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80死に戻って本当に良かった(リンローズ回想)これで最後


 思えば私はずっとシュナウトを愛していたんです。

 だから死に戻った時、彼が未来で死ぬ事を絶対回避したかった。それも私が殺すことになるなんてそんな事絶対に出来ないって思ったんだと思います。

 だからこそ私はシュナウトと婚約解消を絶対にしなくてはならないってあれほど強く思ったんだと。


 でも、こんな未来が待っているなんて絶対に想像出来なかった。

 実は私とシュナウトはお互い初恋同士だってわかったんです。

 よく初恋は実らないって言いますよね。

 ええ、確かに私達の初恋は実りませんでした。

 でも、死に戻ったおかげで初恋ではなく二度目の恋という事になったんでしょうか。

 それで私達は結ばれたのかもしれません。

 

 シュナウトとの結婚式。

 ラドール様が控室にいらっしゃいました。

 その時私はずっと不思議に思っていた事を尋ねました。

 彼は気まずそうに髪をポリポリかきながら話してくれました。

 ”ああ、やっぱりばれてました?俺はずっとシュナウト殿下。いえ、コリー侯爵に怒っていました。学園での事もアシュリーとの事も‥彼女が薬を使っているだろうとも思っていました。だからあなたが婚約を解消すると言った時、このままアシュリーとの関係が続けばあなたに都合がいいと思ったんです”と。

 ラドール様はずっとシュナウトの態度に憤りを感じていたそうです。側近になったのはいつかは彼は自分の立場に気づくと思っていたそうです。でも、いつまで経ってもシュナウトは変わらなかった。だから‥

 でも、私が婚約を解消しようと言い始めると彼の態度は明らかに変わったと。

 それにしてもまさかこんな事になるとはと笑っていました。

 ”いや、良かったです。シュナウト殿下が貴方を好きな事はわかっていましたから。”

 ”えっ?そんなの嘘でしょ?”と突っ込みましたがラドール様には”気づいていなかったんですか?”と聞き返されました。

 そんなの気づくわけがありませんよ。

 それにラセッタ辺境伯の事も謝っていました。ずっと兄には、いや、あの家にはおかしな因習があるのだと、私に話すべきかと悩んでもいたそうです。

 こうなったのも仕方がない事だとも。

 ”シュナウト殿下の側近も辞した事ですし、これからは自分もラセッタ辺境伯に帰って我が家のおかしい因習を改めるようにするつもりです”と。

 思わずネイト様は元気かと尋ねました。

 決して元気ではないと彼は乾いた笑いをして、兄には愛した人とのかかわり方について最初から学んでもらうつもりだと豪語されて。

 ええ、そうすれば彼にはきっといい人が現れるはずです。ネイト様はあの事さえなくなればとってもいい人ですから。

 ”あっ、まさか、兄に未練でも?良ければこれから一緒に?”

 ”まさか。勘弁して下さい。私には愛する人がいると知ってますよね?”

 ”すみません、冗談です。とにかくシュナウト様とのご結婚本当におめでとうございます。”

 そしてラドール様は控室を後にされました。

 きっとネイト様の事を気にかけている事に気づいていらっしゃったんでしょう。どこまでも良い方です。

  

