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小太郎の前世と小ちゃいおっちゃんの絆(戦時編)

そして時は代わり


ウゥ〜〜〜〜〜〜!

「またじゃ!」

時は昭和二十年

第二次世界大戦終戦間近


「逃げろ〜!」

ヒュ〜〜…ドッカ〜ン!

バババババ…

「愚かじゃ…何故同じ人間同士で殺し合うのじゃ…」

「父上…」

「小丸 わしらは大丈夫じゃ…」

この時 薄若丸こと 小ちゃいおっちゃんは結婚し 静という妻と 小丸と言う一人息子が居た

戦争により家を焼かれ おっちゃん達妖精は住む家を失くしていた

「静殿や小丸と こうして一緒に居られる事は嬉しいが…この状況 なんとかせねば…」


世界を巻き込んだ 地球史上最悪最大の戦争は 実に六年もの間続けられた


「薄様!」

「お主らも家なき子になってしまったのか…」

家から焼き出された妖精達は 若君である小ちゃいおっちゃんの元に集まって来ていたのだ


ヒュ〜〜〜〜…ドッカ〜ン!

おっちゃんは八百歳になろうとしていた


「さすがに腹が減ったのぉ…」

妖精はなんとか一年(人間の一年)くらいは 飲まず食わずでも居られるが かれこれ三年の月日が流れていた

「よし!背に腹はかえられぬ 明日 わしと小丸…後数名で食糧の調達に参るぞ!」

次から次へと集まる仲間達の為 小ちゃいおっちゃんが陣頭指揮を執り 自ら食料調達に乗り出す

「ここにも何もないか…」

「若!畑を発見しました!」

「ならぬ!人のものに手を出してはならぬぞ!」

「しかし…」

「ダメじゃ!人が居ればわしらは栄える 人を生かせば わしらが住むところも出来るのじゃ!先ずは 人 なのじゃ!」

「わかりました…」

「すまぬ…もう少しの辛抱じゃ…このような愚かな戦さ いつまでも続く訳がない…」

おっちゃん達はなんの収穫もなく みんなが待つところへ帰った…

「皆の者すまん…明日は山へ行って木の実でも探して来よう…」

そこへ

「ねぇねぇ 何してんの?」

おっちゃんが振り返る

「…お主ら わしらの事が見えるのか?」

そこには 小さい男の子と女の子

ちょこんと腰をおろして頬杖をついておっちゃん達をジッと見ている

(あきら)ちゃん何か居るの?」

「すごく小さい人がたくさん居る!」

「ん?そっちの男の子にはわしらが見えんのか?」

「太郎ちゃんはね 戦争で目が見えなくなったの…」

「なんと…」

「でも声は聞こえるぞ!」

「お主ら こんな夜中に何をしておる…父上や母上が心配しておるのではないか?」

「お父さんもお母さんも…」

小ちゃいおっちゃんは聞いた事を悔いた

今は戦争の真っ最中…

このような子供が沢山居たのだ

「それ以上申すでない…お主らは友達か?」

「違うよ!私達は双子の姉弟だよ」

「おぉ そうか 仲が良いのじゃな」

「うん…太郎ちゃんは私をかばって目が見えなくなったから…私が今度は太郎ちゃんを守るの」

「そうか お主らは偉いのぉ…」

それから太郎と晶ちゃんは毎日 おっちゃん達のところへ通うようになった

「こんにちは」

「おぉ 太郎殿 晶殿」

「今日は いいもの持って来たぞ!」

「はい これ!」

晶ちゃんが大事そうに持って来た包み紙を開くと

