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残像少女  作者: 網笠せい
5 司祭長 「理不尽に慣れるための校則」
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第一話

 神社の石段をすっかり降りて鳥居をくぐると、石焼き芋の屋台からいい匂いが漂っていた。僕の胃の辺りから、ぐうと物悲しい音がする。振り返って一礼すると、夕陽の光に、神社の赤い鳥居が馴染んでいた。

 屋台の前に並ぶと、軍手をつけたおじさんが紙袋にいくつか焼き芋を入れていた。制服姿の女子高生がスポーツメーカーの大きなバッグを背負っている。ショルダーバッグを無理やりリュックのように使っていた。部活帰りなんだろう、お腹空くもんな、と僕は自分の順番が回ってくるのを待った。


「部長が言うこともわからなくもないけどさぁ。自分たちが厳しくされたからって、後輩にもそれを求めるのって、違くない?」

「ボール拾いとかはわかるけど、靴下の種類とかは、ほんと訳わかんないよね」

「それ! ほんとそれ!」


 女子高生たちはケラケラと笑いながら焼き芋を受け取ると、近くのベンチに座った。僕が神社を出たときとは違って、日がさらに傾いている。群青色の空をながめながら、女子高生たちは焼き芋を半分こして、「あちっ」と笑いながら皮を剥いた。


「600円ね」

「ありがとうございます」


 焼き芋を受け取って、僕はゆっくりとベンチをながめる。


「あ、座ります? 寄せるんで、座ってください」

「ありがとう」


 長いベンチで女子高生たちが詰める。僕はベンチの端っこに座って、ほかほかと湯気をあげる焼き芋を割った。皮を剥くと、黄色のふかふかとした芋の繊維が見えた。一口かじる。熱い。予想よりずっと熱い。

 びくっと身体を震わせた拍子に、カバンが膝の上から落ちた。足元にタロットカードが散らばる。


「あー」


 一足先に焼き芋を食べた女子高生が、僕の足元に散らばっているタロットカードに手を伸ばした。


「あ、ダメ」


 そのタロットカードは嫌な記憶を吸い込む。僕があわてて声を上げたときには、もう遅かった。

 ピシッと空間にヒビが入るような音がした。


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