1-5 特別な力とか持つとちょっと調子に乗っちゃうよね
最悪だこの状況。何でサフィさんはさっきから授業受けずにこっちばっかり見てるんですかね。確か学校の授業というのは新しい知識を得るための時間のはずだ、決して左隣にいる人の顔を見てニコニコしている時間ではない!何で海斗が俺の方を向いて藁人形を作っているのかは今はどうでもいい。あれ?小学校の頃からの親友のはずなんだけどな...やべっ、目からなぜか汗が出てきたんだけど...
「はい、それでは今日の授業はここまで。ちゃんと宿題はやってこいよ。」
「サフィ、ちょっと来い」
俺は授業が終了したと同時にサフィを人気のない場所に連れ出した。教室を出たときに「きゃー夢島君大胆!」とか「昼間っから欲情してんじゃねーよエロ島」とか「殺す殺す殺す殺す」とか言ってたやつらがいたけど俺は大人だからあんな冷やかし気にしない。2番目のやつ後でお前の弁当にミミズ入れてやるから覚悟しとけよ?3番目のやつはもはや冷やかしというより殺害予告だな...海斗君、君はもっと親友を大事にしましょう
「で、サフィさん?これはどういうことなのか説明してくれないかな?」
「覚さーん目が怖いですよー。私が来た目的はですね、覚さんまだ力が会得できていないでしょ?」
「そういえばまだ何も変化はないぞ。なんか不具合でもあったのか?」
「いえ、昨日上司から教えてもらったんですが、人間が天使の力を会得する場合ある行為をしないといけないらしいんです」
「ある行為?」
「そ、それは、その...天使との......接吻、つまりキスです」
「よし分かった」
なんだそんなことなのか。てっきり自分の肉体を捧げたり俺が中学の頃から集めてるお宝(漫画・ラノベ・ゲーム)を燃やさないといけないのかと思ったぜ。決してエロ本ではないからな!
とにもかくにもそんな簡単なことなら早く終わらせるに限るな
「!?っな、なにするんですかこの変態!」
「いってぇーーー!だってあれお前とキスしなきゃいけない流れだったろ!」
「そうですけど!そうですけど!乙女には色々と準備が...」
「なんだよ準備って...っておい!なんか俺のヘアピン光ってんだけど!」
勘違いしないでほしい。別に女になりたいとか思ってないから。俺は昔から前髪を右半分だけ上げている。ようするにこのヘアピンはその上げている髪を維持するためにつけているだけだ。決してオカマではない!
荻原あいつまじふざけんなよ、ヘアピンつけてるからってなんでオカマになるんだよ。自分の髪の毛が少ないからって人のこと妬んでんじゃねーぞ
「お、おいおいヘアピングレードアップしすぎだろ」
あまりの眩しさに目を閉じたら手になにやらずしりと重いものが落ちてきた。恐る恐る目を開けると、俺の手には一本の剣があった。その剣は黒を基調として所々に赤と白の炎を彷彿させるようなラインが入っている。よく見ると柄は銃になっているようだ。そのせいで少し持ちづらい
「やっぱりあなたは我らの救世主です!その武器は天使界でも使用している人がいない特別な武器なんです。一種類の武器で三属性を同時に扱え、剣と銃が一体となっているため近距離でも遠距離でも戦える。神器とも言われています」
「無駄に便利だな。でもなんでそんな便利なもん使っているやつがいねーんだ?」
「その武器はもはやチートなんです。そのため使用する魔力量も多いので体内保有魔力量もチート並みに多い人じゃないと扱えないんです」
俺そんなすごい武器扱える自信ないんだけど。そもそも剣とか銃の使い方しらねーし宝の持ち腐れ感がやべーよ。てか俺が魔力持ってるとか初耳なんですけど
「ここで一つ提案があるんですが」
「なんだ?」
「私が通っている天使養成高等学校『天空高校』に転校してくれませんか?」
「いやだ、めんどい、断る」
「な、何でですか!」
「ようするに戦うための訓練して自分たちと一緒に戦ってくれってことなんだろ?」
「はい。それでほとんど合ってます」
「俺はそもそもお前たちを救うといった覚えはない」
「そ、それはそうですけど。力まであげたんですからお願いしますよー」
力はそちらが僕を脅して無理やり渡してきたと思うんですけどそこらへんはスルーなんですねはい分かりました
実はさっき自分が特別だということが判明してちょっと調子に乗ってしまい、こいつらを助けてやろうかなとか思っていた。しかし転校の話を聞いて思い出した。今日本は学歴社会に変わりつつある。ということは相当頭のいい大学を卒業しないと安定した生活はできない。
唐突に話を変えてしまったが、つまり何が言いたいのかというとだな、そんな戦うための知識を得る高校に転校してしまったら俺の学歴はどうなる?こいつらが保証してくれるのか?そんなものはあてにできない。
仮に高校は今のままで戦いにだけ協力したとしよう、ケガとかして入院した場合出席日数は減るしうちの高校は結構名の通った進学校だ。一日休むだけでどれだけ周りと差をつけられるか。それが一週間も続いてしまったらもう手遅れだ。下手したら留年しかねない。
これらのことを踏まえると、メリットに対してデメリットが大きすぎるということが分かる。よって俺がこの頼みを断ることはなんらおかしいことではない
「分かりました、もう最終手段です。」
「最終手段?」
「私はあなたの将来の妻と言いましたね?実は私は天界でも名の通った王女なのです。」
「へー、お前階級高いやつだったんだな」
「私の家系は血統などは関係なくただ強い人と婚約して繁栄していくんです。そして昨日父にあなたのことを話したら「じゃあお前の婚約相手はそいつにしよう」と言われまして、」
待て待て待てちょっと待て、話が急すぎる。お父さん娘の婚約相手だぞ!そんな簡単に決めてどうするんだ!ていうかサフィ、お前もちょっとは反抗しろよ!じゃないと相手がこんな夢も希望もないただのごみ同然の屁理屈自己中野郎になるんだぞ!...え?俺ってそんなに価値ないの?
「もし父に「覚が私の処女を無理やり奪った挙句、用が済んだらもうお前いらないって言って道端に捨てられたー」って泣きつけば父はどうなりますかね?」
「やめろー!俺をそんな鬼畜ドS野郎にするなー!」
「じゃあもう分かってますよね?もう一度聞きます。天空高校に転校してくれませんか?今なら特別に家庭用品とか学校生活に必要なものぐらいは揃えてあげますよー」
...はぁ~、またこのパターンかよ。選択肢を複数用意しているようで実は一つしか選択肢がないこの質問。いやまぁYES以外の選択肢もあるけどね?でもそれ選んだら俺たぶん死ぬじゃん?となると答えは一つしかない
「分かったよ。天空高校に転校してやる」
「そういってくれると思ってましたよ。一緒に頑張りましょうね、覚!」