「おぉ!握り飯!どうしたのじゃ?」

「私達が居る 孤児院で昨日 久しぶりに白い御飯が出たんだよ!」

「それは良かったのぉ」

「おじちゃん達にあげるのに 太郎ちゃんと私の分 半分残して握って来たの!」

「お主ら…それはお主らが食べるのじゃ…」

「いいから食べてよ!とっても美味しいよ」

「そうだぞ!美味いから食べろ!」

二人の笑顔

「…すまぬ 皆の者!有り難くいただくのじゃぞ!」

小ちゃいおっちゃんは その笑顔に甘えた

そうしてやる事が二人の為だと思ったのだ

小ちゃいおっちゃんを始め妖精達は噛み締めて飯粒を食べた


「美味かっただろ!」

「今までで一番美味かったぞ!」

「でしょ〜!」

小ちゃいおっちゃん達はこの日食べた飯粒の味を忘れないだろう


数日後

「おじちゃん!」

「おぉ!晶殿 待っておったぞ!」

小ちゃいおっちゃん達は太郎と晶ちゃんが来るのを楽しみにしていた

「どうしたんだ?おっちゃんなんか楽しそうだな?」

太郎は目が見えなくなったが 雰囲気で場の空気がなんとなくわかるようになっていた

この日は 小ちゃいおっちゃんだけでなく 妖精達みんなが嬉しそうにしている

「太郎殿 お主の目が治るかもしれんぞ!」

「ん?」

「実は 昨日もまた家を亡くした者が来たのじゃが…紅!紅は居るか!」

「はっ!若!」

「この者は 治癒能力に長けてる者でな もしかすると太郎殿の目を治す事が出来るやもしれんぞ!」

これが妖精達が嬉しそうにしてた理由

「本当に!やったね太郎ちゃん!」

しかし…

「俺…このままでいい…」

「何故じゃ?」

「うん どうして?」

「俺…嫌だ…人が死んでいくのを見たくない…」

「太郎ちゃん…」

「太郎殿…よほど心に深い傷を負ったんじゃな…」


「ちょっと二人で話をさせてください」

「静殿…頼んじゃぞ」

小ちゃいおっちゃんは 太郎を静に任せた


「太郎ちゃん でいいですか?」

「いいぞ!」

「太郎ちゃんと晶ちゃんは優しい子ですね」

「なんで?」

「今のこの時代 自分の事しか考えない…考えられないが正解かな?それは仕方ない事 それなのに私共にあのような施しを出来るんですもの」

「だってみんな腹減ってたんだろ?」

静殿は何も言わず微笑む

「おばちゃん なんか可笑しいのか?」

「やっぱり…太郎ちゃんは見えない分感じる事に長けてるんですね」

「ん〜〜 なんとなく分かるって言うか…」

「太郎ちゃんはどうして目を治すのが嫌なの?」

「だって…目の前で死んで行く人をもう見たくないから…」

「そうか…」

「父ちゃんと母ちゃんは俺と晶ちゃんを守って…他にも沢山の人が…」


一年前…

ウゥ〜〜〜〜〜〜〜〜…


「来たぞ!晶 太郎 防空壕へ行くぞ!」

「えぇ!今 御飯食べ始めたとこなのに…」

「帰って来たら食べましょうね」

父ちゃんが太郎を 母ちゃんが晶を抱えて走る

ブルブルブルブル

「なんだ!今日はサイレンが鳴ってまだそれほど経ってないのにそこまで敵機が来てるぞ!」

バババババ…

上空から容赦無く鉄の雨が降ってくる

その雨は父ちゃんと母ちゃんにも…


「父ちゃん…苦しいよ…」

父ちゃんは太郎に覆い被さっていた

「もう…行ったな…」

「あぁ…苦しかった…あれ?母ちゃんと晶ちゃんは?」

