プロローグ
僕が仮面をつけるようになったのは、彼との出会いがきっかけだった。
僕には、生まれつき顔に赤黒いアザがある。母はそれを“呪い”と呼び、父は“汚れ”と呼んだ。誰も、僕の目を見て話すことはなかった。話しかけられるのは罵声を浴びせられるときだけで、触れられるのは殴られるときだけだった。
だから、僕は話さなくなった。触れないように、触れられないように、生きることにした。
それでも、風は吹くし、空は青いし、太陽は眩しい。心のどこかで、この世界のどこかにはきっと僕の居場所があるんじゃないかと、そう思うこともある。
でも、その考えはすぐに消える。誰かの瞳に映った自分の顔を見るたびに、その希望は泡のように簡単に弾けてしまうから。
だけど——
あの日、土塊の上にうずくまって、石を投げられていた僕の前に、ひとりの少年が立ちはだかった。
「やめろ」
その声は透き通っていた。温かくも、冷たくもない。ただ、真っ直ぐな声だった。
彼の背中越しに見た青空が、なぜか、いつもより遠くまで広がっているように見えた。
僕の名前はバルカ。これは僕と彼が出会ったことから始まる、温かくも悲しい運命の物語だ。