私の従兄妹殿 -side レナ-
私はフラルメイリー帝国の郊外にある
小さな町外れにまで訪れていた
目的は私の母の病気を
母の弟であるコウという人に伝える為だ
母の弟、私にとっては叔父さんになる人は
この小さな町外れで娘と2人で暮らしているらしい
母によると昔、王家に力を認められて
王都の守護をしており王家の姫君に
一目惚れされ婚姻をするも
身分違いなどの様々な理由で叔父さんが
王都から離れたらしく
姫君との間の子に出来た子供と
一緒に連れて逃げたのが、此処らしい
此処は元スピールト王国の町外れだった場所で
昔、スピールトと戦をして手に入れたけれど
フラルメイリーから離れすぎて
王都からも目の届かないような好物件的な場所だ
誰にも叔父さん達の事を言わないようにと
そう弱っている母に注意されて
向かった場所には誰もおらず
娘さんの通う学校にまで足を運ぶと
母と同じ色をした女の子を見つけた
彼女が母から聴いていた"リコリス"だろう
私が彼女に話しかけリコリスかと尋ねると
彼女は、そうだ、と答えた
私は幼い頃から母が好きだった
面影は母とは似てないけれど
髪と瞳は、まるで母と同じぐらい素敵だった
彼女と話をする為、食事をする為に
定食屋に赴いたのだが
生憎と人が多く待つと長いと
店員が申し訳なさそうに言うので
私は彼女に良ければ君の家で
簡単な料理でもいいと伝えると
彼女は私の言葉に甘えてか家に案内してくれた
彼女から出された料理は
私の口に合っており凄く美味しかった
母の味に少し似ている事から
彼女の料理は彼女の父、コウ叔父さんから
教わったのだろうと分かった
しかし肝心のコウ叔父さんは
家には居らず帰ってくるか?と尋ねると
彼女は悲しそうな顔で
しばらく帰って来ない事を伝えてくれた
コウ叔父さんが恋をした人であるアリシア姫は
魔物と同化してしまい救う方法が
伝承にも残っていないそうだ
アリシア姫は本来なら
魔物にはならないはずだったのだが
母から聴いた話ではアリシア姫は
双子だったらしく妹と入れ替わり
魔物と同化する印を押され絶望により
古に伝わりし"龍"と同化したらしい
人の姿を保てる時もあるそうだが
近い未来、アリシア姫は魔物の"龍"へと
変化してしまうそうだ
コウ叔父さんは彼女を救う方法を探しているのか
そう思いながら、ならば
叔父さんに帰ってきたら私の母の事を
伝えて欲しいと言伝を頼むと
彼女は快く受け入れてくれた
彼女の色は母と叔父さんと同じだし
私も好きな色だから
思わず母と似ている事を伝えると
彼女は少し嫌そうに
「私、この髪と瞳が嫌いなんです‥
しばらく帰って来ない、見向きもしない
そんな人と少しでも似てるの嫌なんです、私」と
キッパリと答えた
此処には居ない叔父さんと
似てる色がある事を嬉しいと思うのかと
私は考えていたのだが‥彼女は逆だったみたいだ
家に居る事が少ない人に似るのは嫌らしい彼女は
困った顔をしていた為、私も思わず謝る
彼女は許してくれたみたいだったが
‥そうか、少し違うのだな
私の父は‥彼女の叔父さんと
同じようにフラルメイリーから出ており
唯一、母が教えてくれた父と似てる顔立ちを
褒められると嬉しかったから彼女にも
同じように褒めたのだが‥女性は難しいものだ
もし母の容体が良くなった時にでも
女性の心について教わる事にしよう
そう心で思いながら
初めて会った従兄妹殿の事や
私の母について考えるのだった‥‥




