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おっちゃんの家族

「小太郎殿…小太郎殿…」

スゥ〜…スゥ〜…

「小太郎殿…小太郎殿…」

スゥ〜…

「小太郎殿!」

「うわぁ!地震か!」

「小太郎殿!」

「ん?誰だ?…」

「わしじゃ!」

「なんだよ〜 おっちゃんかよ…」

「すまん…小太郎殿 頼みがあるんじゃ」

深刻な顔をしている小ちゃいおっちゃんに気付く小太郎

「どうした?」

「わしを明日 晶殿の所に連れて行ってはくれぬか?」

「晶ちゃん家に?」

「そうじゃ…申し訳ないがお頼申す…」

「別にいいぞ!」

「おぉ〜!そうか かたじけない…」

「どうした?おっちゃん…」

「…明日 頼んだぞ」

「今 何時だ?」

「まだ 二時じゃ!いい子は寝てる時間じゃ」

「…起こしたんだろ」

次の日

「ふぁ〜……」

「太郎ちゃん 寝不足?」

「昨日 おっちゃんに起こされて…」

「おっちゃんって…あの?」

「そう…あの…あっ!晶ちゃん 今日おっちゃん連れて行くから」

「そうなの?」

「うん…それを頼むのに起こされた…いつものおっちゃんじゃなかったんだよなぁ…」

学校が終わり 家に帰る小太郎

「母ちゃん!ただいま!…ん?居ないのか?」

「小太郎殿」

「おっちゃん 行くか?」

「かたじけないがよろしく頼む」

ピョ〜ン!

