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47アシュリーがどうしてここに?


 「リンローズ。どうだ?大丈夫か。今、安全なところに連れて行くからな」

 「いえ、ネイト様ほんとにもう大丈夫ですから‥」

 私は彼に抱かれたまま廊下を進んでいる。

 それにしてもネイト様はどうやってここに?一度に転移できるのは2人が精いっぱいとか聞いたけど?

 「あの、失礼ですがネイト様はどうやってここに来られたのです?」

 「ああ、我が家にも転移陣があるんだ。そこから王都の神殿の転移陣に移動した。シュナウトが急いで追って行ったのがどうにも気になったから、でも、間に合ってよかった。もう少しで取り返しのつかない事になるところだった。それにしてもあいつ許せん!」

 「ええ、私もこれできっぱり気持ちの踏ん切りがつきました。殿下の態度が少し変わってやはり私は我慢するべきかもなどと思ってもいましたが、あんなことをされるとは…もう、人として終わってます。って言うかネイト様もう下ろして下さい」

 「そうか、俺は平気だぞ」

 「いえ、そういう問題では‥」

 やっとネイト様が私を下ろしてくれた。


 「ありがとうございます。私はすぐに報告を」

 「いや、ちょっと待て、リンローズは取りあえず安全なところに避難した方がいい。さて取りあえず神殿なら安全だろう?後の事は俺に任せてくれないか?」

 「今回の結界の事もあるし、国王代理とは一度よく話をするつもりなんだ。その時シュナウト殿下の事についても俺達で苦言を呈すつもりだから」

 「俺達って?」

 「言うなれば反ロンドスキー派と言えばわかるか?国王を元の王族に戻すべきだと思っている。リンローズに取ったら身内の祖父になるが、このままずるずる国王代理を許しておくわけには行かないんだ」

 「ええ、それは私も賛成です。おじいちゃんはもう引退するべきです。国王はドーナン殿下にお任せするべきだと」

 「さすがはリンローズだ。そこまでわかっているとは。どこかのばかとは大違いだな」

 「そんな事はないんです」

 私はやっと落ち着いてネイトの考えを読み取ることが出来た。

 彼は言葉通りの事を思っていてそれは本当に誠実でいい人だとはっきりわかった。


 私達は歩きながら話をしていたのであっという間に神殿に着いていた。

 「セダ神官にお願いがあるんだが取り次ぎをお願いしたい」

 ネイト様が他の神官に言うと「今それどころではないんです。ドーナン殿下の所に不審者が‥」

 「「ドーナン殿下は無事なのか?」」

 私達もその神官の後を追って離れに急ぐ。


 「一体どうやってここに忍び込んだ?」護衛兵の男の声らしい。

 「もう、いやだ~放してよ。私はまだ何もしてないわ。いいからその汚い手を放しなさいよ!」

 目の前にアシュリーが捕らえられている。

 「アシュリー?あなたどうしてこんな所に?」

 「義理姉様、ちょうど良かった。私は無実なの。もう、ちょっとドーナン殿下のお見舞いに伺おうとして‥いえ、護衛の人が目を離したすきに建物に入ったのは悪かったわよ。でも、まだ殿下にも会ってないのよ。なのに!」

 「それはあなたが悪いに決まってるわ。そもそもどうしてドーナン殿下の所なんかに」

 「だってシュナウトは構ってくれなくなったし、そうしたら義理姉様が婚約者のままって事になるでしょう。お父様がおっしゃったの。ドーナン殿下が神殿にいらっしゃる方お見舞いに伺ったらどうかと、私、彼に気に入られたらもしかしたらと思ったのよ」

 「アシュリー?あなたまさか。護衛。彼女の持ち物を調べて!何か不審なものを持っているかもしれないわ」

 だってアシュリーの考えはさっきから私の脳内に響いている。


 【もう、何だってこんなところにあんたがいるのよ。もう少しでドーナン殿下に疲労回復薬と偽って媚薬を飲ませれたのに。ああ、媚薬さえ飲ませたらシュナウトの時みたいに私を求めて来るに決まってるわ。そうなれば既成事実と言ってドーナン殿下の婚約者になれる。シュナウトは平民出身だから彼が元気になれば次の国王はドーナン殿下で決まりだろうし‥全く何で邪魔するのよ!】

 やっぱりそういう事なんだ。シュナウトの時もそうやって彼を虜にしたのね。でも、シュナウトは強欲みたいだからあなたにのめり込んだって事ね。

 まあ、私にはもう関係ない事だけど、考えてみればふたりともお似合いよ。


 「ありました。何か小瓶に入った薬物を持っています」護衛兵がアシュリーの荷物から媚薬を見つけたらしい。

 ああ、やっぱり。

 「これが何かすぐに薬物研究室に持って行って調べろ。彼女は捕らえて牢に入れておけ!」ネイト様がすかさずそう言った。

 「ですがあなたは?」

 「辺境伯ネイト・ラセッタだ。これは次期国王を害すると言う重大事件だからな。この件は政務特別室で調べるからそのつもりでいてくれ」

 「わかりました」

 アシュリーはそのまま護衛兵ふたりにがっちりと腕を掴まれたまま連れて行かれる。

 「ちょっと待って。私は何もやってないわ。義理姉様助けてよ。私は無実なんだから。ちょ、もう、放して~。そうだ。お父様を呼んで頂戴。お父様がいいって言ったんだから‥私のせいじゃないわよ~」

 【何であんたが私を助けないのよ。ちょっとあんた。そこの。やだ。もう冗談じゃないわ。放しなさいよ~リンローズ。あんた覚えておきなさいよ!このあばずれが~。どうしてこんな事になるのよ。お父様がそうしろと言ったから私はそれに従っただけなのよ~】

 アシュリーの薄汚い本心がここまでとは‥おまけに我が家の凄まじい醜態が‥ああ、恐ろしい。

 「うるさい!静かにしろ!」


 アシュリーがどんなに叫んでも、もう遅かった。





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