶ちゃん 小太郎をよろしくね」
「うん!」
母ちゃんは同い年の晶ちゃんに小太郎を頼んだ
「みなさん それではいただきましょう!」
「いただきま〜す」
「おかわり 沢山あるからいっぱい食べてね〜」
「は〜い」
「おかわり!」
「僕も!」
「私も!」
外でみんなで食べる御飯とは美味しいものだ
かなり多めに作ったカレーがあっという間に無くなった
「それでは みなさん これ を囲んで丸くなって下さい!」
「先生!何やるんだ?」
「これから キャンプファイヤーをします」
みんなの中心で 井桁に組まれた木に火が着けられる
「おぉ!」
「わぁ〜!」
パチパチ音をたて 火の粉がまるで 蛍のように天に舞っている
いつまで見ていても飽きなかった
「綺麗だねぇ」
火を囲み 園歌等をみんなで歌ったりハンカチ落としのゲームを楽しむ小太郎達
「さぁ それではみなさんトイレに行って 歯を磨き寝る準備をしますよ!」
「えぇ〜!もう寝るの〜!」
「もう 8時ですよ〜!良い子は寝る時間です」
「良い子じゃなければ寝なくていいのか?」
屁理屈を言う小太郎
「太郎ちゃん!みんな 良い子です!寝る準備をしてください」
小太郎は 昼寝をいやというほどして眠くなかった…
「それでは おやすみなさい」
「おやすみなさい!」
多目的ホールに全員で布団を敷いて寝る
先生が灯りを消して出て行くと
「知ってる?」
「何をだ?」
ヒソヒソ話が彼方此方から聞こえて来た
寝息を立ててる 園児もいるが ほとんどがまだ寝れないでいた
「僕の兄ちゃんに聞いたけど…夜になると変な音が聞こえるんだって…」
「えぇ〜!」
子供とは すぐに その手の話を信じてしまう
ひとしきり話しをし 一人また一人と落ちて行く
「何だよ みんな寝たのかよ…」
小太郎は寝れないでいた
「太郎ちゃん…起きてんの?」
「起きてるぞ!晶ちゃんも寝れないのか?」
「トイレ…行きたい…」
「晶ちゃん オシッコしたいのか?」
「太郎ちゃん!」
デリカシーのない小太郎
「さっきあんな話聞いちゃったら…怖くて…」
「俺 ついてってやるぞ!」
「本当に!」
「晶ちゃん行こう!」
「私も行きたい…」
女児数名も名乗りをあげる
「よし!みんなで行こう!」
「ウッ!」
「痛いっ!」
多目的ホールの出入り口へと最短距離でみんなを踏みつけて行く小太郎
決して悪気はないのだが…
トイレは 渡り廊下を抜けた先にある
「俺 ここで待ってるからみんなオシッコしろ!」
「太郎ちゃん!外で待ってて!」
小太郎は 女子トイレの中まで来ていた
「何だよ…ついて来てって言ったのに…ブツブツ…」
外で待つ小太郎 満天の星空を見上げる
「おぉ!空に金平糖がいっぱいあるぞ!」
そう 小太郎には見えた
「わぁ〜!綺麗」
トイレを済ませた 晶ちゃん達も空を見上げていた
「お空に 宝石がいっぱい有るみたい!」
金平糖と宝石…価値観の違いだな
多目的ホールに戻る小太郎達
「ウッ!」
「痛っ!」
自分の場所を忘れた小太郎
「太郎ちゃん こっちだよ」
「おぉ!そっちか!」
常に最短距離を移動する小太郎
「ウッ!」
「痛っ!」
「眠くならないぞ…」
さっきトイレに行った 晶ちゃんとその他の女児達は寝息を立てている
「そうだ!」
眠れない小太郎はある事を思い出したかのように 多目的ホールを出て行く
「オシッコ…」
一人の男児がトイレへ出て行く
渡り廊下を通りかかったその時
キィー…キィー…
園庭の方から聞こえてくる音
「で…で…出た〜!」
先生のいる部屋へと走る
「先生!出た〜!」
「あら…お漏らししちゃったの…」
その男の子は あまりの恐怖に…
「先生…ごめんなさい…」
「大丈夫 これに着替えてね」
「ち…違うの!出たの!」
「だから お着替えして…」
「違うの!幽霊が…」
「幽霊?」
「こっちだよ!一緒に来て」
