1、どうやら僕は不死身になったようです。
皆さん、おはようございます!
「────て、……きて! 起きてよぉ! リュウオウ!」
ゴンッ!
竜王の頭に衝撃がはしる。
「いったぁ! な、なんだ!? 」
竜王は、飛び起きる。
竜王の目の前に映るのは黒い帽子に黒いワンピース黒いパンプスを着ている僕と同い年くらいの少女だ。
そしてここは、忘れるはずもない。俺が焼かれた場所で仲間が殺され、全てを失った場所だ。
「おはよぉ! いい朝だね? 」
生憎、空は曇天もよう。
「曇ってるじゃねーか! 」
「あはっ、ツッコミ冴えてるね! これなら、無事成功なのかな? どうでした? 初めての死の味は? 」
少女の言葉に竜王は不快な気分がした。
「あ、そういえば、俺。死んだよな? なんで生きてんだ? っておまえ! グリコーゲンとかいう奴か!? あの時、見捨てやがって!!」
竜王は、激怒して掴みかかる。
この、少女に怒りをぶつけるのはお門違いであるのは、間違いだと分かっている。が、簡単に割り切れるものでもないのだ。
「ちょ、ちょっと、名前違うし! 私はグローリア! 間違えないで、それから服が伸びちゃうから引っ張んないでよ! アヌーロ・フォルス!!」
1m程の黒い球体が現れ、竜王の体に当たった。
「ぐぅあぁぁぁぁぁぁぁあっ! は、はぁ、何が……」
竜王の身体に球体が当たった部分が消え去った。竜王はそのまま倒れ込んでしまう。
「ぐ、おまえ! ぐはっ! か、身体を……し、死ぬじゃねぇーか! 」
「うるさいなぁー、ぷんぷんっ! 頭冷えたかな? よく見てー、身体生えてきてるよ? 」
そう、竜王のからだの消えた部分が、ジュクジュクと修復され始めた。
「うげぇ、気持ちわりぃ」
「それ、私からのプレゼントだよ? あなたの能力、不死の身体だよん! 」
「どう足掻いても、その文字合わせおかしいよな!? 不死の身体でなんでデットオアパラダイスなんだよ!? 」
「うーん? 何となく?」
「最悪だ……」
「まぁ、ともかく! リュウオウ! 長いから、リュウね! あなたはめでたく! 私の眷属になったのです! 」
「はぁ……そっか、魔王の眷属になったのか」
竜王は、何も感じなかった……。
数分前は、グローリアに掴みかかって激昂していたのに。今は、とても落ち着いている。まるで、賢者タイムのように。
「お! 今、賢者タイムに入ってるね! 1度、逝くと入るんだよねぇ〜」
「って、そのまんまなのかよ! 逝くとか言うな! なんで、俺の故郷のネタ知ってんだよ!? 」
竜王は完全にグローリアのペースにのまれていた。
「むっふっふ〜、なんでかって? 私も転生者だからだよん! 」
「えぇぇぇぇぇッ!? まじでか!? 」
「その反応、やっぱりそうみたいね。私はね、だから、あなたを助けようと思ったの。ふふっ、驚いた? 」
グローリアはその場でくるりと回って、ウインクをリュウオウに飛ばす。
「う……(可愛い)」
そう、可愛いのだグローリアは。
「あはっ、今可愛いとか思ったでしょ? 筒抜けだよん? だって、眷属なんだからね! 」
「お、俺のプライバシー返しやがれ! 」
ぐぅー。
竜王の腹が鳴る。
「「あっ」」
二人揃って声を上げる。
竜王はたちまち顔が茹で上がるのを感じた。
「ぷっ、あっはっは! そうだね! ご飯食べに行こうよ !」
グローリアは、何かを小さな声で呟くと宙に浮かび始めた。
「すげぇ。さっきの魔法もやばかったけど、お前凄いやつなんだな? 」
「まぁ、魔王ですからぁ〜」
「俺もできんのかな? 」
「呪文は『ママごめんなさい』ですよ? 」
「ぜってー違うだろ。おい」
「やってもないのに、決めつけは良くないよん」
確かにその通りだ、と竜王は思った。
「『ママごめんなさい』……」
長い沈黙
「おい! やっぱり嘘じゃねーか! 」
「はい、そうですよ? 」
「こんのやろう! 」
「残念、乙女です! 」
「うるせーっ! 」
そんなくだらない事で争っている2人に脅威が迫っていることに気づきは出来なかった。
「いい獲物だ……女は、飛行魔法を使える。男はただのモブだなァ」
