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§1-2.解放

6/7:全部書き直しました。

気が付くとティアは、灰色の世界に佇んでいた。上を見上げても、見回しても黒や白に渦巻いているばかりで、まるで現実味がなかった。


「え......?何ここ......?」


自分の記憶を探ってみると、王都で追いかけ回され、捕まったところで謎の声を聞き、視界が赤く染まって......


「私......死んだのかな......」


「--汝、去にたらず。

ここは契約せし我と汝の精神の狭間。互いの魂通ひし場所--」


「!?」


突然後ろから遠雷のごとく厳めしい声がしたので驚き振り返ってみれば、ティアより一回り大きい不定形の影が、口のようなものを開いてそこに浮かんでいた。


「契約......?あのときの声の......」


「汝、契約受けし。人の身をしていたきこと。契約に因りて新しき選定者リウローラとなりし。

選定者リウローラは神の使徒なり。神の力を分け与へられ、る力をもちて、人ならざる猛威を振るひし神の武器。

汝、はや人ならざりき」


「え、なに......?」


いきなり一方的に古式ゆかしい言葉を並べ立てられ混乱の度合いの増すティアだったが、混乱し過ぎて逆にそのことを自覚したのか、落ち着け、と自分に言い聞かせ始める。

この影がどんな存在であろうと、契約と言っていた以上ここで混乱して何も分からなかった、では不味い、そう考える。

仕事で幼くもそういった話は近くで見たり、自分でやったりもしてきた。既に契約は成されたと言った以上交渉も何もないが、このままでは一方的に終わらされてしまう。


「え、えっと、つまりあなたは契約で私に力を分けてくれた、代わりにあなたの為に働け、ってこと?」


「さなり。されど我が本意ぞ封印より出づること。過分なる力、封印を強めし。我、みづから力を与へて術式をたばかりて現界せし。」


つまりこの影は封印されていたが、力が強いと封印も強くなってしまうため、ティアに力を与えて抜け出した、と言うことか、となんとか訳す。


「更に封印に妨げられ、汝は縛られず。

汝、自由なり」


へえ、と呟きながらティアは内心ほくそ笑んだ。なにやらただで力を貰ったようなものらしい。

もちろんまだそれが真実であるかは分からないので態度では表さなかったが。


「ただし流れ込みし力によりて、その身に付きたりし魔法と魔導具はこほれし」


「こほれるって......」


「............力失ひ使ふことあたはず......」


ああ、使えなくなったってことか、と納得したティアは自分に付いていた魔法や魔導具を思い返していく。


「まずは......事務系の魔導具......それから逃げたあとにって買った夜営用小型魔導具一式......まだ新しかったのに......」


夜営などに使えるそれなりに高い魔導具等も小さい物は買っておいたのだが、いきなりダメにしたことに若干落ち込む。


「それから......私の身に......掛けられた魔法も!?」


そこではっ、と気付く。

自分に掛けられた魔法は2つ。

微弱ながらも身体能力を上げる魔法。

そして......隷属魔法。


「えっ、もしかして奴隷紋も消えたの!?」


「......?奴隷紋とはいかなるもの......?」


どうやら影は奴隷紋や隷属魔法を知らないらしい、声は威厳があるのに妙に人間臭く困惑する影にティアの方が戸惑ってしまった。


「えっと、首に付いてた黒い印を刻んでた魔法なんだけど......」


「......!さなり。その魔法消えたり」


「......っ!!!」


先程とは比べ物にならないほどの喜びに、拳を握り、声にならない叫びをあげる。

すぐに我に返って姿勢を正すティアだったが、早くここから帰って奴隷紋の有無を確かめたかった。

そんな内心を誤魔化すように腕組みをして質問を続ける。


「そっ、それであんたは何者で、どうして封印なんかされてたのよ。

ついでに、そのしゃべり方どうにかならないの?」


「......我、今世の語、未だ学びたらず。

このごろ学ばんとす。

汝、再び来たれば、我は今世の語、語るべし」


またこんなところ来るの、とティアは独りごちる。


「我、魔神なり。

今は昔、魔族を纏め、我の真人ノブル攻めしこと、未だままと思い出でん」


影は自らを魔神と名乗って続ける。


「我に同じく力を与へられし者、選定者リウローラとなりにて共に真人ノブルを攻めし」


ティアを含む人族は、獣の特性を持ったり、特殊な先天的能力を持つ亜人族と呼ばれる者たちと纏めて『真人ノブル』と総称される。

これは太古に現界(神たちの世界からこの世界に降りてくること)していた神から祝福を受けた種族だと伝えられている。


対して魔族とは、真人を敵視しその領土を奪わんとする種族の総称で、元々は同じ真人ノブルであったが神に反抗した者たちである。

その魔族の旗印となるのが、悪しき神、魔神なのだ。


「されど我が選定者リウローラ、謀反を起こし、内乱起きたりし。

をりから、後より真人に襲われ封印されし。まことにまがまがしきこと......」


自称魔神のこの影は、真人ノブル侵略中に自ら力を与えた者に裏切られ、そこで後ろから真人ノブルに封印されたという。


まったくもって情けない魔神だが呆れている場合ではない。

真人ノブルを攻め滅ぼそうとしている相手を封印から解き放ったのはティア自身なのだから。


「......ずいぶんとヤバい話になってきたわね......じゃああんたはまた真人ノブルを攻めるってこと?」


「諾。我が望みし大願」


「......私が真人危機のキッカケとか......笑えない......」


ティアは度重なる重要事項に頭を抱えた......。




「やがてこの狭間崩れむ」


「......そう」


ティアが若干疲れた様子なのはある意味当然か。

結局一方的に振り回されてばかりであったように思えてしまうティアであった。


霞んでいく世界の中、魔神の声が聞こえた。


「その力、汝の望むままに使うべし。汝の望むままに増さん--」


再び意識が遠退く。



###



ティアが再び目を覚ますとなにも見えない暗闇の中にいた。


「......?まさか失明って訳じゃないわよね?」


とりあえず明かりをつけることにする。


「<Руй(ルイ)Райлэ(ライレ)Иста(イスタ)

>」


ティアは魔法を習っていた訳ではないが、どんな貧しい子どもでも生活魔法呼ばれる、簡単で便利な魔法は覚える。


頭上に太陽のごとく光球が浮かび上がる。


「まぶしっ!?なにこれ!」


普段と同じ感覚で魔法を使ったはずが凄まじい光量の光になってしまい慌てる。

これがあの魔神の言っていた力というやつなのだろうか。


だがそんな疑問も、目の前に広がる光景に掻き消えてしまった。


そこは広大な空間。

これだけの大きさとなると地下であろうか。

高く見上げるほどの天井を支える太い柱と石造りの床、その全てに緻密な絵や紋様が刻まれており、空間の奥は見通すことのできないほど深く暗い。


また見知らぬ場所に来てしまった。


「はぁ......ここどこよ......?」


だが今回はその疑問に答える者はいなかった。

今日一日で立て続けに起こった事態に、ティアは思考を放棄した。


「......もう疲れた......」

お読みいただきありがとうございます。

辛口評価、感想、お待ちしております。


魔神様のセリフ読みづらくてすみません。次までには魔神様も現代語をしっかりお勉強してくるそうです(笑)

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