1-7 普通の生活が一番の幸せ
皆さん。すごく唐突で無意味なことなんですけど一様報告させていただきます。私は今、自室の押し入れに存在する天界と日本をつなぐ門<ヘブンズゲート>とやらの目の前にいます。いや~ほんと押し入れと引き出しって何かしらの秘密持ってるよね。
ていうかこんな堂々としてていいの?俺の親が掃除中にうっかり発見!とかなりそうなんだけど...
「ちなみにヘブンズゲートは天使の力を持っている人しか見えないんで安心してください。ご家族がお掃除中にうっかり発見!とかがないように工夫されてますから」
「俺の不安を解消してくれてありがとう。だが人の心は読んではいけない。お父さんに習わなかったの?まぁうだうだしててもあれだし早く行こうぜ?この剣無駄に重いから疲れる」
「分かりました。では早速行きましょうか」
サフィがヘブンズゲートに手をかざした!それと同時にヘブンズゲートは開いた!その門って自動ドアじゃないよね。ちゃんと特殊能力使って開けたんだよね。雰囲気台無しだよ...右端に入るな危険ってあったけど大丈夫だよね?
「到着しました!ここが天界です!」
「天界って聞いてたから空の上にでもあるのかと思っていたが、割と普通だな。ただどこを見渡しても比較的明るい色の建造物とか木しかねーな。黒とかどこにも見当たらないんだけど」
「じゃあ早速天空高校に行きましょう」
結果的にいうと天空高校まではほんの10分くらいだったが、色々と発見はあった。一つ、おそらくここは都市部だということ。この人口密度なら都市部でない方がおかしい。二つ、ここには車や自転車といった乗り物の概念はないということ。三つ、なぜかは知らんがこいつらは日本語を話していることだ
この二つ目に関しては、車道がなく住民全員が歩いているということから推測しているだけなので空飛ぶ乗り物が存在する可能性は十分ある
「ここが天空高校です」
「は!?これが高校!?でかすぎだろ」
「では早速理事長に会いに行きましょう。理事長ならその剣の名前を教えてくれるはずです」
軽く流されてしまったがやはりこれはデカすぎる。もはや高校という枠には収まらない規模だ。これまさかセレブなお方たちが通う高校?俺すげぇ場違いじゃん
「理事長、サフィです。例の転校生を連れてきました」
「おー、君が例の天才君か。初めまして、ここの理事長をやっているフリスだ。この長い銀髪と黄色の目がトレードマークのジェントルマンだ。」
「初めまして。夢島覚です」
「君が住むことになる男子寮はそこの窓から見える水色のマンションの805号室だ。この学校は基本的に実技訓練しかしないから勉強道具はいらないよー」
サフィが言ってた学校生活に必要なものは揃えてあげるってこういうことか
「それよりここでこの剣の名前を教えてくれるって聞いたんですけど」
「それならもうやってみたんだけど...すまない。そいつは自分の主がつけてくれる名前じゃないといやらしいんだ」
「ということは、俺がこいつの名前を決めていいんですか?」
「そういうことだ」
「それならこいつは......黒刃にします」
「えらくシンプルだねー。なんでそれにしたんだい?」
「特に深い意味はないんですけど...なぜかその名前じゃないといけない気がしたんです」
「そうか。剣がその名前を受け入れたなら、剣は鞘に戻ってくれるはずだよ」
「とりあえずやってみます。戻れ、黒刃」
俺の手元にあった剣はすぐさまヘアピンになり、もとあった場所(俺の髪)に戻った
「どうやら上手くいったようだね。私からの話はもう終わりなんだが、なにか質問とかあるかな?」
「じゃあ一つだけ。天界で、徒歩以外の通行手段はありますか?」
「そういえば君はまだ魔力を使ったことがなかったんだね。徒歩以外の通行手段はあるにはあるがあまり使う人はいない。その手段というのは、魔力で翼を作り空を飛ぶことだ。素早く行動することはできるが魔力消費量が激しいため戦闘以外では基本使わない」
「分かりました。僕からの質問ももうありません」
「それなら君達はもう寮に戻りなさい。夢島君は馴染みがないだろうけど天界は日が沈まないんだ。だから外はこんなに明るいのにもう午後10時だ。明日の訓練は午前7時からグラウンドで行うから遅れないように」
理事長に頭を下げ、サフィに道をナビゲートしてもらいやっと俺の部屋についた。
ふと考える。なぜこうなってしまったんだろう。数学や国語や理科といった普通の授業を受けて、毎度おなじみの各教科から出てくる大量の宿題を何とか終わらして...明日も明後日もこの二つがループする普通の学校生活を送っていくはずだった......もうこんなこと考えても無駄なのは分かっている。分かっているはずなのに
こんな無駄なことばかり考えてしまうくらいならもう寝よう。この悪い夢が覚めてくれることを祈りながら