赤のフードを被った者が木の影から2人を見ている。ニタァっと笑い、ピューと口笛を吹く。
流石に、この音には気づく……気づきませんでした。
この口笛は仲間への合図であったらしく、無数のフードを被った連中に二人は囲まれてしまった。
「ふえぇぇ? 」
「え? なになに? 知り合い? 」
グローリアは頭を横に振る。
「そんな訳ないよ。だって、私はずっとひt」「まぁ、いいや! とりあえず、飯持ってない? 」
竜王は、グローリアの言葉を切りつつ、赤フードに聞いた。
「おいおい、見せつけてくれるじゃねぇーカヨォ? てめぇら、状況が分かってんのカァ? 」
赤フードは、イライラした様子で質問を無視して答える。
周りの取り巻きも、イライラしているようだった。
「おいおい、早くやっちまおうぜ? 」
「あの女、可愛いなぁ……」
「ふへへへへ」
取り巻きたちが次々に、口を開いた。
そして、赤フードは
「よし、おめーらやっちまうか! やれ! 」
「「「ヒャッハー! 」」」
まさに世紀末
「うわっ、どうするよ? 」
「リュウ。貴方に任せるわ。 私に仕えるものなら、これくらい倒せないとね? 」
「はいはい。って、この数を相手にって! 無理だろ! 」
「上から見てるからね! 頑張って! 」
「マジか……」
そうしている間にも、取り巻き共が竜王に迫る。
右手には、ウッドアクスという木の斧を装備して竜王に殴りかかった。
竜王は、避けなかった。そのまま、真正面から頭で受けた。
竜王は声もあげずに倒れる。
「なんだァコイツ。 何も出来ないで死にやがったぜェ? 」
ゲタゲタと笑いながら取り巻きの1人が、竜王の頭を踏む。
「おい、女ァ? 良いのか、ダーリンが死んじまったぜぇ? オラオラ」
「誰が死んだって? 」
竜王は、自分の踏んでいる足を握りつぶした。
「ンギャァァァァァァッ!? 」
「そんぐらいで痛がんじゃねーよ。 俺はもっと痛かったわ! 」
赤フードと取り巻きには動揺が走った。
「さっき、死んだんじゃ? 」
「おい、どうすんだよ? 」
「オメェーらビビるなッ! サッサと殺せェェッ! 」
赤フードは、ビビる取り巻きに叫んだ。
「「「ウオオォッ! シネェ! 」」」
竜王は至って落ち着いている。
そう、賢者タイムだ。
「ふっ!」
竜王の目には、ウッドアクスの描く軌跡がハッキリと見えていた。最小限の動きで、全てを躱し切る。
そして、回し蹴りを繰り出した。
「ぐはッ。 こ、コノヤロウッ」
取り巻き共は、竜王の回し蹴りで数メートル吹き飛ばされた。
「――――我、ここに裁きの道を示す。グラビティ・ノイズ」
取り巻き共の周りには、高速で重力が変わる空間が張られる。
高速で、重力が変わるとどうなるか。
A、酔うんじゃね?
「うぎゃァっ! イデェーヨ! ダジでグレぇ! ゴゴガラ! う、ウでギャう……。ウグ……」
加減がなくて酔うこともなく、取り巻きは潰れてしまった。
「あっ! 死んじまった。おい、そこの赤フード。 テメェら、結局何しに来たんだよ? 」
竜王は、赤フードに近づく。
赤フードは、カタカタと震えながら、バケモノを見る目で竜王を見ていた。
「な、何なんだ!? お前は! 」
「え? 俺は、須王竜王だけど。所でさ、飯持ってない? 」
(コイツ、騙せるんじゃねぇーか?)
赤フードはこんなことを考えながら、
「は、はいございます。 こちらに……」
赤フードは、片手に砂を握りしめて竜王が手を差し出した瞬間、砂を投げ、持っていたウッドアクスで頭を殴った。
しかし、
ミシッ……ゴトンッ!
ウッドアクスは音を立てて折れた。
「な、う、嘘だろ……」
赤フードは絶句して、気絶してしまった。
それを見て、竜王は
「なんだよ。大したことねぇな。じゃあな、おやすみ」
竜王は、近くの石を持ち赤フードの頭を砕き割った。
「この力、凄いな」
赤フードをあわせ、30名近くはいた敵を1人で倒してしまった自分の力に驚いていた。
その様子を空から、グローリアは目を丸くして見ていたのであった。
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