太郎が晶ちゃんと母ちゃんを探す

「太郎ちゃん…」

「晶ちゃん 居た!母ちゃんは?」

「お母さんは…」

「晶ちゃん なんで泣いてんの?」

晶ちゃんの涙に気付いた時

「太郎…」

父ちゃんの微かな声が聞こえた

「父ちゃん なんで立たないの?もう敵行ったぞ!」

「太郎…晶…これからは二人で力を合わせて生きて行くんだ…わかったか?」

「何言ってんだ父ちゃ…」

父ちゃんの言葉がどう言う意味か太郎も気付いた

「太郎…晶…」

「父ちゃ〜〜〜〜〜ん!」

父ちゃんはもう何も喋らなかった


「そうですか…それは辛かったですね…こんな幼子が二人で…」

「でも…俺には晶ちゃんが居る…一人ぼっちになったのもいっぱい居るんだぞ…」

「目はどうしたのですか?」

「晶ちゃんを助けようと爆風で…でも これでいいんだ…もう…」

拳を力いっぱい握る太郎

「…うちの人の口癖が こんな愚かな戦さはいつまでも続かない です…私もそう思いますよ」

「そうなの?」

「はい もうじきこの戦さは終わるでしょう」

「そっか…良かった…」

安心したように 握りしめた拳の力を緩めた

「太郎ちゃんはその時 平和になった日本を見たいとは思わないの?」

「…見たい」

「なら 治そうか」

「うん…」

「太郎ちゃんはいい子だね」

「晶ちゃんもいい子だよ!」

「そうだね!だから私達が見えるんだから」

静殿は放って置く事が出来なかった

太郎と晶ちゃんはまだ四歳

とても優しく素直な子供


「おまえさん」

「静殿どうじゃ?」

「俺の目…治してください」

太郎が頭を下げる

「おぉ!そうか!治すか!そうかそうか!」

「太郎ちゃんの事よろしくお願いします」

「晶殿大丈夫じゃよ 紅!診てやってくれ」

「はい!太郎様失礼します」

紅が太郎の目に触れる

「どうじゃ?」

「時間がかかると思いますけど 大丈夫です!」

「やったぁ!紅 あっしらにも出来る事が有ったらなんでも言ってくれ!」

妖精達は自分の事のように喜んだ


「今日も太郎ちゃんをお願いします」

太郎と晶ちゃんは毎日 治療に来た

「紅さん お願いします」

「任せてください」

紅は太郎の目に手をあてる

ブォ〜ン

紅の手から光が溢れる

「紅さんは姉ちゃんなのか?」

「そうですよ 私は女ですよ」

「じゃあ 紅姉ちゃんだ!」

「紅でいいですよ」

「ダメだよ!歳上を呼び捨てにしちゃダメなんだぞ!」

「わかりました 太郎様の好きなように呼んでください」

「太郎ちゃんでいいよ!」

「そんな…」

「いいんだよ!偉そうなおっちゃん!近くに居る?」

「偉そうなって…わしか?」

「そう!みんなに言って!俺は太郎ちゃんだって!」

「私は晶ちゃんでいいよ!」

「皆の者!そう言う事じゃ!」

「太郎ちゃん」「晶ちゃん」

「おぅ!」「はい!」

妖精達の間では 太郎と晶ちゃんは大人気だった


「ん?みんな!早く!また空襲がなるぞ!」

「何も聞こえんぞ?」

「太郎ちゃんは聞こえるの!遠くの飛行機の音が!」

太郎は視力を失ってから聴力が良くなっていた

「おじちゃん達 俺達に掴まれ!」

小ちゃいおっちゃん達が太郎と晶ちゃんに掴まる

「太郎ちゃん大丈夫?行くよ」

晶ちゃんが太郎の手を取り駆け出す


ウゥ〜〜〜〜〜〜!


