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強い心で一人の時を

 いつの時代だって、何もせずに部屋の中に閉じ籠もっているのは、ただ邪魔なだけの、必要のない存在に違いないことだろう。

 弥生時代でだって、僕みたいな奴の居場所はない。

 生活が苦しいはずなのだから、尚更だ。


 そうなのだろうけれど、僕の世界の中に、僕を非難する人こそ存在しないのだった。

 それがどういうことかといえば、完全に僕だけの場所であるということなのだ。


 多数決が最強なのだとしても、僕が負けることはない。

 なぜなら、その場所では、僕こそが絶対となるのだから。

 僕の作り出した世界、僕の作り出した人々、僕の考え方こそが「多数派」であるのだ。

 何をどうしても僕に間違えが生じるはずがない。


 閉じ籠もる部屋の中で、幻想の世界を夢見て、更なる深みへと嵌り込んでいく。

 部屋の中で、幻想の中へ、二重に閉じ籠もった僕と、外の世界との距離は開いていく。

 手を伸ばし合うことが可能な社会が訪れたとしても、手が届くことはないであろうほどに、距離は開いて行ってしまうのであった。


 遠い。遠い。

 だからどうした。


 震える声には強がりも含まれているのかもしれないけれど、それだって構わないのであった。

 たとえその言葉に嘘があっても、ただの虚栄心だったとしても、それだって構わないのであった。

 一瞬だけでも、形だけでも、強い僕が存在していることが重要であった。


「敵が攻めてきたのだから、早く戦う準備をしなさい」

 外から聞こえてくるのは、きっと母親とかという女性の声。

「就職なんて僕は無理だい。そうもつまらない、楽しいところなんてこれっぽちもないようなこと、いつまでも言っていないでおくれ。くだらない冗談よりも、僕は本とゲームがもらいたいよ」

 何度言っても理解しない、仕方のない人だから、毎度わざわざ僕は注文を伝えてやるのだ。


 いつもなら、それで安堵の息を吐いて、僕の望むものを貢いでくれるのだ。

 けれど今回ばかりはどこかが違っているようだった。

「ふざけるのも大概になさい!」

 面倒なことに、ヒステリックを起こしでもしたのだろう。


 この女性は、基本的には従順で、僕にものを貢いでくれるのだが、時々こういうことがあった。

 男であるというそれだけで、僕をむらの外へと追い出して、危険な戦場へ立たせようとするのだ。

 一見すると僕を崇めているようだが、結局は僕を利用しようという魂胆であることが、バレバレなのである。

 であるから、僕は、貢がれてもそう簡単に願いを叶えてやるわけにはいかなかった。


 単純で騙されやすい僕ではないというわけだ。

 ここは僕の普段からの居城であり、今、籠城を決め込んでいるのだ。



 僕は城を守ってみせる。自分を守ってみせる。

 僕はこの生活を守ってみせる!




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