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継母と義妹にいじめられてますが、本屋で出会った男性に大切にされるようです  作者: 冬木ゆあ


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第3話 招待状

 不在にしていたリディアの父親であるフィリップが帰ってきた。

 フィリップは貿易商をしていて、国を渡り歩き、年に数回帰ってくるかどうかという生活を送っている。

 屋敷の前に止まった馬車からフィリップが下りた時、玄関の扉が開いて、部屋の窓から馬車がついたのを見ていたリディアが駆けてきた。


「お父様!」


 リディアは勢いよくフィリップに抱きつくと、フィリップは笑いながらリディアを受け止めた。


「ただいま、リディア。お土産だよ」


 そう言って差し出したのは、クマのぬいぐるみだった。


 ――もう子供じゃないのに。


 そう内心思いながらも、フィリップからのお土産が嬉しくて、抱きしめた。

 その後ろからクレアとレティーシャも姿を見せ、クレアが声をかける。


「旦那様、おかえりなさいませ」


 フィリップは顔を上げ、


「ただいま」


 と、言った。

 それからレティーシャにもリディアにあげたのと同じクマのぬいぐるみを渡した。

 レティーシャは口ではお礼を言っていたが、あまり嬉しそうではない。

 四人は屋敷の中に入って行った。


 いつもはひとりでとる食事だが、フィリップが帰ってきた時だけは、リディアもリビングで食べることが許されていた。少し居心地は悪いが、フィリップと食事を取れることは嬉しかった。

 チキンソテーを食べながら、フィリップはリディアに尋ねた。


「最近はどうだい? リディア」


 リディアはふと脳裏に本屋でたまに会う男性の顔が浮かんだ。

 フィリップに話したかったが、なんとなくクレアとレティ―シャに知られたくなくて、曖昧に返した。


「変わりなく過ごしています」


 フィリップは頷き、クレアとレティ―シャにも同じ質問をしていた。

 そして、最後に、


「明日からはダグラス帝国に行くから、また留守を頼むよ」


 そう言った。

 それを聞いたリディアの心は少しだけ重くなった。


 翌日。

 フィリップが家を出るのを、リディアは見送りに出たかったが、泣いて引き留めてしまいそうだったので窓から眺めていた。

 馬車が走り出す音を聞いて、リディアはそっとひとり涙を流した。馬車が見えなくなるまで、堪えるように見つめていた。



 ある日の昼下がり。

 クレアに呼び出されて、リディアはクレアの部屋のドアをノックした。


 ――またおつかいかしら。


 と、予測を立てていたが、クレアから告げられたのは意外な話だった。


「王宮主催のダンスパーティが開かれるそうよ。お前にも招待状が来ているわ。断れないから、お前も出席なさい」


 リディアは驚き、ネイビーの瞳を瞬いた。

 隣にはレティ―シャもいて、機嫌が悪そうだ。


「リディアとパーティに行くなんて最低」


 クレアは後ろで控えているメイドに視線を送ると、メイドは少し気まずそうにリディアにドレスを手渡した。

 受け取ったリディアを見て、クレアは言った。


「このドレスを着て行きなさい」


 リディアはそのドレスを見た。ピンクのドレスで、数年前にレティ―シャが着ていたのを覚えている。

 クレアは隣にいるレティ―シャに優しい声音で言った。


「今回は王宮主催のパーティだもの。しかも、アーヴァイン公爵の婚約者探しも兼ねているという噂よ。新しいドレスを新調しましょう」


 レティ―シャは茶色の瞳を輝かせた。


「嬉しいわ。ありがとう、お母さま」


 すでにそこにリディアはいないもののように振舞う二人に、リディアはそっとドレスを抱えて部屋を出た。


 自室でルーシーに手伝ってもらってドレスを試着してみたが、フリルが多いピンクのドレスは、リディアにはあまり似合っていなかった。それどころか裾が短い。

 リディアはあまりに酷い姿に鏡を見て、溜息を吐いた。

 ルーシーはその後ろで腕まくりをした。


「これは腕が鳴りますね!」


 いつもおさがりをリディアに少しでも似合うようにと手直ししてくるのはルーシーだ。

 リディアは振り返り、ルーシーを見た。


「いつもありがとう。材料費は私のお小遣いから出すわ。アクセサリーも買わないといけないわね」


 ルーシーはリディアのドレスを脱がしながら言った。


「お嬢様のデビュタントですもの、材料費はわたしからのプレゼントにさせてください」


 リディアはその一言にはっとした。


 ――そうだった。初めてのダンスパーティだったわ。


 シェリー王国の子女は十六歳で社交界デビューするが、今までその機会を与えられなかったリディアはルーシーの気持ちが嬉しくて微笑んだ。


「ありがとう。ルーシーだけよ。私のデビュタントを祝ってくれるのは。きっと小説で読んだみたいに、パーティはきらきらしているのでしょうね」


 いつものリディアに戻った姿を見てルーシーは笑みを浮かべた。


「さっそく街に行って仕入れてきます。アクセサリーも見繕ってきますね」

「よろしく頼むわね、ルーシー」


 ルーシーはリディアのドレスを抱えて、頷いた。


「お任せください! お嬢さまのデビュタントに相応しいようにご用意いたします」


 二人は笑みを交わした。

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