36気が付いたら
私は目を覚ました。
あれ?私‥‥そうか。シュナウト殿下とあの石に結界を張っていたんだ。
「気が付いたか?」
声を掛けられてそちらに振り向いた。
「うん?ラセッタ辺境伯‥あの、その。起き上がっちゃだめですよ。まだ、寝てなくちゃ‥」
ラセッタ辺境伯が私の顔を覗き込むと蕩けたような笑みを向けられる。
金色に輝くオーラが秒速ビームで発射される。それはものすごい破壊力で私の朦朧としていた意識を覚醒させた。
な、なに?この幸せオーラは?
でも、目を開けた途端こんな眉目秀麗なご尊顔を見れるなんて眼福。眼福。
私の脳内で幸せホルモンが満たされる。
「君のおかげですっかり良くなった。あの毒消しは良く聞くな。いつもは数日身体がだるいがほらこの通りだ」
「でも‥」
「それより君の方が心配だ。魔力を使い過ぎたんだろう?俺のせいだ。こうすれば少しは良くなるといいんだが」
ガシッとつかまれる手。そこから力強い魔力が私の注がれるような感覚になる。
あっ、この人も魔力いっぱい持っているからこんな事するのかな?ううん、そんなつもりはなさそう。だけど体の強張りがほどけて行くみたいに楽になって行く。
やっと私は意識がはっきりして来た。いきなり羞恥心がもうもうとわき上がる。
「あっ、その‥もう大丈夫ですから」握られた手から逃れるように手を抜いて引っ込めた。
「そうか。遠慮はいらないぞ。俺も魔力を持っているからな」
「ええ、おかげですごく楽になりました。それで、あの‥ここはどこでしょう?」
「ああ、うちの屋敷だ」
脳内でうちの屋敷とは‥目の前にいるのはラセッタ辺境伯だから‥彼がうちの屋敷と言ったら。
「あの、どうしてラセッタ辺境伯のお屋敷に?私、帰ります」
「いいからゆっくりしろ。本当は君たちを招待する予定だったんだが、俺が怪我をしてしまったからな。これくらい当然の事だ。そうだ。腹は減ってないか?」
おなか減った。あっ、でもシュナウト殿下は?あの時倒れて‥もし死んでたら?私のせいでまた断罪になるんじゃ‥
私は狼狽えて起き上がると聞いた。
「シュナウト殿下はご無事でしょうか?」
ラセッタ辺境伯がクシャッと頬を歪めた。
「ああ、無事だ。あの後すぐに気が付いて今はこの屋敷で宴に出てもらっている」
「はっ?無事なんですか。すぐに起き上がったんですか」
「ああ、バランスを崩して倒れたらしいが特に問題はなかった」
「そうなんですか。あのばか魔力。ほんとっ、嫌な奴!」
「えっ?すまん。嫌だったか?」
えっ?なに?あっ、もう、私ったら。独り言だだ洩れじゃない。
「いえ、違うんです。お気遣いなく」
「だが、すごいなふたりとも、あの神宿石に魔力が籠った。それにリンローズの結界は素晴らしい。殿下が神宿石に力を注ぎ君は結界を張ったんだろう?」
「まあ」
「結界はほとんどこの辺り一帯に張られたと思う。もう、ほとんど心配ない。後はこちらに入り込んだ魔物がいないか調べてから魔石に魔力を注ぎ込めば問題はなくなると思う」
「うそ。いえ、それは多分シュナウト殿下の魔力のおかげです。私は木一本に結界を張るくらいの力ですから」
自分の実力だって言いたいけどやっぱり誤魔化すのは嫌だから。
「いや、そんな控えめなところもいいな。益々‥いや、でも君は殿下の婚約者と聞いた」
さっきまで生き生きと話をしていたラセッタ辺境伯が急に元気をなくしたみたいだが私はそれどころではなくなる。
「だ、誰からそれを?」
「殿下だ。リンローズ・コリーは俺の婚約者だからよろしく頼むと言われた。殿下も付き添うと言ったが主役が不在ではと席にいるように頼んだんだ。君が気づいたと知らせるべきだったな。すまなかった余計な事を。では」
彼は居心地が悪そうに立ちあがった。