 思えばこうしてシュナウトと結婚できるのも奇跡みたいなもの。

 改めてネイト様のこれからの幸せを祈りました。

 結婚式は私の家族はいなかったけど、ドーナン国王にセダ叔父様。ホクス叔父様、カルキース北辺境伯‥‥と国の重鎮ばかりだったけどそれは素敵な結婚式でした。


 そして初めての夜。

 なにせ前世の久保鈴子は片恋で失恋、その反動で酒を飲み一夜を共にしたのはとんでもない身勝手な男だったんです。

 初めてなのに男の一方的な欲のはけ口にされて惨めさと痛さだけが残った処女喪失。そのせいでそれ以来あっちの方は全く縁がなくなった私。

 だから、恐かったんです。

 シュナウトが女慣れしている事はわかっていたし、そんな彼の手が自分の肌に触れる事を自分はどう感じるのかとすごく不安だったのは言うまでもありません。

 それに加えて自分は経験がない分、彼を満足させられるのかそれも不安でした。

 でも、そんな不安はほんの数秒で消えました。

 そっと優しく抱きしめられ、愛してる。恐くないか?痛くはないかと言葉で伝えてくれて、触れる手は少し震えていてそれでも最大限優しくしてくれて‥

 彼がどんなに私を大事にしているかわかったんです。

 彼の手に触れられるたび不安は消えて行きそれは喜びに変わって行きました。

 何度もキスをされて愛を囁かれ結ばれる前に何度も絶頂を味わされて。

 なのに一瞬、脳裏にこんなにうまいのも何度も経験があるからなんて思いが浮かびました。


 でも今まさに結ばれる瞬間に彼が言ったんです。

 「リンローズ。今まで本当に君を傷つけてばかりだった。これからはお前だけを愛すると誓う。決して二度とお前を傷つけたりしないから、俺を信じて欲しい」

 「シュナウト?その言葉本当に信じていいの?」

 私の心を見透かされたみたいで声が震えました。

 私は薄柄い部屋で彼の目をじっと見つめていたと思います。

 でも、彼は瞬きもしないではっきり言ったんです。 

 「ああ、二度と裏切らないと誓う。だからリンローズ。お前も俺だけを愛してくれないか?」

 もう迷いはありませんでした。

 「あなたを信じる。私もあなたを裏切らないと誓う」

 「もう限界だ‥リンローズを俺のものにするから」

 私がこくんとうなずくと彼のモノが。

 私はそれを受け入れて行くうちに彼と契りを交わしたと感じました。深く繋がり愛が深まった気がしました。

 そんな喜びを私は素直に心から受け入れていました。


 それからはすべてが変わりました。

 好きな人と一緒にいると、とにかく前向きになれるんですかね。

 前世の私は新人作家担当の前は色々な担当をしたんです。料理だったり地方の特産物だったり、コリー領に来てここで生活をしていくことになり腰を落ち着けたら日本人だった時の事を思い出して米が食べたいって思うようになったんです。

 そしたら馬の飼料にしているババカという食べものがそれはもうお米そっくりの味だったんです。

 私はそれなら他にも食材があるんじゃないかって調べたら大豆に似た豆もあって編集部時代の記憶を引っ張り出して味噌を作ったり、イグサに似た植物もあってそれでゴザのようなものが作れないかと試作したり、あっ、麦わら帽子も作りました。

 綿はもともとコリー領で作っていたんですが、それをもっと進化させてガーゼを作ったり伸縮性のある包帯とかも出来ました。

 シュナウトの魔力を利用して魔石のリサイクルも好評です。彼意外と器用なんです。

 魔石の保温台に応用してカイロも作ったり、電池みたいな使い方で魔石泡立て器とか魔石温風ドライヤーなども今商品開発中なんです。

 子供のおもちゃとかもいいかも知れません。

 

 最初に断罪で死んで生き戻った時には考えられない事ばかりでほんとに驚いています。

 でも、よくシュナウトと二人で死に戻ったのには訳があったんじゃないかって話をします。

 あのままだったらふたりともこの世に悔いを残していたはずです。

 きっと神様が私たちにチャンスを与えて下さったんだと思います。

 だからこそこのチャンスを決して無駄にしないように、これからふたりで必死に生きて行きたいって思っています。

 それから、ついに、もうすぐ3人になるんです。そう家族が増えるんです。

 私のお腹にはシュナウトとの子供が宿っています。

 彼もそれはそれは喜んでくれて子供が生まれるのを心待ちにしています。

 きっといい父親になるんじゃないかって思っています。

 まだまだ、お互いしょっちゅう喧嘩したり意地を張ったりする事もありますけど、彼とならどんな障害も乗り越えて行けると信じれるんです。

 本当に死に戻って良かったです。


 「リンローズ。お前そこでグダグダしてるなら手伝えよ。俺、腹が減った。いつもの奴持って来てくれよ」

 「は~い」

 そうそうあのオートミールバーは商品化して売り出しました。騎士隊の皆さんや若いご令嬢に評判いいんですよ。

 これからも日本人だった前世の記憶を最大限生かして便利でみんなを幸せに出来る商品を開発するつもりです。

 そうだ。シュークリームってまだないわね。チョコレートファウンテンなんてみんなびっくりするわね。

 つい、そんな事を考えていると‥

 「リンローズったら‥」

 シュナウトは我慢できずに走って来ます。

 「ごめんなさい。今」

 「ばか!走るなって、転んだらどうするんだ?大事な赤ん坊がいるんだぞ」

 シュナウトは急いで走ってきて私を抱き留めます。

 「だってぇ~」

 「リンローズ。相変らずおっちょこちょいだからな。ああ~いい匂いだ。お前の肌はいつもおいしそうな匂いがするな。俺、オートミールバーよりお前の方がいいかも」

 シュナウトにかぶりつくようなキスをされた。


 ほんとこの人悪く言えばばかで単細胞。でも良くいえばうそがなくて何でも言い合える。一緒にいてすごく楽なんです。

 私が私らしくいられるっていうんでしょうか。

 死に戻って前世の記憶がある私にすれば取り繕ったり見えも張ったりしなくてよくて自然なままでいさせてくれます。

 

 そう言えば一時人の心がわかるようになってすごく便利って思っていた事もあったけど、結局それが人の心の一部ですべてじゃないってわかった。

 だからあの力がなくなって良かったと思ってます。

 だって、死に戻ったシュナウトはほんとは優しくて真っ直ぐな人だってわかったから。

 彼を心から信じれるようになったんです。嘘みたいだけど。


 私はシュナウトに抱かれるといつも柔らかい毛布に包まれているみたいな気持ちになれるんです。

 今日もいつものように身体中が温もりで包まれて行きます。



  ~おわり~



 

最期まで読んでいただき本当にありがとうございました。長~い話になってしまいましたが何とか最終話にこぎつけました。いつも応援ありがとうございます。良かったらいいね!よろしくお願いします。次回も頑張ります。どうぞよろしくお願いします。はなまる


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