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60まるで犬猿の仲?


 

 早速神殿で待っていたカルキース辺境伯と顔を合わせる。

 「これはシュナウト殿下に聖女様、それにラセッタ辺境伯まで?こんなにたくさんの方に手伝いに来ていただけるとはいやぁ、感激ですな。この度は本当にありがとうございます。お疲れでしょう。まあ、今、お茶でも」

 カルキース辺境伯は50代だろう。私の父よりは年上に見える。おじいちゃんよりは若いな。やっぱりこの人も王族の血を引いているらしく金色の髪に濃い碧色の瞳をしていた。



 私は預かったワインをいつ出そうかと気をもむがなかなか言い出せずにいるとシュナウト殿下が口を開いた。

 「はい、ありがとうございます。カルキース辺境伯、私はシュナウト・ブルタニウスと言います。どうぞよろしくお願いします。こちらは聖女のリンローズ・コリー令嬢です」

 「ああ、あなたが噂のシュナウト殿下。西の辺境伯領でも活躍されたと聞いております。今回はこんな辺境にお越しいただき申し訳ございません。それに聖女様あなたの事も伺っております」

 「いえ、とんでもありません。お力になれるといいのですが‥」とシュナウト。

 「そんな、よろしくお願いします」私も続く。

 シュナウト殿下は前のように力をひけらかすような言葉は慎んだ。

 意外。少しは学習したんだ。

 私はほんの少し見直しているとネイト様が割って入るように話始めた。


 

 「カルキース辺境伯。お久しぶりです。それで状況は?うちは聖女様に来ていただいて何とか結界を修復出来たんです。なので取りあえず魔物被害は防げたところです。彼女が来ればもう大丈夫です。と言うかこんな所で話をするよりとにかく神宿石を見に行きませんか?」

 カルキース辺境伯は驚いたようだったが、それでも一刻も早い修復を望んでいるらしくネイト様に同意した。

 「ええ、いいんですか?殿下も聖女様も大丈夫ですか?転移はかなり魔力を消耗するんですから」

 「なぁに、転移は神官が行ったんだ。殿下は魔力を使ってはいない」ネイト様が見下すようにシュナウト殿下を見た。

 「‥では、行きましょうか」カルキース辺境伯。

 【ネイト。お前何かあったのか?何だか様子が変だが】

 カルキース辺境伯の考えが脳内に流れ込んで来た。

 お茶もそこそこにみんなが立ちあがろうとした。


 まずいんじゃ?カルキース辺境伯は堅物でも有名な人。私とネイト様の事を気づかれたりしたら‥

 私は何か気を反らす話でもと咄嗟に思う。

 「あの‥でも、その前にこちらでは怪我人がいて困っているような事はないんですか?」

 私は気になっていた事を聞く。それにもしそうなら治癒もしたい。

 「これはさすが聖女様。実はこの辺りは領地でも北よりでして魔物が少ないのです。魔物の被害が多いのはもう少し南寄りの場所でして怪我人もそちらの診療所で手当てを受けているんです。明日はそちらにご案内しますので今日はゆっくりして下さい」

 「そうなんですね。わかりました。余計なことを言ってしまって「リンローズは優しいからな」もう、ネイト様ったら‥」人に気も知らないで‥



 神殿を出ると小高い丘を登ったその一番高い位置に神宿石はそびえたっていた。

 神宿石の向こうは建物などはなく広い山々が広がっている。これは西の辺境伯領と同じ。

 山のすそ野辺りから作物が植えられていたり建物が並んで建っているのが見えた。

 でも、北側には高い山がそびえたっていて北の辺境ならではの荒々しい自然を感じた。

 丘の上にあるのは結界を張るのに障害がない方が効率がいいからなんだろうと思う。

 そして不便でも北の方が魔物が少ないから神殿や辺境伯の屋敷があるのかとも思った。


 それにしても‥

 「うわぁ、すごくきれいな景色」私はぐぐっと背伸びをした。空気もきれい。

 「ああ、ほんとに見渡す限り森が広がってるな」シュナウト殿下も同じように身体を伸ばす。

 「お前、観光に来たんじゃないんだ」ネイト様はさっきから機嫌が悪い。一体どうしたんだろう?

 【お前邪魔なんだよ。俺はリンローズとふたりきりで楽しみたいんだ】

 何だかいつものネイト様らしくない。ああ、きっと嫉妬だ。


 「ラセッタ辺境伯。さっきからなんだ?文句があるなら言えよ!」

 シュナウト殿下もネイト様にかなり苛ついているみたい。

 「ありません」

 「じゃあ、何でつっかる?」

 「何でもありません」

 「ったく!ドーナンが元気になったから俺は必要ないってか?」

 「誰もそんなつもりはありませんよ。あなただって国王の血を引くんですから」

 「まあ、いい。言っておくがリンローズは俺の婚約者だ。それそれをわきまえてくれ」

 「今はそう言うことにしておきますよ」ネイト様、険のある言い方。

 「はっ?ふざけてんのか!」シュナウト殿下が怒った。

 「もう、ふたりともやめて下さい。ここには仕事で来たんですよ。ネイト様ここは殿下のおっしゃる通り。一応私たちはまだ婚約者ですので‥」

 私が言うのもおかしいかも知れないが事実は事実。

 嫉妬されるのはうれしいけどおかしな態度を取ればネイト様に迷惑が掛かってしまう。私はやっとそんな事に気づいた。







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