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あなたは催眠術にかかりました。

作者: 某某
掲載日:2018/03/22

息抜きです。相も変わらず文章が酷いのなんの。

 幼馴染が家に来た。そのわけはと言えば単純で、ただただ田舎から届いたもののおすそ分け、というもの。

 俺は彼女のことが大好きだった。そしてきっと、彼女は俺のことなんて微塵も想ってくれていない。ただの幼馴染程度にしか思われていないだろう。

 つい先日俺たちは卒業式を迎え、この春から晴れて高校生だ。中学最後の日に、何とか彼女に告白しようと校舎裏に呼び出しをかけた俺だったが、結局勇気を振り絞ることができず、たどたどしく卒業おめでとう、としか言えなかった。

 だからこれはチャンスだった。進学先の違う俺たちは、四月からは別々の道を歩むことになる。例え家が隣でも、用がないので滅多に会うことはないだろう。

 これ幸いとすぐに帰ろうとする小さな背中を捕まえ、ちょっとくつろいでいけよと軽々しくも、内心勇気を振り絞って言い放ったのがつい数分前。


「なんか久しぶりだねー、こーして家の中入るの」


「そだなー、最近あんましゃべってなかったしなー」


 結局いつもと変わらなかった。

 意味もない、内容もない会話を延々と二人でくっちゃべる。違う、俺はこんなひと時を送りたいんじゃない。告白したいんだ。

 今は幸い母は買い物で出ており家には二人きりだ。これを逃せば次はない。

 (こいつ可愛いから、高校行ったら絶対モテるよなぁ・・・・・・)

 これが最後のラストチャンス。言え、言うんだ、俺!


「あー・・・・・・あの、さ」


「おー催眠術。すごいねぇ、ホントにかかるのかな」


 ・・・・・・声が小さくて届かなかった。

 それにしても、催眠術? 何の話だと彼女の目線の先を見やると、どうやらテレビ番組で話題が催眠術になっているようだった。


「ねー、ちょっと試してみよーよ」


「え?あ、ああ。そだな」


 つい、くせで彼女の発言を肯定してしまう。バカ。バカ俺。

 テレビでやっていた催眠術を試そうとする彼女。はしゃいでて可愛い。

 実験台は当然ながら俺で、やり方はこうだった。

 一、相手の顔を見る。ニ、両手を前に押し出す。三、押し出した手をくるくる回して正面に円を描く。

 そして最後に四、あなたは催眠術にかかりました。で手順は終了だ。あほらしい。子供だましにもならないじゃないか。

 それでも真剣そのものな表情で彼女は手順を追っていくのだから、最後まで付き合ってやりたい気持ちになった。


「・・・・・・あなたは催眠術にかかりましたっ!ど、どうっ?かかった?かかってたら『はい』って言って!」


 結果として俺は催眠術にかからなかった。が、やけにテンションが高く乗り気な彼女を見て、少しからかってやりたくなった。

 よし、かかったふりしよう。


「・・・・・・はい」


 表情は崩さず、さも人形がしゃべっているかのような無表情で言う。どうだ?まあ、流石にバレるか・・・・・・。


「か、かかった・・・・・・!?」

 

 はい、アホの子ー。

 どうしよう、終わらせるタイミング逃した。これで少しでも疑ってくれれば、じつは・・・・・・みたいなノリで終わらせられたのに。

 変に純粋に育ちやがって。人を疑うことを知れ、バカ。


「じゃ、じゃあ質問します!『はい』か『いいえ』。むずかしかったらちゃんと喋って答えてください!」


「・・・・・・はい」


 もういいや、適当に話し合わせよう。

 半分やけくそで、俺は最後までかかったふりを貫くことにした。


「まず最初。・・・・・・誰か、好きな人はいますか?」


「・・・・・・」


「あ、あれ?」


 答えられるかあああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!

 おい、待て、ふざけるな。そう簡単にそんなこと言えるわけないだろバカ!アホ!

 あー・・・・・・どーしよ。言っちゃう?言っちゃっていい?

 考えてる間に彼女は疑うような目で俺を見つめ始めた。今更だよ!

 ここでかかってないとバレれば「え!?騙してたの!?酷い!」なんて言われて、当分口を聞いてもらえなくなる。今から当分となると、もはや関係破綻にすらなりかねない。次に会うときには彼氏持ちになっているなんてことになりかねない。どうしよ、どうすればいいんだ!?・・・・・・ええい、もうどーにでもなーれ☆

 半分どころか完全にやけくそで、俺は答えた。


「はい。います」


 顔あっつい。恥ずかしい。

 俺が答えると、彼女は何故か寂しそうにため息をついた。


「・・・・・・そっかぁ。やっぱりいるんだねー・・・・・・」


 え?何、その反応。俺がお前のこと好きなの、お前知ってたの?

 知ったうえで野放しにされてたってことは、やっぱり脈無し?・・・・・・まじか。

 もう失恋ムードだ。苦しい。死にたい・・・・・・。


「あーあ・・・・・・。そっかぁ。やっぱり皆川さんのこと、好きなんだね・・・・・・」


 ・・・・・・は?

 おいおいおい、ちょっと待て。は?こいつ、今皆川のこと好きとか言った?は?え?俺が?ないないない。


「じゃあ、二つ目の質問ね。好きな人のこと、諦めて次の恋に移れそう?」


「・・・・・・いいえ」


 お前のこと、そう簡単に諦められるわけないじゃん。物心ついてすぐのころからずっと好きなんだぞ。ずっとヘタれて、告白出来てなかったんだぞ。

 そう続けられるわけもなく。またまた、彼女は間違った方向に解釈してしまう。


「・・・・・・そんなに好きなんだね。皆川さんのこと」


 違うってば!


