69熱愛宣言
やっぱり気になる。
廊下に出ると思い切って私はネイト様に近づいた。
「ネイト様ほんとにいいんですか?」だってずっと一緒にいてくれたから本当は忙しかったのかもと思う。
「はぁ~。ったく。リンローズまで‥心配ないから」彼は一度顔を歪めるとすぐに髪をㇰシャリとした。
もう、言ってくれればいいのに!
彼が無理していると思うとその仕草に何だか腹立たしさを覚えるが彼の優しさだと思い直す。
「そうだぞ。ラセッタ辺境伯。無理はするな」シュナウト殿下も心配する。
「チッ!ありがとうございますね。殿下」
ネイト様それはいけませんよ。舌打ちは‥私は心の中で突っ込んだが忙しいのに私の為に時間を使ってくれたことがうれしかった。
「そうだ。ラセッタ辺境伯ちょっと待って下さい」
「なんだ?」
振り向くとふわりと金色の髪がなびく。
私はそんな彼のために手をかざして回復魔法を注ぐ。
「こ、これは‥ありがとうリンローズ」思わず身体を引き寄せられて頬ずりされる。
少し伸びた髭が頬をくすぐる。それさえも愛しいと思える。
「ちょ、お、お前。リンローズは俺のこ「ああ、今はな!すぐに俺のものにする」な、何、言ってる。リンローズ何とか言えよ!」
シュナウト殿下が文句を言うがネイト様がそれを邪魔する。
私はもう誤魔化せないと思った。
くるりとシュナウト殿下の方に顔を向ける。もちろんネイト様は腰を抱いたままだ。
「殿下。今は婚約者だから仕方ありませんけど、これが終わったら正式に婚約解消しましょう。だってあれはおじい様が決めた事。国王代理をやめたら効力はないわ。それにあなたもずっとそれを望んでいたはずよ」
私ははっきり現実を見ろとシュナウト殿下に突きつけた。
シュナウト殿下は目を見開いて驚く。
「な、何言ってるんだ!」
なによ。今さら?
「リンローズ‥お前、ラセッタが好きなのか?」
「はっ?こんなことをするのは好きに決まってるからじゃない。あなただってアシュリーが好きだったからあんなに一緒にいたんでしょう。それに妊娠までさせたくせに‥」
「あ、あれは前の事で‥」
「ほら、私を好きだって言えないじゃない。それなのに私を縛るつもり?いい加減現実を見なさいよ。私たちに未来はないのよ。あなたと私は別々の道を歩いて行けなきゃならないの。私の言っている事どうしてかわかるでしょ?」
シュナウト殿下がはっとする。
やっとわかったの?
一回目、私はあなたに毒を盛ってあなたは死んだ。そして私も断罪された。
二回目、今回こそそれを避けなければならない。それには私達が一緒にいるべきじゃないって事よ。シュナウト殿下わかってるの?まったく‥
「でも‥やり直せるかもしれないだろう?」
「無理!」
シュナウト殿下はしゅんとなってしまった。
ネイト様が殿下の方をポンポンと叩いて言う。
「殿下。往生際が悪い。それにアシュリーは妊娠してたのか?それなのにドーナンに誘いを掛けようとしたって?あいつ相当の…そりゃ、リンローズに愛想をつかされるわけだ。リンローズは君とはもう終わりにすると決めたんだ。それに殿下だって散々好き勝手やって来たんだ。文句は言えないよな。まあ、今はとにかく結界の修復が先決だ。話はこれくらいにして急ごう。ほらしっかりしろ!」
ネイト様が現実に引き戻す。
「ええ、そうだったわ。シュナウト殿下。気持ちを切り替えて行きますよ」
「ったく。それならこんな話後にすりゃ良かったじゃないか!俺のやる気どうしてくれるんだ?」
「頼りにしていますよ。シュナウト殿下。あなたの力が必要なんですから」私はすっかり気落ちしたシュナウトにはっぱをかける。
「そうかもしれないが‥リンローズ。俺と一緒に行くだろう?」シュナウト殿下。
「いいえ、私はネイト様と行きます。だって殿下の力は大きいんですから。自信持って下さい」
「そんなぁぁぁ~」
私はネイト様に手を取られて一緒に歩き始める。
シュナウト殿下も仕方なくとぼとぼついて来る。
「シュナウト殿下。落ち込んでいる暇はありませんよ!早くして下さい!」
「あいつ大丈夫か?」
「いいんです。今まで甘やかしすぎましたから、さあ、行きましょうかネイト様」
「ああ、でも無理はするなよリンローズ」
「うふっ、相変わらず優しいんですね。誰かさんと違って」
私は甘えるようにネイト様の方に頭を寄せた。
なんて幸せなんだろう。二度目の人生がばら色に見えて来た。




