7私の家族
私はコリー家の屋敷に帰って来た。
まだまだやることは山済みだ。なのにすでに頭痛がする。
こんな時前世だったら頭痛薬でも飲めば少しは楽になれるのに…
バーナードは父に手紙を渡してくれたらしい。
「お嬢様。顔色が悪いようですが大丈夫ですか?」
「ええ、心配ないから、ありがとう」
彼は義理母やアシュリーが私に冷たい態度を取っている事を知っているので心配して声をかけてくれる。
前は遅くまでタウンハウスにいたがここ数年は夕食前に家族の元に帰る。
奥さんが病気だからだ。子供はふたりいてもうひとり立ちしていると聞いた。
義理母に逆らわなくはなったがバーナードはいつも私を気にかけてくれている。
そんな事を見越してか母やアシュリーはバーナードの前では私に何も言ったりしない。
バーナードなりに私の事を考えてくれているらしい。
これはスーザンから聞いた話だが。
だから義理母はどうしても何か言いたいときはこっそり私に耳打ちする。
「夕食は控えなさい」とか「今夜はお客様があるから自室にいなさい」とか。
ああ、時には「このアクセサリーアシュリーが欲しいって言ってるの。いいわよね?」何て序の口。
「バーナードに何か告げ口したらわかってるでしょうね」そう言って私の脇腹辺りを思いっきり抓る。
私は声を挙げそうになるのを必死でこらえてこくんと頷くのが精いっぱいだった。
私は自室に戻りドレスを脱いで楽なワンピースに着替える。
王宮に行かなければならないのでドレスは外聞が悪いからと父が何着か作ることを許した。
私はシュナウト殿下の気を引こうと露出の多いドレスなんかも作ったりして…ばかみたい。
それにシュナウト殿下から送られたアクセサリーもある。いくつかは私がいない間にアシュリーが勝手に持ち出したが「義理姉様、これ私に似合うと思わない?」
「そうかもしれませんね」
私は言い返すことは出来ない。そんな事をすれば二日くらい食事がない。これからはしばらく屋敷にいることが多いのでそれは避けたい。
前にスーザンが見かねてこっそりパンを持って来てくれた事があったがそれを待ち構えていたかのように義理母が見つけてスーザンを鞭で打ったのだ。
それ以来スーザンには絶対に私にかまうなと言ってある。
私の自宅で着る服はすべてアシュリーのお下がりだ。そのせいかどれもフリルやレースが使ってあるがどれも染みが付いていたりハサミで切りこみが入っていたりする。だから実質着れるものは数着しかない。
下着だった何年も新しいものは買っていない。
私はこんな服は嫌いだ。でもそんな事を口にすればどんな仕打ちが待っているかもわからないし着れるものなら何でもいいとさえ思っていたのだから‥‥
おめでたい。
そんな事を思い出しながら今夜父に話をする事を考えていた。
領地は腕のいい執事のスタンがいて領地の事は任せている。
そうでなかったら領地経営はとっくに破綻していただろう。
コリー領は農地も広大だ。農地では色々な物を作っていると聞いている。貴重な薬草も取れるらしい。
それに魔石の原料になる鉱石も多く取れる。魔石は今は一度使ったら捨てられるもので需要ははるかに多い。でも、その鉱石の何時かは枯渇するときがくるはず。
今はまだ考える事ややることが多いので漠然としか考えれないが私は魔石のリサイクルが出来ないかと思っている。
前世では何かにつけてリサイクルがもてはやされていたが魔石を捨てるのはもったいないと思う。
それに魔石を再利用するための魔力の充電器具でも作れればものすごく便利になると思う。
(私の魔力を使うことも出来ると思うがシュナウト殿下の織り余っている魔力使えるといいのにな。まあ、ばかな事を考えていないで)
私は今夜父に婚約解消を頼む決心をする。
(がんばれ私!)