「私の入れる隙、全然なさそうだなぁ・・・・・・」


 は?それって、どういう・・・・・・。

 聞き返す暇もなく、次のお題に移られる。


「じゃあさ、その・・・・・・私のこと、『好き』って、言って下さい」


「・・・・・・」


「あ、あれ?」


 またかよもおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!!

 無理!絶対無理!言えない!恥ずかしいわ!死んじゃう!羞恥心で死んじゃ・・・・・・て、え?

 俺が、お前に、『好き』って、言うの・・・・・・?

 え、どういう、こと・・・・・・?

 わけがわからず沈黙してしまう。


「な、何で言えないの?そんなに私のこと、異性として見られない?無意識でも、好きって言えない?」


 何故か急に涙目になって、彼女が捲し立て始める。


「お願い・・・・・・好きって、言ってほしい。例えあなたが他の子のこと好きでも、きっとその言葉で、諦められるから」


「・・・・・・」


「一回でも好きって言ってもらえれば、もうそれで満足だから・・・・・・お願い」


 もはやその懇願は、術者が、かけた相手に対して命令するときの口調などではなく。 

 ただただ、好きな人へのお願い。そんな、胸が苦しくなるような口調で。


「・・・・・・好きです」


 気づけば、自然にその言葉が口から出ていた。どうやら俺は、催眠術にかかってしまったらしい。


「・・・・・・え」


「大好きです。お前のことが、大好きです」


「え・・・・・・」


 俺の自意識過剰とかじゃなければ、俺たちは両思いなんだ、きっと。

 なのに、なぜかこいつは俺がクラスの皆川のことを好きだなんて思い込んでいる。

 まあ確かに可愛いとは思うし?こいつの前で可愛いって口走ったこともあったかもしれない。けど、全然こいつの方が可愛いし?皆川のこと可愛いって言ったのだって、最近女子とばっかり話して接点減ってたお前と共通の話題が欲しかっただけだし?・・・・・・まあ、それらはひとまず置いておいてだ。

 催眠術をかけてでも、俺の口から聞きたかった言葉を、こいつはずっとずっと待ち望んでいたのだ。

 なんで、もっと早く言ってやらなかったんだろう。なんで、自分の気持ちを早く告白しなかったんだろう。

 後悔の念に囚われていると、彼女が口を開いた。


「私も、大好きです・・・・・・」


 そう言って、彼女に抱きしめられる。

 反射的に、というのは(てい)のいい言い訳で。俺は彼女を抱きしめ返した。

 ふっと、息を呑む音がした。


「抱きしめてなんて命令してないのに、なぁ。催眠術のサービスかなぁ・・・・・・」


 なんだよそれ、ほんとバカだなお前。

 不意に、彼女の身体が俺の手から離れた。名残惜しくて、俺の手が宙をかく。ひょい、と避けられてしまった。小さい体で、すばしっこい。


「私、帰るね・・・・・・」


「・・・・・・」


「確か、催眠術は五分くらいしたら自然に解けるって言ってたから。・・・・・・ごめんね、利用するみたいにして」


「・・・・・・」


「・・・・・・バイバイ。もう、会えないなぁ」


 そう言い残して、彼女は立ち上がり、玄関へ向かった。

 呆然と、一人取り残される、被験者の俺。いやいや!違う!

 俺も立ち上がる。俺も玄関へ向かう。逃がさない。行かせるものか。


「おい!待てよっ!」


「え!?もう解けたの!?」


 ビックリ仰天、俺の声が聞こえた彼女は、すごい勢いで振り返った。


「そうだよ!催眠術はもう解けたっ!」


「え?何で、それ、覚えて・・・・・・」


「だからこれから言うのは、全部俺の気持ちからくる言葉だからっ!言わされてる人形じゃない、俺自身の言葉だからっ!」


「それって、どういう・・・・・・」


「好きだっ!お前のことがっ!ずっとずぅーっと好きだった!この前だって、言おうとしたっ!でもへタレだから言えなかったっ!でも、もうへタレたりしない!」


「っ」


「お前のことが、大好きだぁーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!!!!!!!」


 己の思いのたけを、すべてすべてぶちまける。もう恐れるものか、へタレる者か。男は度胸だ。全部言う。お前のことが、大好きだから。


「・・・・・・ずっとずっとって、いつから?」


 たどたどしく、彼女が言う。答える。


「もう、物心ついたころくらいから」


「・・・・・・おっそいよっ!!」


 大声で言われて、抱きつかれる。今度は人形ではない、俺自身の手で、彼女を抱きしめる。女の子の甘い匂いがした。


「ごめんね・・・・・・無理やり好きとか言わせて、ごめんね・・・・・・」


「いいよ、そんなん。いくらでも言うよ。催眠術なんてなくたって」


「・・・・・・もしかして、覚えてる?」


「ぁ」


「そーだ!やっぱりそーなんだ!もしかして、最初からかかってなかったの!?ひどい!最低だ!」


 ぶんぶん殴られる。でも、力も弱いし、手も小さくて、細くて柔らかい。全然痛くない。


「最低だ・・・・・・最低だよ・・・・・・もう。でも、大好き」


 最後にそう言われて。鼓膜から脳まで全部溶けてなくなりそうになった。催眠術さまさまです。

 

 

よし、そのままイチャイチャしろ。ラブラブしろ。

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