74神宿石が見つかる
おじいちゃんの言った事は本当なのだろうと思った。
でもどうする?
私ははっと思いつく。もしかしたら‥
「私、ガイアン大神に祈ってみます。もしかしたらまた声が‥」
「俺も行く。あの時と同じようにやってみたら」
「ええ、彼も神の声を聞いたんです。だからふたりでやればもしかすると神に祈りが届くかも知れません」
ネイト様が目を見開く。
「とにかく今は一刻の猶予もない。何でも思いつく事をやってみるしかないな。ふたりで協力してやってみてくれ!」
「「はい!」」
もしかしたらもう一度奇跡が起きるかもしれないから。
シュナウト殿下は私の手を取り走り出そうとした。
「行くぞ!」
「待て、僕も行こう」そう言って走り寄って来たのはドーナン殿下だった。
「ドーナン殿下ありがとうございます」
「王都の神殿の責任は私にもある。私も一緒に行く」セダ神官だ。
「叔父様。ええ、お願いします」
私達は神殿の神宿石を目指す。
そこに騎士隊のホクス様と鉢合わせした。
「リンローズ!」
「叔父様」私は思わずそう言ってしまう。
「ラセッタ辺境伯は?」
「中にいらっしゃいます」
「ちょうど良かった。とにかく中に来てくれ。ドーナン殿下もシュナウト殿下も」
叔父様の様子が緊迫しているので私達もまた執務室に戻った。
「ラセッタ辺境伯。神宿石が見つかった。採掘場のごみ置き場の下に埋めて隠してあった」
「それは、本当か?それで神宿石はいくつ見つかった?」ネイト様が驚きの顔で叔父様に問う。
「はい、東西南北すべての神宿石が揃っていました。もうすでに運び出し神殿にあります」
「「「「ほんとに?良かった~」」」」
みんなの声が揃う。
「これで何とかなる。そうとなればみんなそれぞれの辺境に戻ろう」ネイト様。
「ああ、神官と俺達がいれば神宿石を転移陣で移動できる」シャルトル様。
「そうなればきっと神の怒りも収まるはずだな」ユーロウ様。
「兄さん(ネイト)、もしよければボルゾイを北に送っては?北の辺境伯も今は大変なんでしょう?」ラドール様がそう言った。
「ああ、そうだな。わかった。とにかく俺達は急ぎ辺境領に戻る。リンローズとシュナウト殿下。それにセダ神官は殿下と王都の神宿石を頼む!ラドールは俺と来い!」
ネイト様は冷静に的確な指示を飛ばす。そんな姿に見惚れながら私は思っていたことを話す。
「ええ、ネイト様、私達もしかしたらまた神様の声を聞けるかもしれません。何とか4神に怒りを鎮めてもらうようガイアン大神に祈ってみます」
「ああ、そうしてくれるか?俺達は辺境からリンローズたちは王都から、国中で神に祈ろう。いいか、みんな。ここは踏ん張りどころだぞ。決してあきらめるな!いいな!!」
「ああ、死ぬ気でやるさ」「私も」「俺も」「僕も」
ドーナン殿下もシュナウト殿下も3辺境伯もセダ叔父様もホクス叔父様もラドール様もみんなの心が一つになる。
私は部屋を出ようとしたらネイト様に引き留められた。そっと抱き寄せられ耳元で話をし始めた。
「リンローズ。いいか、無理はするな。辺境伯領で神宿石を奉納し終わればきっと神は怒りを鎮めてくれると思う。だから‥お前に何かあったら俺は」
ネイト様が私の手をぎゅうと握りしめた。
「私も‥ネイト様決してご無理はされませんように、こっちが終わったらすぐに応援に向かいます」
「ああ、ありがとうリンローズ。国王代理は任を解かれた。これでシュナウト殿下との婚約は事実上なかったことになるはずだ。だからこれが片付いたら正式に婚約の申し込みがしたい。いいかなリンローズ?」
ネイト様の紺碧色の瞳がぐっと熱を帯びて行く。
私の頬はかぁぁと熱くなりこくんと頷くしか出来ない。
「さあ、もう行かないとな。気をつけてな。シュナウト殿下。ドーナン殿下。リンローズを頼んだぞ。俺の最愛なんだからな」
「もう、ふたりの気持ちは良~くわかってますよ。俺、リンローズとは婚約解消しますから安心して下さい」シュナウト殿下が言う。
「はっ?お前、いきなりどうしたんだ?そう言えばシュナウト殿下が今日はやけに話が分かる男になった気がするが‥」
「俺だって、引き際くらいわきまえてますって!リンローズの事任せて下さい!」
「ああ、頼んだぞ。リンローズ絶対無理はするな。約束だ」
ネイト様はシュナウト殿下が婚約を解消すると言ったからか、大胆にも私の唇にそっと触れるだけだがキスをした。
「ええ、約束‥」
そして私とシュナウト殿下、ドーナン殿下、セダ神官は王都の神殿にある神宿石を目指した。
途中でシュナウト殿下の言った事がまだ信じられなかった。でも、彼は本気らしい。
「リンローズ。今までお前の言う事を聞かなくて悪かった。もう、お前の邪魔はしない。リンローズは好きなようにしていいからな」
「シュナウト殿下‥ありがとう」
「いいって。さあ、油断するな。これからが本番だからな」
私達は神宿石に辿り着いた。