先生は 音のしたところに連れて来られた
キィー…キィー…
「ほら!なんか聞こえるでしょ!」
「ちょっとここに居なさい!」
先生が恐る恐る音のなる方へ近づく
キィー…キィー…
「誰か居るの!!」
先生が声をかけると
「おぉ!先生!」
小太郎がブランコを漕いでいた…
「太郎ちゃん…」
幽霊の正体は 小太郎が漕ぐブランコの音…
「太郎ちゃん どうしたの!」
「俺 寝れないぞ!」
「はぁ…」
先生は腰を抜かす寸前だった
「太郎ちゃん これ食べな」
先生がインスタントラーメンを作ってくれた
「先生 いただきま〜す」
「美味しい?」
「うん!美味い!」
常日頃 問題ばかり起こす小太郎もまだ五歳
腹が膨れた小太郎を眠気が襲い その場に寝る小太郎…
「全く…寝顔は本当子供なのに…」
先生は そのまま小太郎をそこに寝せ布団をかけてやる
翌朝
「先生!太郎ちゃんが消えた!」
晶ちゃん達が先生のところに血相を変えてやって来た
「あぁ 太郎ちゃんならここに」
先生の部屋で まだ夢の中の小太郎がいた
「晶ちゃん!」
はっきりと寝言を言う小太郎
「はい!」
寝言に返事する晶ちゃん…
「オシッコ終わったか?…ムニャムニャ…」
「太郎ちゃん!!」
「あははは!」
みんなの笑い声で起きる小太郎
「ん…みんなどうしたんだ?」
「もう!」
ほっぺを膨らます晶ちゃん
「ん?」
しかし 何があったかわからずキョトンとする小太郎を見て
「あははは 全く太郎ちゃんは…」
晶ちゃんも笑顔になる
「太郎ちゃ〜ん」
「晶ちゃん来た!あがって!」
小太郎と晶ちゃんは 毎日のようにどっちかの家に遊びに行くようになっていた
今日は 晶ちゃんが小太郎の家に
「晶ちゃん いらっしゃい」
「こんにちは」
晶ちゃんはちゃんと挨拶も出来る
「小太郎もちゃんと 晶ちゃん家に行った時挨拶してるんでしょうね…」
「大丈夫だぞ!」
小太郎が晶ちゃん家に行った時は
「晶ちゃ〜ん!あ〜そ〜ぼ〜!」
晶ちゃん家は マンションの三階
小太郎は 道路から目一杯大きな声で晶ちゃんを呼ぶ
「おっ 来たな」
マンション中の人に小太郎が遊びに来たのが分かるくらいに
ちなみに…
幼稚園に行く時も 小太郎が晶ちゃん家に寄るのだが
「晶ちゃ〜ん!幼稚園行こう!」
「おっ…もう朝か…」
小太郎の声は マンション住人の目覚まし時計代わりになっていた
「太郎ちゃん あがって!」
「おぅ!」
「小太郎くん いらっしゃい」
「晶ちゃんの母ちゃん 来たぞ!」
これが小太郎の挨拶…
「晶ちゃん明日だね」
「楽しみだね」
小太郎と晶ちゃんが楽しみにしてるのは…
「隣の人はいますか?」
「は〜〜い」
「それでは出発します!」
「晶ちゃん海見た事あるの?」
「あるよ」
「いいなぁ」
「太郎ちゃん 初めて?」
「初めてだぞ!」
「んじゃ 楽しみだね」
小太郎も初めてではなかった
何度か父ちゃんの船を見送りに行った事があったのだが 小太郎はまだ小さく 港から見える海しか見た事がなかった
今日は 砂浜のある海へ行くのだ
2時間後 目的地に着いた
「おぉ!デケェ!」
どこまでも続く大海原
「いいですか!海には入らないように!わかりましたか?」
「は〜〜い」
「特に 太郎ちゃん!」
「先生 特別扱いすんなよ」
「…」
場所は 海浜公園
海に面して遊具もある
穏やかな波が 寄せては返す
海に入らない…
みんな 靴を脱ぎ 海に 足だけ浸けている
「先生!あそこ行っていいか?」
小太郎が言ってるのは 砂浜からちょっと離れた磯
「先生の目に届く範囲ならいいよ」
「やった〜!晶ちゃん行こう!」
磯に来た 小太郎と晶ちゃん
「おぉ!魚いっぱい居るぞ!」
「すご〜い!」
磯の窪みに 潮溜まりがいたるところにあり その中には 海の忘れ物のが沢山泳いでいた
「お〜〜い!みんな〜!こっち来て〜!」
小太郎の掛け声でみんな浜から磯へと移る