小ちゃいおっちゃんが小太郎の肩に乗る

晶ちゃん家までの道のり 話好きの小ちゃいおっちゃんが黙っていた


「晶ちゃ〜〜ん!」

「太郎ちゃん あがって!」

「おっちゃん!ここが晶ちゃん家だぞ!」

「小太郎殿すまん…晶殿!わしの(せがれ)は何処におるのかのぉ」

「ウチの 可愛い妖精さんなら ここだよ!」

晶ちゃんが机の一番下の引き出しを引くと

「おぉ!」

引き出しの中には いろいろな家具が揃っていた

「私が小さい時買って貰ったお人形さんの家具入れてあげたの」

小ちゃいおっちゃんの子供はアイマスクをして仮眠中だった…

「倅よ!」

スゥ〜…スゥ〜…

「倅〜!起きろ〜!」

「ん?…あっ!父上!」

小ちゃいおっちゃんとは似ても似つかない現代っぽい妖精

「へぇ〜!これが晶ちゃんとこの妖精かぁ!」

「可愛いじゃろ!わしに似て!」

まじまじと小ちゃいおっちゃんを見る小太郎

「はぁ〜〜…」

「なんじゃ…そのため息は…ため息が出るほど可愛いって事じゃろ?」

「その頭で?」

「この頭がポイントじゃ!産まれたての赤子みたいで可愛いじゃろ…キィーーーー!誰が産まれたての赤子みたいな頭じゃ!」

やっぱり賑やかな小ちゃいおっちゃん

「自分で言ったんだろ…」

「すまん…そうじゃった…」

「ところで おっちゃん…何しに来たんだ?」

「あっ…そうじゃった…小太郎殿が余計な事を申すから…」

「俺…なんか言ったか?」


「倅よ…昨日 お主の母上が なくなった…」

衝撃の告白…

「…そうですか」

「え?おっちゃんの息子の母ちゃんって事は…おっちゃんの奥さんか?」

「そうじゃ…」

「そんなぁ…」

「晶殿…泣いてくれるのか…」

「だって…」

晶ちゃんの目からとめどなく涙が溢れる

「父上…」

「小太郎殿!晶殿!すまぬが倅を母上が居たところへ連れて行ってやりたいんじゃ…運んではくれぬか…」

「もちろん…」

「おっちゃん…肩に乗れ」

「すまぬ…」

道中 重苦しい雰囲気が…

晶ちゃんはまだ泣いている

「おっちゃん 何処だ?」

「すぐ近くじゃ…そこを右に曲がって…そっちは左!逆じゃ!」

自慢じゃないが 小太郎は100%の確率で左右を間違う

「ん?こっちか!」

「それだと真っ直ぐになるじゃろ!」

「だって逆って言うから…」

「普通 逆って言ったら真後ろを向くじゃろ!お主は左を向いて右を見ただけ!そうしたら来た道を真っ直ぐになるじゃろ!」

「ややこしいぞ!」

「晶殿…」

「うん…私が先に歩く ここ右ね」

晶ちゃんが先頭を歩くことに

「ここじゃ…」

「ここって…」

小太郎達が来たのは昨日 家が解体され空き地になった場所

「おっちゃんの奥さんってここに居たのか?」

「ここには 昨日まで家があったじゃろ わしの家内は その家の妖精じゃったんじゃ」

「そうなんだ…妖精って なくなるとどうなるの?」

「消えてしまうんじゃ…」

「……」

「晶殿…」

晶ちゃんは涙が止まらない

「晶ちゃん…」

小太郎も涙が溢れてくる

「お主達…」

「おっちゃん…元気出せな…」

「…お主達にわしらの姿が見えるのは こう言う事なんじゃな…おぉ そうじゃ 特別に家内の写真を見せてやろぉ!」

小ちゃいおっちゃんが首にぶら下がっているロケットを開く

「どうじゃ!綺麗じゃろ!」

「……」

小ちゃいおっちゃんの食事は 飯粒一つで腹一杯になる…

そのおっちゃんの首にぶら下がっているロケットを開かれても…

さすがの小太郎も今日だけはツッコまなかった

「あやつは気立てのいいやつでなぁ…」

「おっちゃん 一緒に暮らした事あるのか?」

「わしらはな お主らで言う結婚というものをしたら 1年間は一緒に暮らすのじゃ」

「へぇ〜 そうなのか」

「その一年で倅が産まれたのじゃ」

「たったの一年なの…」

「わしらの一年はお主らで言う百年じゃ」

「えぇ!そうなの!」

「一年が百年…おっちゃん何歳だ?」

