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73おじいちゃんもう諦めたら


 そこにセダ神官とドーナン殿下が入って来た。その後ろにはラドール様がいる。

 ドーナン殿下はしっかりとした足取りで服装は正装だった。黒い上着はしなやかなシルク。その襟元や袖口には美しい刺繍が施され首にはクラバットをしてトラウザーズズボンに腰には剣がある。

 髪はきちんと整えられ見たこともないほど美しいその姿に思わず見惚れるほどだ。

 この人が少し前までベッドに横たわっていたなんて信じられないほどに。


 「ドーナン。お前が出しゃばるんじゃない。お前に国王が務まるとでも?」

 おじいちゃん‥大物を言ってもその声は怯えていますよ。って言うかこの人と血が繋がっていると思うだけで気分が悪い。


 ドーナン殿下が一歩前に進み出た。

 「国王代理。長い間ご苦労様でした。ここからは私が引き継ぎます。僕が国王になったからにはこの国はきっと元のような素晴らしい国にして見せますので、あなたには出来る最後の仕事をして頂きたい」

 彼の決意が伝わる。

 「はっ、そんないきなり。そんな事出来るわけがないだろう!」

 はぁぁ~おじいちゃんもう諦めようよ。

 「それが出来るんです。ここに貴族半数以上の署名があります。どれもドーナン殿下を国王に承認する書類に署名がされています。見てみますか?どうぞ」ラドール様いつもグッドタイミングです。

 「そ、そんな‥」

 おじいちゃんはその場に崩れ落ちた。



 「おい、いいから知ってることを言え!この国が崩壊してもいいのか?」

 ネイト様はおじいちゃんの首を掴んで揺する。

 「おじい様お願いします。知ってるなら本当の事を話して‥お願い。この国を救うためなんです。おじい様お願い‥」

 私もたまらずおじいちゃんに頼む。

 「すまないリンローズ。本当に知らないんだ。確かに神宿石はあるはず。だが、ベナンがどこかに隠していたんだ。私も知らなかったんだ。あいつ自分に何かあった時の為に隠したんだ」

 「そんな大事な事も確かめずに殺しを指示したのか?」

 「すまない、こんな事になるとは‥」

 おじいちゃんはぐったりうなだれた。

 「近衛兵。ブルト・ロンドスキーを逮捕する。牢に連れて行け。ベナン伯爵殺人の罪だ」

 「そんな!私は国王代理としてこの国の為に‥「国の為じゃなく自分の欲の為だろ!」いや、違う。そんな!」

 「あなたは正式な裁判でさばく。俺達はやらなきゃならないことがあるんだ。お前のせいで国はめちゃくちゃだ。牢に入るくらいで済むと思うなよ」

 おじいちゃんはがっくり肩を落として護衛兵に連れて行かれた。


 「リンローズお前は助けてくれるだろう?」

 すがるような目で私を見るおじいちゃんは威厳に満ちた風格はすっかりなかった。すっかり元気を失った一人の老人に見えた。

 「そんな事出来るわけがありません」

 私はそんなおじいちゃんを冷たい視線で見送った。同情はわかなかった。

 こんな人と血が繋がっていると思いたくなかった。

 父も異母妹(アシュリーもおじいちゃんも最初から身内ではなかったんだ。

 でも、どうしてみんなあんな事が平気で出来るんだろうと思う。

 私は絶対あなた達みたいにはならないから

 それでも、私にも責任のある事なのだと思う。もっと早く行動を起こしていればと悔やまれた。

 だからこそ私も精いっぱい力を尽くすしかない。





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