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第三話
「うわあ」と呆れている僕に、柾人さんはふふふふ、と謎の笑みを向けた。彼のお母さんとの悲しい記憶だと言っていたけれど、奥さんの話しか頭に残らなかった。愛妻家の域を超えた嫁バカなのだということだけは、よく理解できた。
あずささんはこめかみに指をあてて「お前は相変わらずだね。内心そんなことを思っていたの?」とため息をついてから、タロットカードに女帝の絵が浮かんだのを確認する。
「吸い取らせていい記憶だったの?」
「母さんのことは覚えてるよ。ただ、最期の言葉が何だったのか、具体的には思い出せなくなっただけ。なんとなくは覚えてるけどね。術への耐性が高いから」
「大切な記憶だったのじゃない?」
「大切だけど、悲しい記憶でもあるからいいんだよ。昔のことだし」
笑いながらタロットカードをくるりとまわして、柾人さんは「女帝は正位置で母性、逆位置でわがままとか」とつづけた。
「あのとき殴ったこと、反省はしているよ」
「日常茶飯事じゃん……」
カードの絵柄は若干日焼けして、かすんでいる。
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