「わしか わしは八歳じゃ!」

「八歳…八百歳!」

「正確に言うとお主らの年でいう八五四歳じゃ」

「八五四歳…スゲェなおっちゃん!」

「倅は三三七歳じゃ!」

「えっ?そうなの?」

「そうだよ」

「そうだよ じゃなく そうじゃ!って言うんじゃ!まだまだ言葉の使い方がなっておらんなぁ」

「すいません…父上…」

「まだまだ子供じゃのぉ」

「だって僕まだ子供だから…」

「僕?そこは わし じゃろ!」

「やめて!気持ち悪い!」

「気持ち悪いって…晶殿はずっとわしをそう思っておったのか…」

ガクッ…と肩を落とす小ちゃいおっちゃん


「おっちゃん…泣き虫なわりに泣かないんだな…」

「ん?どういう意味じゃ?」

「いや…いつもは甲高い声で泣くのに 奥さんが消えちゃったのに…」

「小太郎殿は褒め上手じゃなぁ!」

やっぱり高い声は褒め言葉なんだな…

「家内なら大丈夫だ!今度ここに新しい家が建つんじゃが そしたら復活するのじゃ!」

「え?」

「どういう事だ?」

「父上 言ってなかったんですか?」

「聞かれてないからのぉ」

「ちょっと待って!復活するってどういう事なの!」

「じゃから 新しい家が建ったら またその家の妖精として復活するんじゃ!わしなんか十三回消えたぞ!驚いたか!ワッハッハ!」

「でもさっき 亡くなったって…」

「あぁ あれは 家内の居る家が無くなったと…あ…晶殿…ど…どうした…怖い顔して…」

「泣いて損した…もういい…怒る気力がなくなっちゃった…」

ホッ…

「…殺気を感じたわ…ん?小太郎殿はどうしたんじゃ?」

「おっちゃん 良かったなぁ…新しい家が建てば奥さんは復活するのか…」

小太郎は喜び 涙した

「でも 良かったね!私ん家の妖精さんのお母さんだもんね 復活するって聞いて安心した」

「わしらは 死なんからな!」

「そうなのか?」

「逆に人手不足ならぬ 妖精不足なんじゃ!最近じゃ マンションが一つ建てば その部屋分の妖精が必要になるからのぉ」

「へぇ〜!大変なんだな」


小太郎と小ちゃいおっちゃんは晶ちゃん達と別れて家に向かっていた

「しかし 今日は楽しかったのぉ 久しぶりに倅の顔も見れたし」

「そっか!良かったなおっちゃん!」

「小太郎殿 今日は助かった!すまんかったのぉ」

「気にするな!おっちゃんの事いろいろ知って俺も楽しかったぞ!」

ピピピ…

「おぉ 倅からじゃ!どうした?…そうじゃな…うん…おぉ そうか!…あ…うん…あき…う うん…おぉ わかった…うん…また 連絡するぞ…」

「おっちゃん 何一人で喋ってたんだ?」

「一人ではない…これ で喋っていたんじゃ!」

小ちゃいおっちゃんの手には 何かが握られている

「見えないけど…なんだそれ?」

「これはな 小太郎殿達が使っている 電話 というものと同じじゃ!」

「電話?おっちゃん いつでも 息子と話せるのか?」

「倅だけじゃないぞ!家内となんか毎日話しておる!」

「でも 消えたから復活するまでは話せないんだろ?」

「いや 話せるぞ!姿が消えただけで 話す事は出来るんじゃ!」

「…おっちゃん 昨日 寝てる俺を起こして…今日晶ちゃん家に行かなくても それ で伝える事出来たんじゃないのか?」

「そうじゃ!ってか 家内が倅に連絡すればすんだ事なんじゃが…せっかくの休暇 遊びに行くから連絡して!って言うもんじゃから わしが倅に言いに行ったんじゃぞ!」

尻に敷かれてるんだな…

「おっちゃん達って外に出ていいのか?」

「詳しく説明してやろう!基本 家から出てはいいのじゃ ただ 1人で外に出るのは危険がいっぱいなんじゃよ 一度 アリに捕らわれた時なんかは 逃げ出すのにひと苦労じゃった…だから わしの家族の家訓として 家内のように 家を建て替える時 その家の者と一緒でない時以外は家から出てはいかん とわしが決めたのじゃ!じゃが倅はまだ好奇心旺盛な子供…外に出ては罪となると教えてあるがのぉ」

