1-6 異世界に通じる門って誰が作ったの?
「よし、行くぞ。早く連れていけ」
「もう行くんですか!?もうちょっとこっちでやらないといけないことないんですか?親に別れの挨拶したりとか学校に退学届を出したりとか」
「そんなことしてたら決意が揺らぎそうだ」
「...そういうことなら、分かりました。では行きましょうか。ここから10分ほど歩いた場所にありますのでまずはそこに向かいます」
美少女と二人で学校をさぼる。ここだけを抜き出したらすごく魅力的なシチュエーションだろう。しかし現実は違うのだ。多分俺はこのまま天界とやらに連れていかれて、他者を殺すための知識を学ばされ、使い捨ての駒のように扱われ、挙句は戦場で死ぬのだろう。もし生き残れたとしても、俺の手は血で汚れてしまっているのだろう
そんなの絶対認めない。絶対に天界から逃げ出してやる。こいつらのことなんて知ったことじゃない。そのためにはまずこの力の扱い方を理解しなくてはいけない
「いくつか質問いいか?」
「私が答えられる範囲の質問でしたら構いませんよ」
「一つ目は、俺の武器についてだ。これが剣だというのは簡単にわかるんだが、銃だといわれると少しおかしい。銃口と引き金はちゃんとあるが弾倉がないから弾を装填できない」
「それはその武器が特別だからです。本来私たちは本物の銃弾に自分の聖火を乗せて撃ちます。おそらくですが、それは直接聖火を撃てるのでしょう」
「聖火?」
「聖火というのは自分の炎の属性です。その武器を手に入れるときに自分の体に光が入ってきましたよね?その時に入ってきた光で自分の属性が決まります。基本的に一人一つの属性があります」
「でも俺は全色の光が入ってきたぞ」
「それがあなたが救世主と呼ばれる理由です。普通は属性を二つ持っているだけで天才だなんだともてはやされます」
正直こいつが何を言っているのかよくわからないが、俺がマジで天才だったということはわかった。なにそれいやなんだけど。
天才という言葉に憧れる人は多いだろう。しかしそれは度を越えてしまうと嫉妬の対象になる。大きすぎる力は外からだけではなく内からの攻撃も受けてしまう。小さな努力を積み重ねて大きな結果を出したとしても、その結果を努力の結果だと言ってくれる人は多くない。そこには才能という言葉がつきまとい、努力は完全には肯定されない。
だから俺は天才になんかなりたくなかったのに...
「属性って何があるんだ?」
「全部で七種類です。赤の光は炎、青の光は水、緑の光は木、紫の光は毒、黄の光は雷、白の光は光、黒の光は闇。以上が聖火の属性です」
絶対つっこまない。聖火なのになんで水なんだよとか絶対につっこまない。
「漫画でよくある属性だな。
二つ目は、何でお前が俺の武器を知っている?これが出てきたとき三属性同時に扱えるとか言ってただろ」
「それは...死んでしまった天界の英雄、私の祖父が持っていたものととてもよくにていたのでついそれと重ね合わせてしまって...実は天界があなたを必要としている理由も私の祖父が関係してるんですが、またその話は今度でお願いします」
「ということは、こいつはお前が言っていた内容とは違う武器かもってことか。
これが最後の質問なんだが、これ、どうやってしまうんだ?」
実はさっきからこの剣を持ったまま歩いていたのだ。最初は気にしていなかったのだが、とある子供が「あのおにーちゃんちゅーにびょーだよおかあさん」と言って、その子のお母さんが「見ちゃいけません!」と言って俺を汚物を見るような目で見てきたあたりからもう死にたくなった
「すいませんがまだそれはしまえません」
「どういうことだ?」
「本来天使は武器の名前を呼んで武器を呼び出したりしまったりするんですが、あなたのそれはまだ名前がわからないのでしまえないんですよ」
「でもお前昨日何も言わずに武器出してただろ」
「私とこの子のように親密度が高ければ言葉なしでも大丈夫なんです」
この子自分の武器をこの子っていってるけど大丈夫だよね?「この子のためなんです」とか言って撃ってきたりしないよね?知らない間に体に穴とか開いてないよね?
「俺これの名前知らないんだけど、もしかしてこれ持ち続けないといけないのか!?これ柄頭に銃口あるから怖いんだけど...」
「いえいえ、そんなことはないですよ。今から行く場所には武器の名前を教えてくれる人がいますから!
あっ、止まってください!ここが天界と日本をつなぐ門、<ヘブンズゲート>がある場所です!」
俺はこの場所を知っている。白を基調としていて、家本体はでかいのにガレージだけが異様に狭い二階建てのそこそこきれいな家。表札にはyumejimaの文字が...
「て、ここ俺ん家じゃねぇかぁぁぁ!」