「ほら来た!晶ちゃん急いで大丈夫だよ!」

「太郎ちゃん大丈夫?」

「ぼんやりだけど見えるから大丈夫!」

「わかった!」

バババババ…

間一髪で防空壕に逃げ込む


「おっちゃん もうすぐ戦争終わるんだろ?」

「終わる…必ず終わる!」

「そうか…良かった おっちゃん達戦争終わったら一緒に暮らそうな!」

「お主ら 身内は?父上や母上の兄弟とかは居らんのか?」

「遠くに居るって聞いた事あるけど…わかんない」

「そうか…」

「それに会ってもわからないし…」

「そうじゃな みんなで暮らそうな!」

おっちゃんは 太郎と晶ちゃんを安心させる為に そう言った


「今日は遅いのぉ…」

「若 見えました!」

「おぉ 来おったか!」

毎日 太郎と晶ちゃんをおっちゃん達は待つようになっていた


「太郎殿 目はどうじゃ?」

「うん ぼんやりだけど風景とかならもう見えるぞ」

「そうか それは良かったのぉ」

「もうちょっとでおっちゃん達の事も見えるようになるかなぁ?」

「この紅にお任せください!必ず 太郎ちゃんが私達を見えるようにしてあげますよ」

「うん!自分の目で見たいから晶ちゃんに聞いてないんだ!みんなの事」

「じゃあ 急いで治さないとですね」

「うん 紅姉ちゃんよろしく!」

太郎に笑顔と光が戻りつつあった

もちろん晶ちゃんにも


「どうですか?」

「ん〜…はっきりはまだかな…でも おっちゃんの位置ならわかるぞ!」

「おぉ!わしの事はわかるか!」

「わかる!光ってるから!」

「……」

頭だな…

「おっちゃん!」

「なんじゃ?」

「俺 目が見えるようになったらいっぱい勉強するんだ!」

「太郎殿は偉いのぉ」

「晶ちゃんも偉いぞ!」

「そうじゃな」

「俺は勉強して立派になって総理大臣になるんだ!」

「ほう それはまたデカイ夢じゃな!」

「そして…戦争のない平和な世の中にするんだ!」

「そうか!太郎殿ならきっとなれるじゃろう!」

「デ〜〜〜ッカイ家建てて おっちゃん達と一緒に暮らすんだ!」

「それは楽しみじゃ!」

小さい太郎の夢

しかし おっちゃんは 太郎ならなれると信じた


「晶ちゃんは何になりたいのかなぁ?」

「静おばさん 私はねぇ お医者さん!」

「あら〜 晶ちゃんはお医者さんかぁ」

「うん お医者さんになって紅お姉ちゃんみたいになるの」

「そうですかぁ 二人共とっても立派ですよ」

妖精達は 太郎と晶ちゃんに一筋の光を見たのだった


「お〜〜い!」

「おぉ〜〜!」

今日も太郎と晶ちゃんが来たのだが…

いつもは晶ちゃんに手を繋がれてくる太郎が 一人で駆けて来たのだ


「どう?スゴイでしょ!」

「太郎殿!スゴイ!スゴイぞ!」

「もう周りの景色はだいたい見えるようになったんだぞ!もうちょっとでおっちゃんの頭以外もみんなの事も見えるようになるんだ」

「太郎殿…何故わしの頭以外なんじゃ…」

「晶ちゃんに聞いたぞ!光ってるのはおっちゃんの頭だって!」

「晶殿…」

「ごめんなさ〜い」

「晶ちゃん 謝る事はないですよ!真実なんですから!」

「静殿…」

「ワッハハハハ」

「お主らまで…」

今は戦争の真っ只中

しかし ここにはいつでも笑いが溢れていた


「はい 今日はここまで」

「ありがとう!紅姉ちゃん」

「後 三日もあれば完治すると思いますよ」

「本当か!やったー!」

「良く頑張りましたね 辛くなかったですか?」

「ちっとも!みんなの事を早く見たいなぁ」


昭和二十年八月一日

終戦まで後 二週間


「若!」

「おぉ!時来也!お主もか…」

「一週間前の空襲で…」

「そうか…それは大変であったのぉ…」

「後 三週間だったのですが…」