「……」

小ちゃいおっちゃんが いつもと雰囲気が違ったのは…

外に出るのが久しぶりだったから緊張していただけだったみたいだな

「小太郎殿 もう一つ頼みがあるんじゃが…」

「なんだ?」

「わしも 倅みたいな部屋が欲しい…」

「そんな事か!いいぞ!」

「本当か!かたじけない!」

小ちゃいおっちゃんは喜んだ…のも束の間…

「おっちゃん!これでいいか!」

小太郎は晶ちゃんの真似をして

机の引き出しを一箇所空けて 小さい頃買って貰ったオモチャを敷き詰めて小ちゃいおっちゃんに提供してやったのだ

「小太郎殿…」

「遠慮なく使え!」

女の子のオモチャと男の子のオモチャの違い

神棚の方が良かったと思う小ちゃいおっちゃんだった


それから数ヶ月が過ぎ

「おっちゃん居るか!」

ガチャガチャ…

「なんじゃ?」

小ちゃいおっちゃんは小太郎の机の引き出しにオモチャを敷き詰めて 部屋を提供されていた

「小太郎殿…体が痛い…」

「なんで?」

「多分…人形が原因かと…」


「あっ!おっちゃん 家 出来たぞ!」

「なんの家じゃ?」

「おっちゃんと見に行ったろ!おっちゃんの奥さんが居たとこの家だぞ」

「おぉ!そうか!とうとう出来たか!」

「見に行くぞ!」

「何をじゃ?」

「おっちゃんの奥さんだろ!」

「じゃが…」

「会いたくないのか?なら俺と晶ちゃんとで見に行くけど…」

「…会いたい」

小声のおっちゃん

「ん?何か言ったか?」

「…会いたい」

「んじゃ 行ってくるぞ!」

「会いたい!わしも連れて行ってくれ!」

「でも…家訓とかってのがあるんだろ?」

「あるが…あっ!そうじゃ!わしが作った家訓は 一人で外出せぬ事じゃ!小太郎殿と一緒ならよいのじゃ!」

「なら 晶ちゃんとこのおっちゃんの息子も晶ちゃんと一緒なら出掛けてもいいのか?」

「もちろんじゃ!早く連れて行ってくれ!」

小太郎はこの言葉を待っていた

「だって!」

ガラッ

「父上!」

晶ちゃんと晶ちゃんとこの妖精が入ってくる

「おぉ!小丸!」

「小丸?」

「僕の名前だよ」

「えぇ!名前有るの!」

「もちろん有るじゃろ!」

「おっちゃんはなんて言うんだ?」

「………わしはよい」

「へぇ〜小丸ちゃんか〜可愛い〜!」

「わしがつけたんじゃ!可愛いじゃろ!」

「おっちゃんは何て言うんだ?」

「…早よ行こう!」

頑なに名前を隠すおっちゃん


小太郎達はおっちゃんの奥さんの新居に向かった

「じゃがどうするのじゃ?」

「何が?」

「小太郎殿でも面識はないのじゃろ?その家の者と」

「ピンポン鳴らして おっちゃんの奥さん見して!って言えばいいだろ?」

どこまでも真っ直ぐな小太郎…

「それは無理じゃろ…小太郎殿や晶殿のように見える者ならまだしも…」

「小丸ちゃんが呼べば出て来るんじゃない?」

小太郎達が到着する

「小丸ちゃん お母さんのこと呼んで」

「母上〜!」

なんの応答もない…

「居ないのか?」

「いや 居る!小丸は声が小さいのじゃ!わしが呼んでみよう!」

スゥ〜〜〜〜〜〜!

「静殿〜〜〜〜!」

ビリビリ!

「うわぁ!」

小太郎と晶ちゃんの耳は…キーーーーン


ヒョコッ

新居の出窓から顔を出す

「ほら居った!」

「母上!」

そこから顔を出した妖精は とても美しい女神のような妖精

「まだ頭がガンガンする…」

「すまん…」

小太郎達はおっちゃんの奥さんも連れて公園に来ていた

「いつも主人と小丸がお世話になっております」

「小丸ちゃん…良かったね…お母さん似で…」

小丸は 母親に似て可愛いらしい妖精なのだ

「晶殿 よ〜く見るのじゃ!わしに似てるとこもあるじゃろ?」

「ない!」

「そんな即答せず…よ〜く見るのじゃ…」

「ない!」

「ヒント!眉の上…」

「似てない!」

「……」


「おっちゃんの家族はこれだけか?」

「そうじゃ!これがわしの自慢の家族じゃ!」

小ちゃいおっちゃんが胸を張る

「おまえさん…この子らは…」

「うむ…間違いないじゃろう」

「そうですか」

「どうした?何か嬉しい事でもあったのか?」

おっちゃん達は笑顔で小太郎と晶ちゃんを見ていた

戦時中 あの姉弟を知ってる小ちゃいおっちゃんの奥さん 静

「この歳で私達が見えるなんて さすがですね」

あの時の事を思い出していた


「晶殿 頼みがあるのじゃが」

「何?」

「わしらに握り飯を作ってはくれぬか?」

「おにぎり?いいけど…御飯粒で作るの?」

「いや 普通にお主達が食べる握り飯の大きさでよいのじゃ」

「普通のおにぎり?食べきれる?」

「大丈夫じゃ!わしらだけじゃないでのぉ」

「?」

「おっちゃん達以外にも誰か居るのか?」

「晶殿すまぬが1週間後に作ってはくれぬか?」

「いいよ!」

快く引き受ける晶ちゃん

「おまえさん」

「うむ!」

「小太郎さん 晶さん…」

「俺の事は 太郎ちゃんでいいぞ!おっちゃんの家族なら!」

「私も 晶ちゃんでいいよ!」

自然と涙が溢れる小ちゃいおっちゃん達

「どうしたんだ?」

「いや…静殿…泣くでない…」

「えっ!おっちゃんの奥さんは静ってのか?」

「ん?さっき わしが叫んだじゃろ!」

「甲高くて聞こえなかった…」

「また…そうやって褒めおる…」

何故か照れるおっちゃん…


「太郎ちゃん…晶ちゃん…」

「おぅ!」「うん!」

微笑む静


「小太郎殿!晶殿!耳を塞ぐのじゃ!」

「なんで?」

「仲間を呼ぶのじゃ!」

「仲間?おっちゃんの仲間か?」

「そうじゃ!良いか!耳を塞ぐのじゃ!…ぬぉぉぁぁ…」

「ちょ!」

慌てて耳を塞ぐ小太郎と晶ちゃん

顔と頭頂部を真っ赤にして 気 を溜めるおっちゃん

「キェーーーーーーーーーーーーーーーー!!」

グラグラ……

地球が一瞬揺れた…























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