第一話
神社の石段をすっかり降りて鳥居をくぐると、石焼き芋の屋台からいい匂いが漂っていた。僕の胃の辺りから、ぐうと物悲しい音がする。振り返って一礼すると、夕陽の光に、神社の赤い鳥居が馴染んでいた。
屋台の前に並ぶと、軍手をつけたおじさんが紙袋にいくつか焼き芋を入れていた。制服姿の女子高生がスポーツメーカーの大きなバッグを背負っている。ショルダーバッグを無理やりリュックのように使っていた。部活帰りなんだろう、お腹空くもんな、と僕は自分の順番が回ってくるのを待った。
「部長が言うこともわからなくもないけどさぁ。自分たちが厳しくされたからって、後輩にもそれを求めるのって、違くない?」
「ボール拾いとかはわかるけど、靴下の種類とかは、ほんと訳わかんないよね」
「それ! ほんとそれ!」
女子高生たちはケラケラと笑いながら焼き芋を受け取ると、近くのベンチに座った。僕が神社を出たときとは違って、日がさらに傾いている。群青色の空をながめながら、女子高生たちは焼き芋を半分こして、「あちっ」と笑いながら皮を剥いた。
「600円ね」
「ありがとうございます」
焼き芋を受け取って、僕はゆっくりとベンチをながめる。
「あ、座ります? 寄せるんで、座ってください」
「ありがとう」
長いベンチで女子高生たちが詰める。僕はベンチの端っこに座って、ほかほかと湯気をあげる焼き芋を割った。皮を剥くと、黄色のふかふかとした芋の繊維が見えた。一口かじる。熱い。予想よりずっと熱い。
びくっと身体を震わせた拍子に、カバンが膝の上から落ちた。足元にタロットカードが散らばる。
「あー」
一足先に焼き芋を食べた女子高生が、僕の足元に散らばっているタロットカードに手を伸ばした。
「あ、ダメ」
そのタロットカードは嫌な記憶を吸い込む。僕があわてて声を上げたときには、もう遅かった。
ピシッと空間にヒビが入るような音がした。