「スッゲー!」
「綺麗だね〜!」
「先生!ここなら入ってもいいか?」
小太郎は 膝まで潮溜まりに入った状態で 先生に確認する
「太郎ちゃん…すでに入ってるし…いいでしょ!ここならみんな入って遊んでもいいですよ!」
「ヤッター!」
「魚 獲るぞ!」
「私は 貝拾いする〜!」
残暑が残る九月
「先生!水の中に 栗 あるぞ!」
「栗?そんなわけないでしょ!」
「ほらっ!」
小太郎が見せたのは 雲丹
「太郎ちゃん それは 雲丹だよ」
「うに?」
「そう!お寿司屋さんで高いんだから」
先生 つい本音が出る…
「これ高いのか?いっぱいあるぞ!」
「太郎ちゃんどこ!!」
引率の先生達の目付きが変わる
「あ…あそこ…」
先生達は 雲丹獲りに…
「怖かった…」
小太郎の素直な感想…
先生なら知ってると思うが…密漁だぞ…
「デカイ魚居るぞ!」
「本当だ!」
「なんとかして獲れないかなぁ…」
小太郎は 頭をフル回転させる
遊びの事になると 天才的な発想をみせるのだ
「みんな〜!水を入れる物を探すぞ!」
「おぅ!」
砂浜に落ちている瓶 バケツを拾い磯に戻る
「これで この中の水を汲みあげるぞ!」
窪みの溜まり水を汲みあげようとしている
「ここにみんな並べ!」
ようはバケツリレーをしようとしているのだ
もちろん 小太郎はバケツリレーなんか知ってるわけがない
遊びの時だけ 天才になるのだ
バシャバシャ!
水がどんどん減っていく
「おぉ!水減ったぞ!みんな入るぞ!」
「おぉ〜!」
総大将の掛け声で 足軽達が溜まり水に入っていく
小太郎の獲物は 敵の総大将 溜まり水のヌシ
「やった〜!カニ獲った!」
「貝 こんなに採れた」
みんな 活き活きとした顔をしている
ただ1人 小太郎はまだ ヌシと闘っていた
「チクショ〜!こいつ すばしっこいぞ!」
すでに 小太郎は全身びしょ濡れ
「おっ!タコ!邪魔だ!」
小太郎はタコを鷲掴みにして投げる
「おぉ!タコだ!」
周りにいる 小太郎の足軽達が 総大将が投げる 獲物を拾っていく
雲丹を沢山獲って先生達が戻ってくる
「みんなどうしたの?」
夢中で応援してる子供達は先生に気づかない
「小太郎くん 後ろ!」
「太郎ちゃん そっち!」
「小太郎くん…!」
「太郎ちゃん…!」
小太郎 対 溜まり水のヌシ!
「太郎ちゃん 何してんの!」
もちろん小太郎にも先生の声など届かない
今 小太郎は オリンピック選手が決勝戦で戦っているような集中力を発揮しているのだ
「太郎ちゃん イケ〜!」
晶ちゃんでさえも先生に気づかず熱い声援を送っている
「そこだ!太郎ちゃん!」
「よ〜し!それっ!」
晶ちゃんの声援で小太郎は ヌシ目掛けて 必殺のダイブ!
バシャ!
水しぶきを上げる小太郎
起き上がった小太郎は ヌシを胸に抱えていた
「ヤッター!獲ったぞ〜!」
会場(磯)は大歓声に包まれる
「小太郎くん スゲー!」
「太郎ちゃん やったね!」
「全く…太郎ちゃんは…」
そう言う先生の手には 雲丹が沢山…
「隣の人はいますか〜?」
「は〜〜い」
小太郎はすでにぐっすり寝てた
「太郎ちゃん 着いたよ」
「ん…晶ちゃん おはよ」
疲れきっている小太郎
「太郎ちゃん 大丈夫?重くない?」
ズリズリ…ズリズリ…
「大丈夫…」
小太郎の手には ヌシを入れた袋
「母ちゃん…ただいま…」
「小太郎 楽しかった…何それ!」
小太郎は袋を引きずり歩き 底が破け そこからヌシの頭が…
「晶 楽しかった?」
「うん!太郎ちゃんがね こ〜〜んな大きな魚獲ったんだよ!」
「そうなのぉ さすが小太郎くんだね」
晶ちゃんは家に帰ってから その日あった事を楽しそうにお母さんに話した
「はぁ…どうすればいいのかしら…」
「そうだなぁ…」
晶ちゃんはいっぱい遊び 疲れて寝ている
「晶…悲しむだろうなぁ…」