「おぉ お主は 時 が見えるのであったな!って事は後 二週間で この愚かな戦さは終わると申すのか?」

「ハッ!多大な犠牲を出してこの国は負けます」

「なんと…負けてしまうのか…それも多大な犠牲を出すと申すか…」

「…間違いありません」


「おっちゃ〜ん!」

「来おったな!太郎殿〜!晶殿〜!」

「若 この者共は?」

「おぉ 時来也は初めてじゃな!わしらの希望の光じゃよ!」

「そうですか…これは驚いた 我々を見える者がこの時代に居るとは…」


「太郎ちゃん それでは始めますよ」

「紅姉ちゃん よろしく!」

笑顔の太郎と晶ちゃん

「何をしてるんですか?」

「太郎殿の目を治しておるんじゃよ」

「目を…ですか?」

「うむ…太郎殿はこの戦さで光を失ってのぉ こうして毎日 紅が治癒してやってるんじゃよ」

「……そうですか」

時来也は 時 が見える


「もういいですよ 目を開けて」

「紅姉ちゃんありがとう!あっ 晶ちゃん!あれ」

「そうだった!はい これみんなで食べて!」

「お主ら またそのような事を…」

晶ちゃんがニコニコして出したのは握り飯

「ほら みんな食え!」

「太郎殿…晶殿…かたじけない…」

「遠慮しないで!毎日 太郎ちゃんの目を治してくれてる治療代!」

小ちゃいおっちゃん達にとっては 太郎と晶ちゃんの笑顔が何よりのご馳走

「美味いか?」

「美味い!美味いぞ!」

「良かった!」

妖精達は明るく振る舞う太郎と晶ちゃんに 涙を見せまいと嬉し涙を堪えて食べた


「どうじゃ時来也 いい子達じゃろ」

「そうですね…若…」

「どうした?」

「いえ…」

「守る家を失くしたあの者達の顔を見てみい 太郎殿と晶殿が来ると皆笑顔になるのじゃ」


そして太郎の 目 の治療最終日


「ドキドキするなぁ」

「今日で最後ですよ これが終わって目を開けると私達が見えると思いますよ」

「楽しみだなぁ〜!」

「それでは始めますよ」

ブォ〜〜〜〜…


「皆の者…よいか!太郎殿が目を開ける時整列するのじゃぞ!」

「了解です!」

その時をみんなが楽しみにしている

「シ〜〜!太郎殿に聞こえるじゃろ!」

「おっちゃんが一番前に居るのか?」

「ほら〜 聞こえてしもうた…」

「おっちゃんの声しか聞こえなかったぞ!」

「そ…そうか…」


太郎の治療を頬杖ついてニコニコして見てる晶ちゃんの肩や頭に妖精達が乗っかっている

「紅やまだか?」

「お待ちください もう少しです」

みんなが笑顔で太郎の治療が終わるのを待っていた

「紅…」

「まだです!もう…しつこい…」

妖精界の若君に暴言を吐き

「ん?何か言ったか…」

「いえ 何も」

惚ける紅

「そうか?まだかなまだかなぁ〜」

「おまえさん 紅さんが集中出来ませんよ」

そして 静に叱られる妖精界の若君

「……」

言葉には出さないが みんなが小ちゃいおっちゃんと同じ気持ちだった

「後ちょっと…」

その時

「ん!来る!」

「どうした?太郎殿」

「みんな!俺達に掴まって!空襲だ!」

「なんと!皆の者 太郎殿と晶殿に掴まらせてもらうのじゃ!」

「太郎ちゃん!行くよ!」

「おぅ 晶ちゃん俺は大丈夫!最初に行って!」

「わかった!」

晶ちゃんが駆け出す

「紅姉ちゃん!他に掴まってないの居ない?」

「太郎ちゃん 大丈夫です!」

太郎も晶ちゃんを追って走る


ウゥ〜〜〜〜〜〜〜〜

けたたましくサイレンが鳴る

ブルブルブルブル…

「もう来た!太郎ちゃん 早く!」

「晶ちゃん!大丈夫だから走れ!」

バババババ…

「くそ!こんな戦争…早く終われ〜!」

晶ちゃんが防空壕に滑り込む

「太郎ちゃん早く!」

