私の大切だった人 ーside アヤメー
閑話
アヤメの過去
これは悲しい物語ではない
私には前世の記憶が、あった
一般の人とは少し違うという家に生まれた事を
私は嬉しくも寂しくもなかった
そんな一般とは少し違う家の
3番目の子供として生まれた私には
兄が2人、そして翌年には妹に恵まれた
私は生まれてから両親から忙しいという理由で
幼少の頃は、どちらかと言えば兄や
母の祖母と居る時の方が多かった
母の祖母が私は少し苦手だったけれど
仕方ないと割り切りながら‥諦めたのだ
でも家の出来事は辛くなかった
1番に辛かったのは学校で避けられていた事だろう
これが思っているより辛くて
友達と呼べたのは片手で数えれるぐらいだった
中学に上がってイジメを受けて
私の人生を此処で終わらせようか、とも考えた
大切だった友達という存在に裏切られた私は
友達を作る事すら嫌になりつつ
何とか3年耐えて、高校は中学の皆が
誰も通わない私立の商業科にと来た
やはり避けられて1人ぼっちになりやすい体質なのか
私にはクラスで友達になってくれるような
優しい人は居なく遂に文化祭まで来ていた
もう1人で食堂で、ゆっくりしよう
そう思っていた時、同じクラスだという
優しい人達に出会った
そう、私と彼女"達"の出会いは此処だった
私が1番に信頼し大好きな彼女との運命の出会いが
高校の時の文化祭だったのだ
高校の頃は彼女とは
他の友達と居る事が多く4人なので歩くときは
2人1組なのだが彼女とは一緒に話すことは少なかった
彼女は4姉妹で私と同じような悩みを持っていて
良く"きょうだい"で起こる出来事で
共感する事が多かった
そんな彼女が凄い大好きだった
優しいし周りを良く見ていたし
頼りにもなるし怒る事も少なかった彼女
2人で話した時に彼女は自分にも
暗い過去があり小・中と
虐められていたのだと語ってくれた
血液型も同じで私よりヲタクだった彼女に
私も私自身の秘密を教えた
ーーそれが腐女子である事である
高校2年の後半ぐらいから
彼女とは食堂で共にご飯を食べる事が多く
優しい彼女は私の話を優しく聴いてくれた
そんな彼女とは卒業してからも
ずっと一緒で時々だが一緒に遊ぶ事もあった
他の人とも遊ぶし楽しいとも感じるのだが
彼女と遊ぶ時は他の人とは違って特別だった
‥でも幸せは長く続かなかった
彼女が病気で入院したのだ
私は暇な時に何回かに一回は
彼女の病院に訪れていた
会いに行くと彼女は平気だよ、大丈夫だよ
良くなったら一緒に遊ぼう、って優しく笑う
本当に"嘘"が優しい人だった
彼女は1年もしないうちに亡くなってしまった
彼女の両親から送別式の便りが来ていたので
私は送別会の会場にと向かった
彼女の送別会場所は遠かったけれど
私は彼女の最後を見送りたくて行ったのだ
その時に彼女の両親からは
「ありがとう
色々と迷惑をかけてたでしょう?」と
優しく泣きながら言ってくれた
そんな彼女が亡くなる前に
私宛にと書いた手紙を受け取った
彼女の両親が言うには
「あの子がね、亡くなる前に
大切な友達に手紙を渡して欲しいって
絶対に読まないで!って言われたのよ
これ、貴女にね、読んであげて」
そう渡された手紙を開いた
書かれている手紙には
出会ってからずっと小さな嘘を
貴女についていて申し訳が無かったという事
彼女の過去、ずっと私の事を友達として
大好きだったという事が
便箋4枚ぐらいに書かれていた
文の最後には、ずっとありがとうと
生まれ変わっても、また友達になりたいと
そう書かれた手紙に思わず涙を流した
彼女が亡くなった時もボロボロと泣いたのに
再び彼女の手紙で泣かされるなんて‥
私は家に帰って
この手紙を自分の大切にしている小さな箱に入れた
彼女から誕生日に貰ったプレゼントも
一緒に入る物は一緒に入れて
彼女が亡くなってから数日間
ずっと、ぽっかりと穴が開いた感じだった
最後に彼女に会った時に
今、ハマっていてプレイしてみてと
勧められた"リコリスと花"をやる事にした
自分自身は数年間ぐらいアニメとか
離れていたけれど彼女が
最後に勧めてくれた、このゲームだけは
絶対に、やろうと思って
PC版も家庭用も全てクリアした
本当に面白くて
彼女が亡くなった数年後に出た続編もプレイした
私にとってリコ花が
彼女が居なくなり心に空いた穴を埋めてくれたのだ
そんな私は彼女が亡くなって数年後に
出会った優しい人と結婚し子供が出来た
私は生まれた子供に
彼女の名前の一文字と自分の一文字を使い名付けた
旦那は笑っていたが好きになってくれた時に
私が話していた事なので笑顔で許してくれた
最後は優しい旦那と大切な子供に囲まれて
そのまま目を閉じた
生まれ変わって彼女と出逢える事が
私が彼女が亡くなってから思っていた夢だった
ふと目を覚まし
自身の手の平を見れば小さく
生まれ変わったという事を知った
此処は?と思えば名を呼ばれた
"アヤメ"と
ーー此処は知っている
彼女が最後に勧めてくれたゲームの世界だから
私は驚いたが、もしかしたら
自分と同じような転生者も居るかもしれないと
思い自分が覚えている限りを
全てノートに描いた、勿論、絵も描いて
ノートには自分がプレイした
続編の内容とかキャラクターブックに
書いていた内容も私の覚えている範囲で書いた
そして自分がプレイして
こう感じたとか、こうだったという感想も含めて
そうして色々と書いていて
今の自分の年齢が6歳で主人公と会うのは
あと1年後だという事が分かった
ーーそして1年経ち彼女達と出逢う事となる
それがリコリスとサルビアである
彼女達は私と同じ転生者で
此処をプレイしていたが
続編が出る前に亡くなったらしい
特にリコリスは前世で
私が仲良くしていた彼女に良く似ていた
彼女に似ていたからこそ
私は彼女に協力しようとも思えた
きっとこれから
仲良くなれる気がする‥特にリコリスとは
勿論、サルビアも私にとって
大切な転生者仲間で友達には変わらないのだが
特別だと思うのは大切なのはリコリスだった
まるで亡くなった彼女のようなリコリスを
幸せにする事が私の夢になった
もしもリコリスが彼女だったら良いのにと
‥そんな叶わない夢を思いながら
私は彼女達に協力するのだった‥




