第三話
焼き芋屋が「いしやーきいもー」と歌いながら、遠ざかっていく。女子高生の手から、≪司祭長≫のカードがぱらりと落ちた。さっきまで真っ白だったカードに、絵柄ができている。
「え、なになに、今の、なに?」
僕は足元に散らばっていたタロットカードをかき集めて、戸惑っている女子高生を静かに見た。説明が難しい。
「どしたの?」
「いや、今、走馬灯みたいなのが見えた気がする!」
「どんな内容?」
「えーと……なんだっけ?」
タロットカードに吸われた記憶は、本人の記憶から消えてしまうのだと聞いた。
半ば事故とはいえ、見ず知らずの人の記憶を見てしまった僕は、すっかりバツが悪くなって、焼き芋を頬張った。
この子の記憶は、自分の胸のうちに秘めておこう。といっても、僕は忘れっぽい人間だから、すぐに見た内容自体を忘れてしまうのだろうけれど。
……そういえば、大学に課題を提出するのを忘れていた。大学のある方向をながめる。木々に覆われていて、ほとんど見えない。図書館が少し見える程度だ。
視線を戻すと、視界の片隅でゴスロリ服を着た少女がくるりと回る。サナだ。ふっくらとしたカーブを描いたスカートの縁に、繊細なレースが縫い付けられている。
サナは珍しく僕の方を向くと、次の瞬間、ふっと姿を消した。
サナは膝までの靴下を履いていた。
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