「あっ!」

太郎がつまづき転んだ

「太郎ちゃん!」

「晶殿!出てはいかん!」

小ちゃいおっちゃんが止めるが…晶ちゃんは鉄の雨の中に飛び出していた

バババババ…

「くっ!時来也!」

「ハッ!」

時来也が時を止める

「皆の者!鉄の雨を払うのじゃ!」

「おぅ!」

妖精達は降り注ぐ鉄の雨を各々が持つ能力で一つ一つ叩き落とす

「早く!止められる時間がもう…」

「時来也!頑張るのじゃ!皆の者 急げ!太郎殿と晶殿を守るのじゃ!」

ボトッ ボトッ ……

全ての鉄の雨を払い落とした


「紅!」

「他の者は晶殿を太郎殿の近くへ!早くするのじゃ!」

太郎と晶ちゃんは 時が止まる前に鉄の雨を…

紅は太郎と晶ちゃんの治療にかかっていた

「わしも手伝うぞ!他にも治癒力が有る者は紅に力を貸すのじゃ!」

「おぅ!」

「晶ちゃん…」

太郎が晶ちゃんを探している

「太郎殿 晶殿はこっちに居るぞ!」

「太郎ちゃん…」

晶ちゃんも太郎を探す

「晶ちゃん…ごめんね…」

「何で謝るの…」

「俺が転ばなかったら…」

「二人共…喋るでない…」

「あっ…おっちゃん…見えるぞ…」

「そうか…」

「やっぱり俺が思った通りだ…」

「禿げてるじゃろ…太郎殿も晶殿も…元気になったら…触らせてやる…じゃからもう喋るでない…」

「静おばさん…」

「晶ちゃん…ここに居ますよ」

「静おばさん…ありがとう…太郎ちゃん…目が見えたって…紅お姉さん…ありがとう…」

「晶ちゃん…お医者さんになるんでしょ?…もう喋らないで…」

「太郎殿も…総理大臣になって…戦争のない平和な世にするのじゃろ…」

「おっちゃん達と一緒にいれて…楽しかった…」

「私も…」

「うん…うん…わしらもじゃ…じゃからもう喋るでない…皆の者!全力を尽くすのじゃ!」

妖精達は自分の持つ能力を全て出した

「若様…」

紅が首を横に振る

「太郎殿…総理大臣になるんじゃろ…晶殿は立派な医者になるんじゃろ…そうじゃ…わし…腹が減ったのぉ…握り飯が食いたいのぉ…のぉ晶殿…もう一度作ってはくれぬか…太郎殿からも頼んではくれぬか…目を開けてくれ…太郎殿…晶殿…もう一度…笑顔を見せておくれ…」

小ちゃいおっちゃんは なおも治療をやめようとしない

「おまえさん…」

「うぉ〜〜〜〜〜〜〜……」

響き渡る小ちゃいおっちゃんの声

ブルブルブルブル

敵機がなおも攻撃して来る

「何故なんじゃ…なんの為に争う…欲を捨てよ…欲は何も生まん事をわからぬのか…」

バババババ…

「キェーーーーーーーー!」

ボトボト…

小ちゃいおっちゃんの一声で 鉄の雨が全て落とされた


そして今から数年前


『若 お久しぶりです』

「おぉ お主は 黄泉 久しぶりじゃのぉ」

『若 とうとうですよ』

「ん?何がじゃ?」

『若が以前話していた あの少年と少女が 同時期に輪廻転生されます!』

黄泉の能力は 霊能力

「なんと!それは誠か!」

『はい まず間違いないでしょう』

「そうか…今世では幸せになって欲しいのぉ いや彼奴らならきっと幸せになるはずじゃ 黄泉や教えてくれてありがとう」

『若 聞かないのですか?』

「何をじゃ?」

『どこに誕生するのか』

「どこでもよい どこでも彼奴らが幸せになるのなら…もしや…」

この頃 小太郎の母ちゃんは身籠っていた

『そうです 少年の方は若が守家している そこに届けられます』

「なんと…そうであったか…太郎殿 いや名は変わるかもしれんが…早よう会いたいのぉ…」


これが小太郎と小ちゃいおっちゃんの深い絆






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